だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
426.彼女を手料理で笑顔にしたい!
「おいシルフ! 邪魔するならさっさと出て行け!!」
「は〜〜? 邪魔なんかしてないし! そもそも何でボクが悪魔の言う事を聞かなきゃいけないんだよ」
「誰がどう見てもお前が邪魔だからだよ箱入り精霊!」
「誰が箱入りだ馬鹿舌!」
「料理のりの字すらも知らない奴に言われたかねェ!!」
「こっちだって人間には到底食べられないようなダークマター作ってた奴に言われたくない!!」
「あれはれっきとした魔界飯ですぅ〜〜!」
「だから人間には食えないっつってんだろ!」
ある日の昼頃の事。東宮が厨房は、混沌に包まれていた。
「落ち着けー、おふたりさーん」
「……もういっその事、あの二体は追い出した方がいいんじゃないか?」
「マクベスタ君の意見に賛成」
「右に同じく」
本来の目的などそっちのけでいがみ合う悪魔と精霊を遠い目で見守るのは、カイル、マクベスタ、アルベルト、イリオーデの四名。
そもそも、どうして彼等がエプロン姿で厨房に並ぶ事になったのか。それは、これより一時間程前に遡る。
いつものノリで東宮に潜入したカイルは、珍しく荷物を抱えていた。そして運がいいのか悪いのか、マクベスタはそんなカイルと東宮の廊下でバッタリ出くわした。
そして、開口一番にカイルは彼を誘ったのだ。
『マクベスタ、俺と一緒に料理しようぜ!』
──荷物の中にある、たくさんの食材をバンッ! と広げて見せてみて。マクベスタも困惑した面持ちでその食材とカイルの顔を交互に見ていた。
『料理……お前と、オレで?』
『おう。この前マクベスタがお菓子作ってくれただろ? それで俺も久々に料理したくなってさ。アミレスになんか食わせてやろうかなーって。アイツが喜びそうな料理知ってるからさ』
『アミレスが喜びそうな、料理?』
『一人じゃ作るの大変だし手伝ってくれよ』
『……そういう事なら』
こうして、二人は厨房へと向かった。その道中で暇そうなアルベルトとイリオーデと出会い、厨房を貸してほしい旨を説明。アルベルト達は監督がてら調理に混ざる事を条件にそれを許可した。
人数の増えた調理班は真っ直ぐ厨房に向かうが、厨房の手前で今度はシルフとシュヴァルツに出会った。どうやら彼等も暇を持て余しているらしい。
現在アミレスは珍しく昼寝をしている。セツやナトラと、窓際の長椅子で日向ぼっこをしながら眠るアミレスを見て、シルフとシュヴァルツは静かに部屋を出て来たのだ。
だからか、アミレスに構ってもらえず彼等は暇だった。そんな必要など全くないのに何故か二体で並んで歩き、暇潰しに『人間界の運命率異常に伴い予測される災害と文明の変遷について』や『神々へのより効果的な嫌がらせ』を議論していた。
その最中にカイル達と出会い、面白そうだと思い首を突っ込んだようなのだが。──この通り、二体して邪魔者扱いされるようになったという訳だ。
精霊王はこれまでの一万年の日々で常に世話される立場にあった為、そもそも料理など一度もした事がない。
魔王は魔界中でもかなり大雑把な部類の料理しか出来ない為、人間には食べられないような料理しか作れない。
とどのつまり。彼等は揃って戦力外通告を受けるような、料理力なのである。
「よし行けカイル。こういうのはお前が一番手馴れているだろう」
「俺に決めちゃったか〜〜! まあ、丁度いい案があるし、別にいいけどさ」
シルフ達を厨房から追い出せと背中を押され、カイルはため息混じりに行動に出た。
「なぁ、シルフにシュヴァルツよ。アンタ等に頼みたい事があるんだけど」
「何だクソガキ」
「ボクに指図するなよ」
「口悪ぃー……まあ、なんだ。二体って悪魔と精霊な訳だし、色々出来るんだろ? それを見越してちょっと作ってもらいたい物があるんだ」
カイルは腰に提げた鞄からサベイランスちゃんを取り出し、空間魔法を使って武器の設計図のようなものを手元に喚びだした。
その設計図をシルフに渡し、シュヴァルツは横からそれを覗き込む。
「何これ、武器?」
「変な形してんなァ」
武器という単語に反応し、「どんな武器なんだ」とばかりにカイル以外の面々が全員その図面を見る。
「日本と──……刀剣って言うの、それ。作り方とか必要なものとか、詳細は図面見てくれたら分かると思う」
「その刀剣とやらの図面をボク等に押し付けた理由は何?」
「オレサマは今料理を作りたいワケで、武器が作りてェワケじゃないんだが?」
「それ、アミレスにあげたらめちゃくちゃ喜ぶと思うぞ」
その一言でシルフとシュヴァルツはピタリと固まった。
「……──なァ、精霊の。エンヴィーって今喚べるか?」
「ボクを誰だと思ってるんだよ。いくらでも喚べる」
「それじゃァ、今から魔界行って良さげな素材持ってくるわ。どうせなら最強の魔剣作ろうぜ。聖剣でもいいが」
「……アミィの為だ、一時的に協力体制を敷こう。エンヴィーが人間界で工房を展開出来るかどうか試させないとな」
まさかのドリームタッグが成立してしまった。
魔王と精霊王が手を組み、本気で未知の武器の作成に取り掛かろうとする。その為、二体はああだこうだと意見を出し合いながら、厨房を後にした。
