だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
477.ビジネス・アライアンス・プリンス3
「そりゃあ方法はあるけど……フリードルが来るとは思わなかった。でもまぁ、方法を選ぶ程の余裕は無いし仕方ねぇか」
ここに来て何故か躊躇う様子にマクベスタが小首を傾げると、カイルはサベイランスちゃんに触れながらフリードルへと視線を向け、真剣な口調で告げる。
「フリードル、ここで見た事は他言無用で頼む。──この世界の為にもな」
「馴れ馴れしいぞ塵芥が」
「あーこの感じだと大丈夫そうだな、うん」
フリードルの辛辣な態度に苦笑し、カイルは「頼むぜ、サベイランスちゃん」と呟いた。
その直後サベイランスちゃんは宙に浮き、中性的な機械音声を発する。
《星間探索型魔導監視装置、仮想起動。魔導変換開始。事前指定、目次参照完了。環境型魔力循環機構、起動。自動魔力補填機能、並行起動。座標指定、クイントラ森林地帯。広域展開の為、膨大な魔力使用を予測。術式使用及び魔力運用の最適化実行──完了。隠蔽術式構成、完了。捜索対象、魔導兵器の登録完了。術式構成、全行程完了》
いつもよりも慎重に、いくつもの工程を重ねてその大魔術は発動した。
《絶対正義術式、全てを暴き出せ──発動》
その瞬間、カイルの視界には森林を覆い尽くす程の巨大な魔法陣が光り輝く。それは何色にも輝いて見えて、まるで虹のようでもあった。
その魔法陣が徐々に地面へ向かって落ちてゆく。まさに、魔法陣を通過したもの全てを読み込んでいるかのように……。
ここで、何が起きているのかさっぱり分からない二人はカイルに詰め寄った。
「おい、カイル・ディ・ハミル。貴様には尋問したい事が山程あるが……とにかくこの問いに答えろ。貴様──今、何をした?」
上空を眺めていたカイルの肩を掴み、フリードルが問い詰める。するとカイルは「ああ!」と驚きの声を上げた。
「しょうがないからお前等にも見えるようにしてやるよ」
と言って、「サベイランスちゃん頼んだぞ」と丸投げする。しかしサベイランスちゃんはカイル力作の高性能AI。丸投げされようとも、見事命令を遂行するのだ。
《絶対正義術式可視権限限定付与。対象、マクベスタ・オセロマイト及びフリードル・ヘル・フォーロイト》
サベイランスちゃんにより、二人にもそれを見る権限が与えられた。その瞬間彼等は言葉を失い、
「「──っ!?」」
共に、開いた口が塞がらなくなってしまった。
何せ見た事のない大きさと色の魔法陣が今もなお自分達に向かって振り注ごうとしているのだから。さしものフリードルとマクベスタとて、これには固まってしまう。
(なんだ、これは。一体、何者なんだ────カイル・ディ・ハミル……ッ!!)
ぎりりと強く噛み締められた奥歯。
フリードルは、自身の目に映ったものとそれを作り出したカイルを強く疑っていた。
「カイル……常々お前は異常だと思っていたが、どうやらオレが見ていたお前は氷山の一角に過ぎなかったようだな」
「え、俺いつも異常だって思われてたの?」
「まさかこのような、奇々怪々で理解不能な魔法まで使うとは。オレはお前が末恐ろしいよ」
「引かれてる? もしかしてこれ引かれてる??」
泣くよ? とかまってちゃんを発揮するカイルをやはり無視して、マクベスタは魔法陣を眺めていた。
やがて魔法陣が地面の中に吸い込まれて消えていくと、程なくして森の至る所で光の柱が立ち上った。これもまた、彼等三人にしか見えていない魔術の光である。
「二人共、光の柱は見えてるよな? あの柱の場所にこれと同じ魔導兵器がある筈なんだ」
手のひらサイズの魔導兵器を胸の高さに掲げ、カイルはマクベスタとフリードルに問いかけた。
「なんか思ってたよりもいっぱいあるみたいだし、手分けして回収しに行こう。こっちで一つ、物的証拠は確保してあるから、残りは爆発する隙もないぐらい一瞬で破壊してくれ。お前等なら出来るだろ?」
(──なんてったって、お前等は乙女ゲームの攻略対象なんだからな)
カイルが挑戦的に笑う。
すると、煽られたと感じたのかフリードルは表情を強ばらせた。
「……塵芥の分際で僕に指図するな。僕はあくまでも民の為に動くだけだ。貴様なぞに案じられずとも、その程度の事造作もない」
