だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「どう? オレサマに惚れ直したか?」
「馬鹿が! 元々アミィはお前なんかに惚れてないから!!」
ほれなおす……? こんな甘ったるい声と熱っぽい顔で何を言ってるんだろうか、この悪魔。
それに、なんでアルベルトはさっきから顔色が暗くなったり明るくなったりしてるの? 何にそんな一喜一憂してるのか分からないわ。
「しかし……まさかシュヴァルツが魔王じゃったとはな。む、つまり……兄上の左腕を消し飛ばしたのはお前かぁ──ッ!!」
「げっ」
「兄上の左腕の仇ぃ!!」
クロノの腕の件に気がついたらしいナトラが、血相を変えて悪魔に飛びかかる。
風を切るナトラの拳を軽やかに躱しつつ、悪魔は余裕綽々とばかりに話を再開した。
「なァ、アミレス。魔物の行進の事なんだが……オレサマが無理やり魔物共を魔界に戻す事は可能だ。だがな、扉が問題なんだ。誰かさんが魔界の扉を全開にした所為で、今や魔界と人間界の道は繋がったまま。オレサマが魔物共を魔界に押し戻そうと、その本能まで抑える事は出来ない」
まるで、剣舞かのよう。
鮮やかに、美しく。
悪魔はナトラの鋭い攻撃を簡単に躱し、時にいなしつつ、こちらを見て話をする。
「あくまでも一時的な対処にしかならず、根本的な解決には至らねェ。だから一緒に考えてくれよ、魔界の扉をどうにかする方法を」
「一緒にって……私、まだ十数年しか生きてない子供なんだけど? 知識も発想もたかが知れてるわ」
「ダイジョーブ。お前ならいい案を思いつくって信じてるから」
あの悪魔がシュヴァルツで、シュヴァルツが魔王で。まだ頭の中で話の整理が追いつかないんだけど、少しずつゆっくりと咀嚼していけばいい。
正直なところ、あの悪魔とシュヴァルツが同一人物と聞いて納得のいく部分も多い。
悪魔が初めて夢に現れた日は、多分シュヴァルツと初めて会った日だった。オセロマイトの件を教えてもらった時だって、今思い返せばまるで悪魔が私達に同行しているかのような口ぶりだったような気がする。
見た事の無い雷虎をどこからともなく呼び出したり、やたらと魔法に詳しかったり……正体が分かった今なら、ミカリアと出くわす事を避けていたようにも思えてくる。
他にもたくさん、シュヴァルツにはお世話になった。迷惑をかけられた事も少しはあったけど、いつもアドバイスをくれたり手伝ってくれたり。
なんでそんな事をしていたのかは分からないけど、これまでの数年間シュヴァルツと平和に過ごしてきた事に変わりはない。
本来ならば、悪魔──魔族は人類の敵で、忌むべき相手。それもその親玉とも言える魔王なんて存在を受け入れられない。受け入れてはいけない。
そう、考えて……私は胸が苦しくなった。
「ねぇ、シュヴァル──ええと、ヴァイス?」
「お前の好きなように呼べばいい。お前にだけは、オレサマを好きなように呼ぶ事を特に許そう」
「……じゃあ。シュヴァルツ」
「ん、なんだ?」
顔も声も全然違うのに、悪魔とシュヴァルツが重なって見える。その表情が本当にそっくりで、二人が同一人物である事をありありと見せつけてくるかのよう。
フォーロイトの王女として、皇族としてこの判断が間違ってる事は分かってる。
でも、それでも私は──。
「これだけ教えて欲しいの。貴方は、人類を滅ぼしたいと思ってるの?」
彼の信頼を、これまで積み重ねて来た絆をどうしても信じたい。
家族みたいなものだ。ちょっぴり生意気だけど、調子の良い可愛い弟みたいな存在だった。だから、叶うならこれからも一緒にいたい。
その為にも、人類への敵意が無いのかを確認した。それさえ確認出来れば、もはや後顧の憂いは無い。
