だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「あ。皆に相談したい事があるんだが、いいだろうか」
((この状況で相談するんだ、シャル兄……))
シャルルギルが突然話題を変える。するとディオリストラスはよくやった! と小さくガッツポーズを作り、エリニティとルーシアンは若干呆れていた。
「実は、半年ぐらい前からよく分からない女の子とよく出会うんだ。行く先々で会うというか……でもあの女の子は俺を『王子様』って呼ぶんだ。どう考えても人違いだと思うんだが、どうだろうか」
「シャル兄、多分それストーカーってやつだよ。今すぐ警備隊に言った方がいいって」
「すとーかー? なんだそれは。良くない事なのか」
「すっごく良くない事だよ」
予想外の相談内容に、思わず前のめりになるメアリード。なんと、シャルルギルはストーカー被害に遭っていたらしい。
「だが俺には何も無いんだ。たまに街で見かけると、建物の陰からこちらをじっと見てるだけで。たまに、『ファルの王子様……っ』とかなんとか、ほとんどため息みたいな声が聞こえてくる。でも俺は王子様じゃないから、俺の勘違いだと思う」
「いやそれ絶対ストーカーだから。どう考えてもストーカー! シャル兄の事が好きな女の子がシャル兄を運命の王子様♡ とか言って追いかけ回してるって事だから!」
「俺の事が……好きな、女の子。そんな人がこの世に存在したんだな」
目を丸くするシャルルギルを見て、男達は思う。
──そりゃその顔ならモテて当然だろ。と。
家族が大好きなラークの贔屓目無しでも、シャルルギルは整った顔だった。以前までは視力の悪さから常に眉間に皺があったものの、今では眼鏡のお陰でそれも改善され、理知的に見える美男子になっていた。
本人は気づいていないが、これまでも何度か彼は告白されている。ただその度に、
『あなたの事が好きです!』
『ん? ああ、俺も、家族が愛してくれる俺自身の事は好きだ』
とか、
『私と付き合ってください!』
『悪いが今から用事があるから、どこにも行けない。他を当たってくれ』
とか。定番の天然ボケをかましては告白イベントを破壊し尽くして来たのだ。
だがそれも仕方の無い事。シャルルギルにとって一番好きなものは家族なのだから、他人が突然そこに割り込む事など不可能だったのだ。
「……その『ファル』って名前の女が、シャル兄のストーカーなの? シャル兄が本当に嫌なら、見つけ出して始末するけど」
「おいサラッと物騒な事言うなよ、ユーキ」
「僕、どちらかと言えば暗殺のが得意」
「初めて聞いたわそんな事」
「初めて言ったからね」
ユーキのツーンとした態度を見て、これ以上追及しても無駄だと悟ったディオリストラスは肩を落とす。
「ユーキ、俺は大丈夫だ。嫌になったら自分でやめるように言うさ」
「……あっそ」
「そういえば、ユーキは何かないのか? こう、好きな人とかそういうの」
「オレも気になるーーっ!」
「重っ……ジェジ、のしかかるのやめろ……!」
恋バナに巻き込まれ、更にジェジが背中に突撃してきた。それによりユーキは顔を顰め、メアリードは不自然に聞き耳を立てる。
そして、ユーキはボソリと呟いた。
「はぁ……いないよ、そんなの。そもそも……まだ、あいつと再会出来てすらいないのに…………」
「あいつって誰の事? ねーねーユーキ、誰と再会しなきゃいけないのー?」
「うるせぇ、バカ犬!」
「あだッ!!」
尻尾を振りながらしつこく追及してくるジェジを振り払い、ユーキは不機嫌な様子で自室に向かって行った。
「もー、ユーキってば相変わらず素直じゃないにゃー」
「でも再会? ってなんの事なんだろ。ジェジはなんか知らない?」
「うーん……分かんない。ユーキ、自分の事全然話してくれないからにゃぁ、オレも知りたいぐらいだぞ」
「そっかー、じゃあ分かんねーなー。ま、そのうち話してくれるだろ」
そうやってジェジとエリニティが話す傍で、
(ユーキ兄が、誰かと会いたがってる……?! うそ、なんで? 今までそんな素振りなかったのに……どうしよう、ユーキ兄の会いたい人が女の人だったらどーしよう!!)