ふん、と鼻息を鳴らして踵を返す。それだけ言い残し、フリードルは馬に跨り森の北方へと駆け出した。
(アミレスの前ではあんなデレデレしてるのに、俺達相手だと──いや、俺相手だとこの辛辣っぷりかァ。ほんと、俺ってなんでこの世界の人達にここまで嫌われてんのかなー……)
あまりにも冷たいフリードルの背を見送りつつ、温度差やべ〜〜と、カイルは肩を竦める。
誰も彼もに嫌われるのは、アミレスと非常に仲が良いからなのだが──……前世から凄くモテていた彼は他者の嫉妬に慣れておりことそれに関しては鈍感になった為、出会う人全てにやけに目の敵にされている理由が分からないらしい。
「それじゃあオレは南方にあるものを回収してくるが、カイルはどうするんだ?」
「え? ああ、じゃあ西と東は俺が回収してくるよ。ある程度回収したらまたこの辺に集合な」
「分かった」
軽く頷き、マクベスタは近くの木に繋いでいた芦毛の馬に乗って南方へ向かった。
「さて。それじゃあ俺も行くか」
サベイランスちゃんを介し、空間魔法を使用する。
白い魔法陣から現れたほうきは一見どこにでもあるようなほうきだが、なんとカイルはそれに飛び乗り、不敵に笑う。
「雪国育ち舐めないでもろて」
全く決まらないキメ台詞を口にして、カイルはほうきをスノーボードのように操り、木々の間を高速ですり抜けていく。
翼の魔力で移動する事も出来るのだが、下手に様々な属性の魔力を扱えると周囲に知らせる訳にもいかないので、空の魔力で操っていると言い訳出来るほうきを移動手段として用意しておいたのだ。
火の魔力と風の魔力を用いたブーストをかける事も出来るので、かなりのスピードを出せるとか。
──こうして。
氷結の貴公子。雷鳴の黒騎士。神才の奇術師。
馬が合うとは言い難い三人の王子達による業務提携が、ここに実現した。
ここに来て何故か躊躇う様子にマクベスタが小首を傾げると、カイルはサベイランスちゃんに触れながらフリードルへと視線を向け、真剣な口調で告げる。
「フリードル、ここで見た事は他言無用で頼む。──この世界の為にもな」
「馴れ馴れしいぞ塵芥が」
「あーこの感じだと大丈夫そうだな、うん」
フリードルの辛辣な態度に苦笑し、カイルは「頼むぜ、サベイランスちゃん」と呟いた。
その直後サベイランスちゃんは宙に浮き、中性的な機械音声を発する。
《星間探索型魔導監視装置、仮想起動。魔導変換開始。事前指定、目次参照完了。環境型魔力循環機構、起動。自動魔力補填機能、並行起動。座標指定、クイントラ森林地帯。広域展開の為、膨大な魔力使用を予測。術式使用及び魔力運用の最適化実行──完了。隠蔽術式構成、完了。捜索対象、魔導兵器の登録完了。術式構成、全行程完了》
いつもよりも慎重に、いくつもの工程を重ねてその大魔術は発動した。
《絶対正義術式、全てを暴き出せ──発動》
その瞬間、カイルの視界には森林を覆い尽くす程の巨大な魔法陣が光り輝く。それは何色にも輝いて見えて、まるで虹のようでもあった。
その魔法陣が徐々に地面へ向かって落ちてゆく。まさに、魔法陣を通過したもの全てを読み込んでいるかのように……。
ここで、何が起きているのかさっぱり分からない二人はカイルに詰め寄った。
「おい、カイル・ディ・ハミル。貴様には尋問したい事が山程あるが……とにかくこの問いに答えろ。貴様──今、何をした?」
上空を眺めていたカイルの肩を掴み、フリードルが問い詰める。するとカイルは「ああ!」と驚きの声を上げた。
「しょうがないからお前等にも見えるようにしてやるよ」
と言って、「サベイランスちゃん頼んだぞ」と丸投げする。しかしサベイランスちゃんはカイル力作の高性能AI。丸投げされようとも、見事命令を遂行するのだ。
《絶対正義術式可視権限限定付与。対象、マクベスタ・オセロマイト及びフリードル・ヘル・フォーロイト》
サベイランスちゃんにより、二人にもそれを見る権限が与えられた。その瞬間彼等は言葉を失い、
「「──っ!?」」
共に、開いた口が塞がらなくなってしまった。
何せ見た事のない大きさと色の魔法陣が今もなお自分達に向かって振り注ごうとしているのだから。さしものフリードルとマクベスタとて、これには固まってしまう。
(なんだ、これは。一体、何者なんだ────カイル・ディ・ハミル……ッ!!)
