だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
483.バイオレンスクイーン6
「……いえ、何も。時に主君、件の魔導兵器とやらを探さなくても大丈夫なのですか?」
「あっ!? そうだよ魔導兵器を探さなきゃいけないの!」
度々水を差された事によりかなり遅れてしまった。
私があの地下室より脱走してから既に三十分以上経過している。もしかしたら、既に脱走が敵に知られているやもしれない。
一刻を争う状況だと言うのに何故茶番を繰り返していたのか!
「そういう訳だからシルフもシュヴァルツも喧嘩はやめて力を貸して!」
必死に訴えかけると、二体は揃って「チッ」と互いへと舌打ちをして、不自然な笑顔でこちらを向いた。
「ボクは最初からそのつもりだよ、アミィ。そこの悪魔になんか頼らなくたってもう平気さ」
「与えたモン回収しねェと何も出来ねェ雑魚精霊なんかの力がなくとも、オレサマの力があればじゅうぶんだぜ?」
治安が悪い!!
「もう! 二体共っ、仲良くしないなら明日から二週間ぐらい口聞かないからね!?」
もはや、このような子供っぽい方法しか思いつかなかった。
だが彼等がやけに私に甘い事を考えれば、多分、これが最善と考えたのだ。
すっごい自意識過剰で舌噛みたくなるけど。
「なっ……?! なんでそんな惨いことを言うの?!」
「おま──ッ、オレサマが二週間もお前に無視されるのに耐えられると思ってんのか?!」
想像以上に効いていて、思わず固まる。
「最近アミィの対応がどんどん冷たくなってきてそれだけでも辛いのに……そもそも相手して貰えなくなるとか。ボク、寂しくて嫉妬に狂いそう……」
星が全て墜ちたかのように、暗黒に染まりゆくシルフの瞳。
なんか分かりやすく闇堕ちしようとしてる?! と困惑するも、
「どんな仕置でも拷問でも甘んじて受け入れる。だから放置だけは……それだけは──っ」
いやに切迫した様子で声と体を震えさせるシュヴァルツに意識を持っていかれる。
なんだか二体共、本当にらしくない。
そんなに口利かない宣言がショックだったの……??
「……──本当になんなのさっきから?!」
「王──っシルフサン! 一体先程から何が!!」
今度はケイだけでなくフィンまで現れた。
シルフの真っ黒な瞳を見たフィンは、ハッとなり慌てた様子でこちらを振り向き、両肩を掴んで叫ぶ。
「姫君っ、詳しい経緯は存じませんが、とにかく何でも宜しいのでシルフサンの機嫌を直してくれませんか! このままでは──……星の爆発相当の爆発が発生します!!」
「はい?!」
なんでシルフが爆弾になってるの!? メルトダウンって何!?
「ほんっっっとにごめんねうちのマスターが! 感情芽生えてからまだ日が浅くてその点では赤ちゃんみたいなものなの!! だから姫ちゃんがあやしてあげてくれないかな?!」
あやす?! 私が、シルフを?!