メアリードの顔色がサーッと青くなる。
「姉ちゃん、どうしたの? 顔色悪いよ」
「だ、大丈夫だよシアン! アタシ、すっごく元気だから!!」
(……チッ、絶対ユーキ兄関連だろうなこれ。姉ちゃんは僕の姉ちゃんなのに)
お金に余裕が出来たからか、近頃のメアリードは日々可愛くなろうとお洒落を追求している。そうやって益々可愛くなる姉を見て、ルーシアンはムスッとしていた。
態度には出さないものの、ルーシアンはメアリードの事が大好きだった。簡潔に言えば──彼は、シスコンだった。
シスコンの程度はというと……大好きなお姉ちゃんに少しでも自慢の弟と思ってもらいたいと、宮廷魔導師を目指して猛勉強する程。
「そーだ。相談ならオレもあるの!」
「珍しいな、ジェジが相談だなんて。任せろ、今の俺はとても頭が冴えているからな。ジェジの相談もパパーッと解決してみせよう」
「おおっ! シャルにぃさっすがー! 早速なんだけど……今ってさ、世界中から人が来てるじゃん? その中に祖国の王様がいたんだ。オレさ、王様見てからずっと尻尾が震えてて……うぅ、思い出しただけでも怖いよぉ!」
「そうか、それは大変だな。俺がジェジの尻尾を押さえてあげよう、そしたら震えも止まるはずだ」
「ふにゃぁ……シャルにぃの手、気持ちいぃ……」
何この茶番。──そう、エリニティとディオリストラスは冷めた視線を彼等に送っていた。
酔った状態の馬鹿と天然馬鹿は、ラーク無しでは止められない。その事実を二人は痛感したようだ。
(……──クラリス、バドール、イリオーデ、ユーキ。誰でもいいからこの状況なんとかしてくれ!!)
ある日の夜中。以前アミレスより『皆も冬染祭を楽しんでね』と渡されたお小遣いで買いこんだ食材や酒を消費していた時。
酔った面々が好き勝手に話題を変えるものだから、この場は収拾がつかなくなり、ディオリストラスは誰か助けてくれと心から嘆くのであった……。
((この状況で相談するんだ、シャル兄……))
シャルルギルが突然話題を変える。するとディオリストラスはよくやった! と小さくガッツポーズを作り、エリニティとルーシアンは若干呆れていた。
「実は、半年ぐらい前からよく分からない女の子とよく出会うんだ。行く先々で会うというか……でもあの女の子は俺を『王子様』って呼ぶんだ。どう考えても人違いだと思うんだが、どうだろうか」
「シャル兄、多分それストーカーってやつだよ。今すぐ警備隊に言った方がいいって」
「すとーかー? なんだそれは。良くない事なのか」
「すっごく良くない事だよ」
予想外の相談内容に、思わず前のめりになるメアリード。なんと、シャルルギルはストーカー被害に遭っていたらしい。
「だが俺には何も無いんだ。たまに街で見かけると、建物の陰からこちらをじっと見てるだけで。たまに、『ファルの王子様……っ』とかなんとか、ほとんどため息みたいな声が聞こえてくる。でも俺は王子様じゃないから、俺の勘違いだと思う」
「いやそれ絶対ストーカーだから。どう考えてもストーカー! シャル兄の事が好きな女の子がシャル兄を運命の王子様♡ とか言って追いかけ回してるって事だから!」
「俺の事が……好きな、女の子。そんな人がこの世に存在したんだな」
目を丸くするシャルルギルを見て、男達は思う。
──そりゃその顔ならモテて当然だろ。と。
家族が大好きなラークの贔屓目無しでも、シャルルギルは整った顔だった。以前までは視力の悪さから常に眉間に皺があったものの、今では眼鏡のお陰でそれも改善され、理知的に見える美男子になっていた。
本人は気づいていないが、これまでも何度か彼は告白されている。ただその度に、
『あなたの事が好きです!』
『ん? ああ、俺も、家族が愛してくれる俺自身の事は好きだ』
とか、
『私と付き合ってください!』
『悪いが今から用事があるから、どこにも行けない。他を当たってくれ』