ぎりりと強く噛み締められた奥歯。
フリードルは、自身の目に映ったものとそれを作り出したカイルを強く疑っていた。
「カイル……常々お前は異常だと思っていたが、どうやらオレが見ていたお前は氷山の一角に過ぎなかったようだな」
「え、俺いつも異常だって思われてたの?」
「まさかこのような、奇々怪々で理解不能な魔法まで使うとは。オレはお前が末恐ろしいよ」
「引かれてる? もしかしてこれ引かれてる??」
泣くよ? とかまってちゃんを発揮するカイルをやはり無視して、マクベスタは魔法陣を眺めていた。
やがて魔法陣が地面の中に吸い込まれて消えていくと、程なくして森の至る所で光の柱が立ち上った。これもまた、彼等三人にしか見えていない魔術の光である。
「二人共、光の柱は見えてるよな? あの柱の場所にこれと同じ魔導兵器がある筈なんだ」
手のひらサイズの魔導兵器を胸の高さに掲げ、カイルはマクベスタとフリードルに問いかけた。
「なんか思ってたよりもいっぱいあるみたいだし、手分けして回収しに行こう。こっちで一つ、物的証拠は確保してあるから、残りは爆発する隙もないぐらい一瞬で破壊してくれ。お前等なら出来るだろ?」
(──なんてったって、お前等は乙女ゲームの攻略対象なんだからな)
カイルが挑戦的に笑う。
すると、煽られたと感じたのかフリードルは表情を強ばらせた。
「……塵芥の分際で僕に指図するな。僕はあくまでも民の為に動くだけだ。貴様なぞに案じられずとも、その程度の事造作もない」
ふん、と鼻息を鳴らして踵を返す。それだけ言い残し、フリードルは馬に跨り森の北方へと駆け出した。
(アミレスの前ではあんなデレデレしてるのに、俺達相手だと──いや、俺相手だとこの辛辣っぷりかァ。ほんと、俺ってなんでこの世界の人達にここまで嫌われてんのかなー……)
あまりにも冷たいフリードルの背を見送りつつ、温度差やべ〜〜と、カイルは肩を竦める。
誰も彼もに嫌われるのは、アミレスと非常に仲が良いからなのだが──……前世から凄くモテていた彼は他者の嫉妬に慣れておりことそれに関しては鈍感になった為、出会う人全てにやけに目の敵にされている理由が分からないらしい。
「それじゃあオレは南方にあるものを回収してくるが、カイルはどうするんだ?」
「え? ああ、じゃあ西と東は俺が回収してくるよ。ある程度回収したらまたこの辺に集合な」
「分かった」
軽く頷き、マクベスタは近くの木に繋いでいた芦毛の馬に乗って南方へ向かった。
「さて。それじゃあ俺も行くか」
サベイランスちゃんを介し、空間魔法を使用する。
白い魔法陣から現れたほうきは一見どこにでもあるようなほうきだが、なんとカイルはそれに飛び乗り、不敵に笑う。
「雪国育ち舐めないでもろて」
全く決まらないキメ台詞を口にして、カイルはほうきをスノーボードのように操り、木々の間を高速ですり抜けていく。
翼の魔力で移動する事も出来るのだが、下手に様々な属性の魔力を扱えると周囲に知らせる訳にもいかないので、空の魔力で操っていると言い訳出来るほうきを移動手段として用意しておいたのだ。
火の魔力と風の魔力を用いたブーストをかける事も出来るので、かなりのスピードを出せるとか。
──こうして。
氷結の貴公子。雷鳴の黒騎士。神才の奇術師。
馬が合うとは言い難い三人の王子達による業務提携が、ここに実現した。