こうして厨房の平和は保たれた。
カイルを始めとした男四人は、気を取り直して料理に挑む。
「は〜〜? 邪魔なんかしてないし! そもそも何でボクが悪魔の言う事を聞かなきゃいけないんだよ」
「誰がどう見てもお前が邪魔だからだよ箱入り精霊!」
「誰が箱入りだ馬鹿舌!」
「料理のりの字すらも知らない奴に言われたかねェ!!」
「こっちだって人間には到底食べられないようなダークマター作ってた奴に言われたくない!!」
「あれはれっきとした魔界飯ですぅ〜〜!」
「だから人間には食えないっつってんだろ!」
ある日の昼頃の事。東宮が厨房は、混沌に包まれていた。
「落ち着けー、おふたりさーん」
「……もういっその事、あの二体は追い出した方がいいんじゃないか?」
「マクベスタ君の意見に賛成」
「右に同じく」
本来の目的などそっちのけでいがみ合う悪魔と精霊を遠い目で見守るのは、カイル、マクベスタ、アルベルト、イリオーデの四名。
そもそも、どうして彼等がエプロン姿で厨房に並ぶ事になったのか。それは、これより一時間程前に遡る。
いつものノリで東宮に潜入したカイルは、珍しく荷物を抱えていた。そして運がいいのか悪いのか、マクベスタはそんなカイルと東宮の廊下でバッタリ出くわした。
そして、開口一番にカイルは彼を誘ったのだ。
『マクベスタ、俺と一緒に料理しようぜ!』
──荷物の中にある、たくさんの食材をバンッ! と広げて見せてみて。マクベスタも困惑した面持ちでその食材とカイルの顔を交互に見ていた。
『料理……お前と、オレで?』
『おう。この前マクベスタがお菓子作ってくれただろ? それで俺も久々に料理したくなってさ。アミレスになんか食わせてやろうかなーって。アイツが喜びそうな料理知ってるからさ』
『アミレスが喜びそうな、料理?』
『一人じゃ作るの大変だし手伝ってくれよ』
『……そういう事なら』
こうして、二人は厨房へと向かった。その道中で暇そうなアルベルトとイリオーデと出会い、厨房を貸してほしい旨を説明。アルベルト達は監督がてら調理に混ざる事を条件にそれを許可した。
人数の増えた調理班は真っ直ぐ厨房に向かうが、厨房の手前で今度はシルフとシュヴァルツに出会った。どうやら彼等も暇を持て余しているらしい。
現在アミレスは珍しく昼寝をしている。セツやナトラと、窓際の長椅子で日向ぼっこをしながら眠るアミレスを見て、シルフとシュヴァルツは静かに部屋を出て来たのだ。
だからか、アミレスに構ってもらえず彼等は暇だった。そんな必要など全くないのに何故か二体で並んで歩き、暇潰しに『人間界の運命率異常に伴い予測される災害と文明の変遷について』や『神々へのより効果的な嫌がらせ』を議論していた。
その最中にカイル達と出会い、面白そうだと思い首を突っ込んだようなのだが。──この通り、二体して邪魔者扱いされるようになったという訳だ。
精霊王はこれまでの一万年の日々で常に世話される立場にあった為、そもそも料理など一度もした事がない。
魔王は魔界中でもかなり大雑把な部類の料理しか出来ない為、人間には食べられないような料理しか作れない。
とどのつまり。彼等は揃って戦力外通告を受けるような、料理力なのである。
「よし行けカイル。こういうのはお前が一番手馴れているだろう」
「俺に決めちゃったか〜〜! まあ、丁度いい案があるし、別にいいけどさ」
シルフ達を厨房から追い出せと背中を押され、カイルはため息混じりに行動に出た。
「なぁ、シルフにシュヴァルツよ。アンタ等に頼みたい事があるんだけど」
「何だクソガキ」
「ボクに指図するなよ」
「口悪ぃー……まあ、なんだ。二体って悪魔と精霊な訳だし、色々出来るんだろ? それを見越してちょっと作ってもらいたい物があるんだ」
カイルは腰に提げた鞄からサベイランスちゃんを取り出し、空間魔法を使って武器の設計図のようなものを手元に喚びだした。
その設計図をシルフに渡し、シュヴァルツは横からそれを覗き込む。
「何これ、武器?」
「変な形してんなァ」
武器という単語に反応し、「どんな武器なんだ」とばかりにカイル以外の面々が全員その図面を見る。
「日本と──……刀剣って言うの、それ。作り方とか必要なものとか、詳細は図面見てくれたら分かると思う」
「その刀剣とやらの図面をボク等に押し付けた理由は何?」
「オレサマは今料理を作りたいワケで、武器が作りてェワケじゃないんだが?」
「それ、アミレスにあげたらめちゃくちゃ喜ぶと思うぞ」
その一言でシルフとシュヴァルツはピタリと固まった。
「……──なァ、精霊の。エンヴィーって今喚べるか?」
「ボクを誰だと思ってるんだよ。いくらでも喚べる」
「それじゃァ、今から魔界行って良さげな素材持ってくるわ。どうせなら最強の魔剣作ろうぜ。聖剣でもいいが」
「……アミィの為だ、一時的に協力体制を敷こう。エンヴィーが人間界で工房を展開出来るかどうか試させないとな」
まさかのドリームタッグが成立してしまった。
魔王と精霊王が手を組み、本気で未知の武器の作成に取り掛かろうとする。その為、二体はああだこうだと意見を出し合いながら、厨房を後にした。
こうして厨房の平和は保たれた。
カイルを始めとした男四人は、気を取り直して料理に挑む。