とか。定番の天然ボケをかましては告白イベントを破壊し尽くして来たのだ。
だがそれも仕方の無い事。シャルルギルにとって一番好きなものは家族なのだから、他人が突然そこに割り込む事など不可能だったのだ。
「……その『ファル』って名前の女が、シャル兄のストーカーなの? シャル兄が本当に嫌なら、見つけ出して始末するけど」
「おいサラッと物騒な事言うなよ、ユーキ」
「僕、どちらかと言えば暗殺のが得意」
「初めて聞いたわそんな事」
「初めて言ったからね」
ユーキのツーンとした態度を見て、これ以上追及しても無駄だと悟ったディオリストラスは肩を落とす。
「ユーキ、俺は大丈夫だ。嫌になったら自分でやめるように言うさ」
「……あっそ」
「そういえば、ユーキは何かないのか? こう、好きな人とかそういうの」
「オレも気になるーーっ!」
「重っ……ジェジ、のしかかるのやめろ……!」
恋バナに巻き込まれ、更にジェジが背中に突撃してきた。それによりユーキは顔を顰め、メアリードは不自然に聞き耳を立てる。
そして、ユーキはボソリと呟いた。
「はぁ……いないよ、そんなの。そもそも……まだ、あいつと再会出来てすらいないのに…………」
「あいつって誰の事? ねーねーユーキ、誰と再会しなきゃいけないのー?」
「うるせぇ、バカ犬!」
「あだッ!!」
尻尾を振りながらしつこく追及してくるジェジを振り払い、ユーキは不機嫌な様子で自室に向かって行った。
「もー、ユーキってば相変わらず素直じゃないにゃー」
「でも再会? ってなんの事なんだろ。ジェジはなんか知らない?」
「うーん……分かんない。ユーキ、自分の事全然話してくれないからにゃぁ、オレも知りたいぐらいだぞ」
「そっかー、じゃあ分かんねーなー。ま、そのうち話してくれるだろ」
そうやってジェジとエリニティが話す傍で、
(ユーキ兄が、誰かと会いたがってる……?! うそ、なんで? 今までそんな素振りなかったのに……どうしよう、ユーキ兄の会いたい人が女の人だったらどーしよう!!)
メアリードの顔色がサーッと青くなる。
「姉ちゃん、どうしたの? 顔色悪いよ」
「だ、大丈夫だよシアン! アタシ、すっごく元気だから!!」
(……チッ、絶対ユーキ兄関連だろうなこれ。姉ちゃんは僕の姉ちゃんなのに)
お金に余裕が出来たからか、近頃のメアリードは日々可愛くなろうとお洒落を追求している。そうやって益々可愛くなる姉を見て、ルーシアンはムスッとしていた。
態度には出さないものの、ルーシアンはメアリードの事が大好きだった。簡潔に言えば──彼は、シスコンだった。
シスコンの程度はというと……大好きなお姉ちゃんに少しでも自慢の弟と思ってもらいたいと、宮廷魔導師を目指して猛勉強する程。
「そーだ。相談ならオレもあるの!」
「珍しいな、ジェジが相談だなんて。任せろ、今の俺はとても頭が冴えているからな。ジェジの相談もパパーッと解決してみせよう」
「おおっ! シャルにぃさっすがー! 早速なんだけど……今ってさ、世界中から人が来てるじゃん? その中に祖国の王様がいたんだ。オレさ、王様見てからずっと尻尾が震えてて……うぅ、思い出しただけでも怖いよぉ!」
「そうか、それは大変だな。俺がジェジの尻尾を押さえてあげよう、そしたら震えも止まるはずだ」
「ふにゃぁ……シャルにぃの手、気持ちいぃ……」
何この茶番。──そう、エリニティとディオリストラスは冷めた視線を彼等に送っていた。
酔った状態の馬鹿と天然馬鹿は、ラーク無しでは止められない。その事実を二人は痛感したようだ。
(……──クラリス、バドール、イリオーデ、ユーキ。誰でもいいからこの状況なんとかしてくれ!!)
ある日の夜中。以前アミレスより『皆も冬染祭を楽しんでね』と渡されたお小遣いで買いこんだ食材や酒を消費していた時。
酔った面々が好き勝手に話題を変えるものだから、この場は収拾がつかなくなり、ディオリストラスは誰か助けてくれと心から嘆くのであった……。