だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 さて。これでもうお分かりだろう。
 ルーディは奪の魔力の最上位精霊だ。……確かルーディでまだ二代目だったか?
 最上位精霊と言う立場は世襲制で、先代の最上位精霊よりその権能を受け継いだ者が自動的にその属性の最上位に立つ事になる。
 だからこそ、各属性の下位精霊や上位精霊の間では日夜後継争いが起きているのだとか。
 これだけ魔力属性が存在しているものの、数百年前より人間に所持させまいと人間界にて絶滅させた魔力がいくらか在る。
 まず一つ目が奪の魔力。他には終の魔力、創の魔力、逆の魔力、悪の魔力……これらがそれに該当する。
 勿論それらの最上位精霊は代替わり等をして現在も精霊界に存在している。だが、人間にその魔力を与えられないよう、制約によって縛られている。

 …………あまりにも話が逸れ過ぎたね。そろそろ話を戻そうか。
 そう言った様々な理由があって、各属性の最上位精霊はその魔力の基盤となった権能を所持しており、特に亜種属性に関しては【新たに人間に魔力を与えない】と言う制約に抵触せず小規模な場合に限り、人間界での権能の使用を認められている。
 四大属性と比べて亜種属性は危険性の高い魔力属性が多い。だからこそ、制約にこのような項目が後から追加されてしまったのだ。
 ルーディも勿論それは理解している事だろう。ボクの命令ならありとあらゆる物を奪うと豪語していたが、決して実行する事は無い。何故なら制約に抵触してしまうから。
 制約に抵触する事がボク達精霊にとって如何程に厄介な事か、それは精霊ならば誰だって理解している。
 人間界と精霊界の間で神々によって勝手に交わされた制約──それに、ボク達精霊は何万年と縛られ続けているのだ。
 今までは別に気にしていなかったのだけど、今となってはこの制約が邪魔で仕方ない。
 制約を破棄出来れば、ボクだって本体で精霊界から出られるのに……アミィが無茶する時にそれを止められるし、手伝ってあげる事も守る事も出来る。
 だが制約が残る今、ボクに出来る事はアミィに加護をあげて間接的に護る事ぐらいだ。
 制約の所為で、ボクに限っては権能を扱う事が出来ない。精霊の中でも最も制約で縛られているボクは、エンヴィーやルーディよりもずっとやれる事が無い。
 アミィに加護をかけたり、魔法を教えてあげたり少しだけ魔法をかけてあげたり……それがボクの限界なんだ。

「マイ・ロード。魔力ついでに彼等の属性を奪ってみても構いませんか?」
「……あぁ、そう言えば昔、そんな実験をしてたな。でもすぐに止めろよ、そいつ等は殺すな」
「アイ了解、感謝感激! 嗚呼っ、久々の実験だ!!」

 もう魔力を奪い尽くしてしまったらしいルーディが、目を爛々と輝かせて実験を開始した。
 実験と言うのは、その人間の魂に刻まれた魔力属性を強制的に剥奪した場合、魔力原子の変換は正常に行われるのか……と言う内容の割と非人道的な実験だ。
 八百年程前にルーディを始めとした馬鹿数体が考えなしにこの実験を行い、何処かの土地と国を滅ぼしかけた為、強制的に実験を止めさせた事があった。
 魔力原子の変換が滞ると人間等の生物は魔力中毒なる致死率九分九厘の症状に至る。しかしそれは普通なら起こりえない事象だ。
 だがルーディの権能があれば、それを意図的に引き起こす事が可能だ……可能だからってやっていい訳では無いんだが。
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