この悪魔は──……シュヴァルツは、決して私の信頼を裏切るようなヒトではないから。
「馬鹿が! 元々アミィはお前なんかに惚れてないから!!」
ほれなおす……? こんな甘ったるい声と熱っぽい顔で何を言ってるんだろうか、この悪魔。
それに、なんでアルベルトはさっきから顔色が暗くなったり明るくなったりしてるの? 何にそんな一喜一憂してるのか分からないわ。
「しかし……まさかシュヴァルツが魔王じゃったとはな。む、つまり……兄上の左腕を消し飛ばしたのはお前かぁ──ッ!!」
「げっ」
「兄上の左腕の仇ぃ!!」
クロノの腕の件に気がついたらしいナトラが、血相を変えて悪魔に飛びかかる。
風を切るナトラの拳を軽やかに躱しつつ、悪魔は余裕綽々とばかりに話を再開した。
「なァ、アミレス。魔物の行進の事なんだが……オレサマが無理やり魔物共を魔界に戻す事は可能だ。だがな、扉が問題なんだ。誰かさんが魔界の扉を全開にした所為で、今や魔界と人間界の道は繋がったまま。オレサマが魔物共を魔界に押し戻そうと、その本能まで抑える事は出来ない」
まるで、剣舞かのよう。
鮮やかに、美しく。
悪魔はナトラの鋭い攻撃を簡単に躱し、時にいなしつつ、こちらを見て話をする。
「あくまでも一時的な対処にしかならず、根本的な解決には至らねェ。だから一緒に考えてくれよ、魔界の扉をどうにかする方法を」
「一緒にって……私、まだ十数年しか生きてない子供なんだけど? 知識も発想もたかが知れてるわ」
「ダイジョーブ。お前ならいい案を思いつくって信じてるから」
あの悪魔がシュヴァルツで、シュヴァルツが魔王で。まだ頭の中で話の整理が追いつかないんだけど、少しずつゆっくりと咀嚼していけばいい。
正直なところ、あの悪魔とシュヴァルツが同一人物と聞いて納得のいく部分も多い。
悪魔が初めて夢に現れた日は、多分シュヴァルツと初めて会った日だった。オセロマイトの件を教えてもらった時だって、今思い返せばまるで悪魔が私達に同行しているかのような口ぶりだったような気がする。
見た事の無い雷虎をどこからともなく呼び出したり、やたらと魔法に詳しかったり……正体が分かった今なら、ミカリアと出くわす事を避けていたようにも思えてくる。
他にもたくさん、シュヴァルツにはお世話になった。迷惑をかけられた事も少しはあったけど、いつもアドバイスをくれたり手伝ってくれたり。
なんでそんな事をしていたのかは分からないけど、これまでの数年間シュヴァルツと平和に過ごしてきた事に変わりはない。
本来ならば、悪魔──魔族は人類の敵で、忌むべき相手。それもその親玉とも言える魔王なんて存在を受け入れられない。受け入れてはいけない。
そう、考えて……私は胸が苦しくなった。
「ねぇ、シュヴァル──ええと、ヴァイス?」
「お前の好きなように呼べばいい。お前にだけは、オレサマを好きなように呼ぶ事を特に許そう」
「……じゃあ。シュヴァルツ」
「ん、なんだ?」
顔も声も全然違うのに、悪魔とシュヴァルツが重なって見える。その表情が本当にそっくりで、二人が同一人物である事をありありと見せつけてくるかのよう。
フォーロイトの王女として、皇族としてこの判断が間違ってる事は分かってる。
でも、それでも私は──。
「これだけ教えて欲しいの。貴方は、人類を滅ぼしたいと思ってるの?」
彼の信頼を、これまで積み重ねて来た絆をどうしても信じたい。
家族みたいなものだ。ちょっぴり生意気だけど、調子の良い可愛い弟みたいな存在だった。だから、叶うならこれからも一緒にいたい。
その為にも、人類への敵意が無いのかを確認した。それさえ確認出来れば、もはや後顧の憂いは無い。
この悪魔は──……シュヴァルツは、決して私の信頼を裏切るようなヒトではないから。