だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「……何があったんですか?」
ゆっくりと歩を進めながら、ケイリオルさんが質問を投げ掛けてくる。
「まあ、色々ありまして。命の危機を感じましたので、正当防衛で彼女を制圧したところ、こうなりました」
「──命の危機?」
「はい。正直、なんの脅威にもならない粗末な殺意でしたが、周りの方々にまで被害が及んでもいけないので……私の判断で対処しました」
簡単にだが説明を行う。
すると横からシルフとシュヴァルツがにゅっと顔を出して、
「それについてはボク達が証明するよ。確かにその人間は、アミィに手を出そうとした。アミィが対処しなかったらボクがその人間を殺してた」
「今回の件はアミレスに全く責任は無いと、オレサマの真名にかけて誓うぜェ? その女がアミレスに意味不明な難癖つけた挙句、逆上して刃を向けたんだ。どの世界でも余裕で極刑ものだろ?」
私の発言が正しいのだと証言してくれた。
ありがとう、シルフ、シュヴァルツ! やっぱり持つべきものは信頼出来る友達ね!!
「そういう経緯でしたか。王女殿下、そのレディをこちらに引き渡していただけますか?」
もしかしてケイリオルさんがこの子を治してくれるのかな?
流石はケイリオルさんだ。そう感心しながらベイルラム嬢を引き渡して、
「えっ?」
私は自分の目を疑った。
「ええと……この部屋なら確かこの辺りに……あ、あったあった」
ゴミ袋を持つようにベイルラム嬢の首根っこを掴んで、まるで農具のように引き摺り回す。
ケイリオルさんは何かを探していたようで、足で床を叩きながら会場をウロウロとし始めたのだ。
その途中で目的のものが見つかったらしく、彼はタイルの上で五回程リズミカルに足音を鳴らした。それはさながらタップダンスのようで、何をしてるんだろうと首を傾げたその時。
ガコン! と音を立ててそのタイルが幾何学的に形を変える。レンガ模様を型取りながらタイルは消えたのだが、何とその下には奈落にも見紛う暗い穴があった。
「それじゃあ後は任せますね」
と穴に向けて言葉を落としたケイリオルさんは、その穴にベイルラム嬢を投げ入れた。ついでに、手袋も外して乱雑に放り投げる。
ベイルラム嬢と、ケイリオルさんの白手袋。
その二つの着地音が聞こえないまま、その穴はタイルで塞がれてしまった。タイルが元通りになったのを確認しつつ、ケイリオルさんは懐から同じデザインの手袋を取り出して、装着した。
「お待たせしてしまい申し訳ございません。実は王女殿下にご相談したい事がございまして」
振り返りざまに彼は口火を切った。
何事も無かったかのように。いつも通りの声音で、ケイリオルさんは私に話しかける。
「……あの、ケイリオル卿。彼女はどうなるんですか?」
「彼女と言うと、先程の罪人の事ですか」
「はい。あの穴は、一体……」
ベイルラム嬢の行く末が気になってしまい、話の腰を折りにいく。
「あれはこの城の至る所にある隠し通路の一つですよ。魔導機構製なので、大半のものは一般人には使えませんがね。ああ、ご安心を。彼女はきちんと処理されますので」
「処理、ですか」
「当然の事です。我が国唯一の王女殿下たる貴女に危害を加えようとしたのですから。それだけで、この氷の国においては万死に値します」
……そうか、そうだよね。
だって今の私はこの国でたった一人の王女だから。どれだけ出来損ないでも、数少ない皇族だから。
やっぱりこの立場って不便だ。役に立つ事のが多いけれど、それ以上に不自由に感じて仕方無い。
「すみません、当然の事を聞いてしまって。それで、相談とは?」
「そうですね……あまり人に聞かれても困りますので、場所を移しましょう。幸い、もうティーパーティーどころではなさそうなので」
「分かりました。じゃあ──皆、後片付けとか任せてもいいかしら」
片付けなんて面倒だと言うシルフ達に無理を言って、私はケイリオルさんと一緒に移動した。
ゆっくりと歩を進めながら、ケイリオルさんが質問を投げ掛けてくる。
「まあ、色々ありまして。命の危機を感じましたので、正当防衛で彼女を制圧したところ、こうなりました」
「──命の危機?」
「はい。正直、なんの脅威にもならない粗末な殺意でしたが、周りの方々にまで被害が及んでもいけないので……私の判断で対処しました」
簡単にだが説明を行う。
すると横からシルフとシュヴァルツがにゅっと顔を出して、
「それについてはボク達が証明するよ。確かにその人間は、アミィに手を出そうとした。アミィが対処しなかったらボクがその人間を殺してた」
「今回の件はアミレスに全く責任は無いと、オレサマの真名にかけて誓うぜェ? その女がアミレスに意味不明な難癖つけた挙句、逆上して刃を向けたんだ。どの世界でも余裕で極刑ものだろ?」
私の発言が正しいのだと証言してくれた。
ありがとう、シルフ、シュヴァルツ! やっぱり持つべきものは信頼出来る友達ね!!
