だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
435.ドロップ・アウト・スター5
「いやー、しっかし……無事に成功して何よりだわ。実質三徹だからもう眠くてやべーよ、俺」
「お望みなら永遠に眠らせてやるぜ?」
「星屑になりたいなら今すぐその魂燃やしてあげるよ」
「お前等って実は仲良いだろ?!」
緊張の糸が解れ、和気藹々とした空気が流れる。そんな中、一人の男性が焦った様子でこちらに駆け寄って来た。
「──ご歓談中に割り込む形となり、誠に申し訳ございません。少し、お時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
これまた顔の整った若い男性である。
そちらを振り返った瞬間、カイルが目を丸くした。
「あ、兄貴」
「兄貴。じゃないよ、カイル! 数日間ほとんど姿を見せないと思ったら……フォーロイト帝国の氷結の聖女殿と何をしてるんだい?」
「何って……見ての通りだよ、兄貴。縁あって仲良くなったからさ、これからは国とか関係無く仲良くしようねーって」
「仮にそうだとして、何であんな風に一緒に歌ったり踊ったり──歌劇のような真似をする事になったの。もしカイルが何か粗相を働いて罰を受けたらと思うと、僕は……」
どうやらこの男性はカイルのお兄さん──……つまり、本来死亡する筈だった王太子にしてハミルディーヒ王国の若き王、キールステン・ディ・ハミル氏のようだ。
そして、何かとめちゃくちゃなカイルに困らされている苦労人とお見受けする。
「兄貴は心配性だなぁ。大丈夫だって、コイツ等は良い奴だからそんな簡単には怒らないって」
「は? 何言ってんのお前」
「オレサマ、アミレスさえ許すならいつでも憤怒に身を任せる事も出来るんだが??」
「……うん、まあ、一部を除いて良い奴だからさ!」
前から思ってたんだけど、何でカイルとシルフとシュヴァルツはこんなにギスギスしてるんだろう。
もうかれこれ二年近い付き合いでしょう、皆? そろそろ仲良くなってくれてもいいと思うんだけど。
「あっ、挨拶が遅れてしまい申し訳ございません、アミレス姫。僕はキールステン・ディ・ハミル。弟がたいへんお世話になったようで……カイルは何か粗相などしておりませんか? もしかしたら棘のある発言をされたかもしれませんが、その……カイルに悪気はなくて……」
「大丈夫ですよ、カイルとは良好な友人関係を築けておりますから。寧ろ私が迷惑をかけてばかりで、ハミルディーヒ王になんと申し上げればよいか……」
キールステンさんがカイルを庇う為に慌てて弁明をする。
それを見て、「お兄さんを困らせちゃ駄目でしょ」とカイルを肘で小突いた。するとカイルは、「わざとじゃねぇよ。うちの兄ちゃんが優しすぎるだけだし」と謎の言い訳をした。
「いえっ、そんな。カイルがご迷惑になってないのであれば、何卒、これからも仲良くしてやっていただければ幸いです」
キールステンさんはゲームのカイルそっくりの微笑みを浮かべた。私の目の前にいるカイルとは違う、ゲームのカイルとの血の繋がりを強く感じる表情だった。
「…………それにしても。まさかあのカイルが女性と仲良く出来るなんて……」
キールステンさんの呟きは、吐息のようにさりげなく地面に落ちていった。
♢♢♢♢
「アミレス・ヘル・フォーロイト! 我が未来の花嫁よ! なんとも奇天烈で愉快、しかして美麗な演劇だったぞ!!」
皆でライブの感想を言い合っていた時。
悪寒が人の形を取って、ずんずんとやって来た。
「「──花嫁?」」
シルフとシュヴァルツの目の色が変わる。
それと同時に、あの男の本性を知るイリオーデとアルベルトが私を隠すように前に立つ。貴方達どこから現れたのよ。
「……なんの用ですか、ロンドゥーア皇帝」
二人の間から少し顔を出して、及び腰で対応する。
「良い、やはり良いなオマエは。先の笑顔もよいが……その糞を見るような冷たい目がオレの心を掴んで離してくれないのだよ」
「貴方の心を掴んだ覚えなんて微塵もないです」
「ははは、何を言う。こんなにもオレの欲を刺激してきよって……素晴らしい冷たさよな、我が未来の花嫁は」
本当に会話が成立しない。もうやだこの人、本当に同じ世界に生きてる人間ですか?
