だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

373.闇裂くは晴天4

「めーいーしあっ」
「ひゃっ! アミレス様……!?」

 勢いよくメイシアに抱きつき、額をこつんと合わせる。そう、拗ねたヒロインを慰める為にイケメンがよくやるアレだ。
 今日は比較的に返り血を浴びてなくてよかった! メイシアの服をあまり汚さなくて済んでよかった!

「マクベスタにヤキモチ焼いてたみたいだから、貴女ともくっついてみたんだけど。これで機嫌を直してくれる?」
「うぅ……アミレス様、わたしがアミレス様の事が大好きなの分かっててやってますよね」
「機嫌、直してくれないの?」
「〜〜っ! 機嫌なんてすぐに直します直させていただきますぅぅぅう!!」

 上目遣いで頼むと、メイシアは耳まで赤くして了承してくれた。
 これでよし。ミッションコンプリート! としたり顔の私。
 それじゃあそろそろこの束の間の休息を終えますか。とメイシアから離れたら、

「──アミレス・ヘル・フォーロイト。この僕にあれ程の大見得を切っておきながら、戦場で伯爵令嬢と乳繰り合うなど……随分といいご身分だな」

 タイミングが良いのか悪いのか、やけに虫の居所が悪そうなフリードルがずんずんと接近してきた。
 うわあ、面倒な人がやって来たなあ。とため息を吐きながらうんざりしていると、

「そもそも、何故マクベスタ王子とシャンパージュ伯爵令嬢が戦場(ここ)にいるんだ」

 フリードルの言葉の矛先はマクベスタとメイシアに向けられてしまった。

「我が国は長年フォーロイト帝国に多大なる御恩があり、なおかつオレ自身がフォーロイト帝国に日々お世話になっている為、その恩返しに少しでも力になれたらと思いまして」
「……シャンパー商会が動くと決めた以上、商売に必要な土地や人材を守るべく次期当主のわたしが行動を起こす必要があった。ただそれだけです」

 二人はフリードルの問にも淡々と答えた。
 そういえば……皆がフリードルと接してる様子なんて、アミレスになってからほとんど見た事無かったな。
 だからか、帝国側の登場人物達が話しているのを見るとえも言われぬ気持ちが沸き上がる。

「マクベスタ王子はともかく……シャンパージュ伯爵家の嫡子たる令嬢が護衛も伴わずに戦場に出るなど、正気の沙汰ではないと思うが」
「護衛など必要ありませんわ。十把一絡げの護衛よりも、わたしの方が強いですもの」
「……ほう。業火の魔女とやらの力か?」
「えぇ。一目視ただけで全てを燃やし全てを爆破出来ますので」

 燃やすはともかく、爆破って何? メイシアが延焼の魔眼持ちなのは知ってるけど……火の魔力ってそんな爆破まで出来るような魔力なの?

「噂には聞いていたが、やはりその目は魔眼なのだな。延焼の魔眼……だったか」
「よくご存知で。ですが──こちら(・・・)は知らなかったご様子ですわね」

 含みのある言い方をして、メイシアはちらりと接近してくる魔物を視た。
 刹那、魔物の体が爆発して辺りに魔物だったものが四散する。
 その時、僅かにだがメイシアの赤い瞳がぼんやりと光っていた気がして……私は、ある事に気がついた。
 魔眼は使用すると瞳孔が薄らと光るらしい。そして、あの遠くの魔物が爆ぜたときメイシアの瞳はぼんやりと光っていた。

 これらから導き出される答えは単純明快──魔物の爆散はメイシアの仕業という事。そして、恐らく先程の悪魔が爆散したのもメイシアの仕業であろう。
 思い返せば、あの悪魔が爆散した後にメイシアは現れた。もしや、あの時メイシアは私が危ないと思って魔物を爆破してから、私達の所まで来たんじゃないかと……そう私は考えた。
 もっとも、メイシアに遠距離で魔物を爆破させるような能力があると仮定した場合での仮説でしかないが。
 そんな私の仮説の答え合わせをするかのように、メイシアは語る。
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