「そういう経緯でしたか。王女殿下、そのレディをこちらに引き渡していただけますか?」
もしかしてケイリオルさんがこの子を治してくれるのかな?
流石はケイリオルさんだ。そう感心しながらベイルラム嬢を引き渡して、
「えっ?」
私は自分の目を疑った。
「ええと……この部屋なら確かこの辺りに……あ、あったあった」
ゴミ袋を持つようにベイルラム嬢の首根っこを掴んで、まるで農具のように引き摺り回す。
ケイリオルさんは何かを探していたようで、足で床を叩きながら会場をウロウロとし始めたのだ。
その途中で目的のものが見つかったらしく、彼はタイルの上で五回程リズミカルに足音を鳴らした。それはさながらタップダンスのようで、何をしてるんだろうと首を傾げたその時。
ガコン! と音を立ててそのタイルが幾何学的に形を変える。レンガ模様を型取りながらタイルは消えたのだが、何とその下には奈落にも見紛う暗い穴があった。
「それじゃあ後は任せますね」
と穴に向けて言葉を落としたケイリオルさんは、その穴にベイルラム嬢を投げ入れた。ついでに、手袋も外して乱雑に放り投げる。
ベイルラム嬢と、ケイリオルさんの白手袋。
その二つの着地音が聞こえないまま、その穴はタイルで塞がれてしまった。タイルが元通りになったのを確認しつつ、ケイリオルさんは懐から同じデザインの手袋を取り出して、装着した。
「お待たせしてしまい申し訳ございません。実は王女殿下にご相談したい事がございまして」
振り返りざまに彼は口火を切った。
何事も無かったかのように。いつも通りの声音で、ケイリオルさんは私に話しかける。
「……あの、ケイリオル卿。彼女はどうなるんですか?」
「彼女と言うと、先程の罪人の事ですか」
「はい。あの穴は、一体……」
ベイルラム嬢の行く末が気になってしまい、話の腰を折りにいく。
「あれはこの城の至る所にある隠し通路の一つですよ。魔導機構製なので、大半のものは一般人には使えませんがね。ああ、ご安心を。彼女はきちんと処理されますので」
「処理、ですか」
「当然の事です。我が国唯一の王女殿下たる貴女に危害を加えようとしたのですから。それだけで、この氷の国においては万死に値します」
……そうか、そうだよね。
だって今の私はこの国でたった一人の王女だから。どれだけ出来損ないでも、数少ない皇族だから。
やっぱりこの立場って不便だ。役に立つ事のが多いけれど、それ以上に不自由に感じて仕方無い。
「すみません、当然の事を聞いてしまって。それで、相談とは?」
「そうですね……あまり人に聞かれても困りますので、場所を移しましょう。幸い、もうティーパーティーどころではなさそうなので」
「分かりました。じゃあ──皆、後片付けとか任せてもいいかしら」
片付けなんて面倒だと言うシルフ達に無理を言って、私はケイリオルさんと一緒に移動した。