ていうか花嫁ってなんの話? 私の知らないところで知らない話が勝手に進んでるって。
「お望みなら永遠に眠らせてやるぜ?」
「星屑になりたいなら今すぐその魂燃やしてあげるよ」
「お前等って実は仲良いだろ?!」
緊張の糸が解れ、和気藹々とした空気が流れる。そんな中、一人の男性が焦った様子でこちらに駆け寄って来た。
「──ご歓談中に割り込む形となり、誠に申し訳ございません。少し、お時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
これまた顔の整った若い男性である。
そちらを振り返った瞬間、カイルが目を丸くした。
「あ、兄貴」
「兄貴。じゃないよ、カイル! 数日間ほとんど姿を見せないと思ったら……フォーロイト帝国の氷結の聖女殿と何をしてるんだい?」
「何って……見ての通りだよ、兄貴。縁あって仲良くなったからさ、これからは国とか関係無く仲良くしようねーって」
「仮にそうだとして、何であんな風に一緒に歌ったり踊ったり──歌劇のような真似をする事になったの。もしカイルが何か粗相を働いて罰を受けたらと思うと、僕は……」
どうやらこの男性はカイルのお兄さん──……つまり、本来死亡する筈だった王太子にしてハミルディーヒ王国の若き王、キールステン・ディ・ハミル氏のようだ。
そして、何かとめちゃくちゃなカイルに困らされている苦労人とお見受けする。
「兄貴は心配性だなぁ。大丈夫だって、コイツ等は良い奴だからそんな簡単には怒らないって」
「は? 何言ってんのお前」
「オレサマ、アミレスさえ許すならいつでも憤怒に身を任せる事も出来るんだが??」
「……うん、まあ、一部を除いて良い奴だからさ!」
前から思ってたんだけど、何でカイルとシルフとシュヴァルツはこんなにギスギスしてるんだろう。
もうかれこれ二年近い付き合いでしょう、皆? そろそろ仲良くなってくれてもいいと思うんだけど。
「あっ、挨拶が遅れてしまい申し訳ございません、アミレス姫。僕はキールステン・ディ・ハミル。弟がたいへんお世話になったようで……カイルは何か粗相などしておりませんか? もしかしたら棘のある発言をされたかもしれませんが、その……カイルに悪気はなくて……」
「大丈夫ですよ、カイルとは良好な友人関係を築けておりますから。寧ろ私が迷惑をかけてばかりで、ハミルディーヒ王になんと申し上げればよいか……」
キールステンさんがカイルを庇う為に慌てて弁明をする。
それを見て、「お兄さんを困らせちゃ駄目でしょ」とカイルを肘で小突いた。するとカイルは、「わざとじゃねぇよ。うちの兄ちゃんが優しすぎるだけだし」と謎の言い訳をした。
「いえっ、そんな。カイルがご迷惑になってないのであれば、何卒、これからも仲良くしてやっていただければ幸いです」
キールステンさんはゲームのカイルそっくりの微笑みを浮かべた。私の目の前にいるカイルとは違う、ゲームのカイルとの血の繋がりを強く感じる表情だった。
「…………それにしても。まさかあのカイルが女性と仲良く出来るなんて……」
キールステンさんの呟きは、吐息のようにさりげなく地面に落ちていった。
♢♢♢♢
「アミレス・ヘル・フォーロイト! 我が未来の花嫁よ! なんとも奇天烈で愉快、しかして美麗な演劇だったぞ!!」
皆でライブの感想を言い合っていた時。
悪寒が人の形を取って、ずんずんとやって来た。
「「──花嫁?」」
シルフとシュヴァルツの目の色が変わる。
それと同時に、あの男の本性を知るイリオーデとアルベルトが私を隠すように前に立つ。貴方達どこから現れたのよ。
「……なんの用ですか、ロンドゥーア皇帝」
二人の間から少し顔を出して、及び腰で対応する。
「良い、やはり良いなオマエは。先の笑顔もよいが……その糞を見るような冷たい目がオレの心を掴んで離してくれないのだよ」
「貴方の心を掴んだ覚えなんて微塵もないです」
「ははは、何を言う。こんなにもオレの欲を刺激してきよって……素晴らしい冷たさよな、我が未来の花嫁は」
本当に会話が成立しない。もうやだこの人、本当に同じ世界に生きてる人間ですか?
ていうか花嫁ってなんの話? 私の知らないところで知らない話が勝手に進んでるって。