まあ、なんか私の所為みたいだし……責任を取るべきなのかな。
ケイとフィンの鬼気迫る表情にあてられ、覚悟を決める。
「わ、わー! もう、冗談だよ冗談! 口利かないなんてそんな、私の方がずっと寂しくて耐えられなくなるよ!!」
頑張って先程の言葉を取り消さんとする。
どれだけ急ぎたくてもすぐに足止めされるこの状況。もしもの事態が起きたらどうしよう──と最悪の場面を想像しては心の中で泣きそうになっていた。
もういっそのこと、水に溶けて逃げ出してやろうか。
「……ほんとう? ボクと話せなかったら、寂しい?」
「勿論寂しいよ!」
「……そっか。そうだよね。ボクったら何を焦っていたんだろう。ふふ、でも二度とこんな冗談は言わないでね」
「あはは。ご、ごめんね!」
シルフの瞳に星の輝きが戻る。恍惚とした表情で笑うシルフを見て、私とケイとフィンは同時に深く息を吐いた。
「……お手数お掛けします、姫君。まさかシルフサンがここまで情緒不安定になるとは思わず……」
「次こうなったらその時はラブちとマリちゃん呼び出してマスターを精霊界に強制送還させるから。安心してね、姫ちゃん」
「ありがとうございます」
疲れ切った様子のお二方はため息混じりに精霊界へと帰って行った。
その直後、シルフはスキップしながらテントを出て、
「それじゃあボクは先に魔導兵器を探しておくね!」
我先にと魔導兵器捜索に乗り出した。ドッと押し寄せた疲れに肩を落とし、シルフのあまりの自由奔放っぷりにその場で立ち尽くす。
すると音も無くシュヴァルツが背後に迫り、覆い被さるように抱き着いてきた。
彼の黒曜と純白の長髪が、視界の端でカーテンのようにふわりと揺れる。
「シュヴァルツ?」
「……もう悪いことはしないから。お前の言う事も聞くし、あの我儘精霊とだって仲良くする。だから──……お願い。ぼくを、忘れないでくれ」
泡のように瞬く間に消えてしまいそうな弱々しい声。
そう切に訴えかけてくる彼の体は、僅かに震えていた。
「忘れたりなんてしないよ。ほら、さっきのは冗談って言ったでしょ?」
「……冗談でもそんな事言わないでくれ。捨てられる気持ちなんて、そう何度も味わいたくないんだよ…………」
「──傷つけてごめんね。もう二度とあんな事は言わないから」
「ん……」
頭まで手が届かず彼の頬を撫でると、いつも以上にシュヴァルツは大人しくなった。私の手を掴み、頬を擦り寄せてくる程に。
……私はどうやら、彼を深く傷つけてしまっていたらしい。たとえ冗談だったとしても──いや、冗談だからこそ、誰かを傷つけるような言葉は口にしてはいけない。
これからは、よりいっそう気をつけないと。
「シュヴァルツも力を貸してくれるんだよね。ほら、一緒に行こう」
「あぁ」
短く返事をして、RPGの仲間のようにシュヴァルツは私の後ろを物静かに歩く。
さて……これでようやく魔導兵器探しが出来る。
随分と出遅れてしまったが──とにかく間に合ってくれと祈りながら、私達はテントを後にした。
「あっ!? そうだよ魔導兵器を探さなきゃいけないの!」
度々水を差された事によりかなり遅れてしまった。
私があの地下室より脱走してから既に三十分以上経過している。もしかしたら、既に脱走が敵に知られているやもしれない。
一刻を争う状況だと言うのに何故茶番を繰り返していたのか!
「そういう訳だからシルフもシュヴァルツも喧嘩はやめて力を貸して!」
必死に訴えかけると、二体は揃って「チッ」と互いへと舌打ちをして、不自然な笑顔でこちらを向いた。
「ボクは最初からそのつもりだよ、アミィ。そこの悪魔になんか頼らなくたってもう平気さ」
「与えたモン回収しねェと何も出来ねェ雑魚精霊なんかの力がなくとも、オレサマの力があればじゅうぶんだぜ?」
治安が悪い!!
「もう! 二体共っ、仲良くしないなら明日から二週間ぐらい口聞かないからね!?」
もはや、このような子供っぽい方法しか思いつかなかった。
だが彼等がやけに私に甘い事を考えれば、多分、これが最善と考えたのだ。
すっごい自意識過剰で舌噛みたくなるけど。
「なっ……?! なんでそんな惨いことを言うの?!」
「おま──ッ、オレサマが二週間もお前に無視されるのに耐えられると思ってんのか?!」
想像以上に効いていて、思わず固まる。
「最近アミィの対応がどんどん冷たくなってきてそれだけでも辛いのに……そもそも相手して貰えなくなるとか。ボク、寂しくて嫉妬に狂いそう……」
星が全て墜ちたかのように、暗黒に染まりゆくシルフの瞳。
なんか分かりやすく闇堕ちしようとしてる?! と困惑するも、
「どんな仕置でも拷問でも甘んじて受け入れる。だから放置だけは……それだけは──っ」
いやに切迫した様子で声と体を震えさせるシュヴァルツに意識を持っていかれる。
なんだか二体共、本当にらしくない。
そんなに口利かない宣言がショックだったの……??
「……──本当になんなのさっきから?!」
「王──っシルフサン! 一体先程から何が!!」
今度はケイだけでなくフィンまで現れた。
シルフの真っ黒な瞳を見たフィンは、ハッとなり慌てた様子でこちらを振り向き、両肩を掴んで叫ぶ。
「姫君っ、詳しい経緯は存じませんが、とにかく何でも宜しいのでシルフサンの機嫌を直してくれませんか! このままでは──……星の爆発相当の爆発が発生します!!」
「はい?!」
なんでシルフが爆弾になってるの!? メルトダウンって何!?
「ほんっっっとにごめんねうちのマスターが! 感情芽生えてからまだ日が浅くてその点では赤ちゃんみたいなものなの!! だから姫ちゃんがあやしてあげてくれないかな?!」
あやす?! 私が、シルフを?!
まあ、なんか私の所為みたいだし……責任を取るべきなのかな。
ケイとフィンの鬼気迫る表情にあてられ、覚悟を決める。
「わ、わー! もう、冗談だよ冗談! 口利かないなんてそんな、私の方がずっと寂しくて耐えられなくなるよ!!」
頑張って先程の言葉を取り消さんとする。
どれだけ急ぎたくてもすぐに足止めされるこの状況。もしもの事態が起きたらどうしよう──と最悪の場面を想像しては心の中で泣きそうになっていた。
もういっそのこと、水に溶けて逃げ出してやろうか。
「……ほんとう? ボクと話せなかったら、寂しい?」
「勿論寂しいよ!」
「……そっか。そうだよね。ボクったら何を焦っていたんだろう。ふふ、でも二度とこんな冗談は言わないでね」
「あはは。ご、ごめんね!」
シルフの瞳に星の輝きが戻る。恍惚とした表情で笑うシルフを見て、私とケイとフィンは同時に深く息を吐いた。
「……お手数お掛けします、姫君。まさかシルフサンがここまで情緒不安定になるとは思わず……」
「次こうなったらその時はラブちとマリちゃん呼び出してマスターを精霊界に強制送還させるから。安心してね、姫ちゃん」
「ありがとうございます」
疲れ切った様子のお二方はため息混じりに精霊界へと帰って行った。
その直後、シルフはスキップしながらテントを出て、
「それじゃあボクは先に魔導兵器を探しておくね!」
我先にと魔導兵器捜索に乗り出した。ドッと押し寄せた疲れに肩を落とし、シルフのあまりの自由奔放っぷりにその場で立ち尽くす。
すると音も無くシュヴァルツが背後に迫り、覆い被さるように抱き着いてきた。
彼の黒曜と純白の長髪が、視界の端でカーテンのようにふわりと揺れる。
「シュヴァルツ?」
「……もう悪いことはしないから。お前の言う事も聞くし、あの我儘精霊とだって仲良くする。だから──……お願い。ぼくを、忘れないでくれ」
泡のように瞬く間に消えてしまいそうな弱々しい声。
そう切に訴えかけてくる彼の体は、僅かに震えていた。
「忘れたりなんてしないよ。ほら、さっきのは冗談って言ったでしょ?」
「……冗談でもそんな事言わないでくれ。捨てられる気持ちなんて、そう何度も味わいたくないんだよ…………」
「──傷つけてごめんね。もう二度とあんな事は言わないから」
「ん……」
頭まで手が届かず彼の頬を撫でると、いつも以上にシュヴァルツは大人しくなった。私の手を掴み、頬を擦り寄せてくる程に。
……私はどうやら、彼を深く傷つけてしまっていたらしい。たとえ冗談だったとしても──いや、冗談だからこそ、誰かを傷つけるような言葉は口にしてはいけない。
これからは、よりいっそう気をつけないと。
「シュヴァルツも力を貸してくれるんだよね。ほら、一緒に行こう」
「あぁ」
短く返事をして、RPGの仲間のようにシュヴァルツは私の後ろを物静かに歩く。
さて……これでようやく魔導兵器探しが出来る。
随分と出遅れてしまったが──とにかく間に合ってくれと祈りながら、私達はテントを後にした。