だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「ええと、大衆浴場はその名のまま、大衆向けの大浴場です。低価格で誰もが湯浴みを出来れば体を洗う事も出来ますし、その影響で衛生観念も変わってゆくかと思いまして」

 すると、伯爵がバッと顔を上げた。その直後、前のめりで彼は更に聞いてきた。

「つまり同じ湯に見ず知らずの者達が共に入ると?」
「そうなりますね」
「浴槽の掃除等はどうなさるのですか? 水の入れ替え等は……そもそもどうやって湯を沸かし続けるのですか?」

 伯爵は興味津々とばかりにぐいぐい質問して来る。伯爵には大規模な取引をして貰う訳だし、別に隠しておきたい訳でも無いから、ここは普通に話そう。

「浴槽の掃除も大衆浴場の運営も全て現地の方々に行って頂くつもりです。水の入れ替えと湯を沸かす方法なら私が用意します」
「……差し支え無ければ、お伺いしても宜しいでしょうか?」

 その詳細を話す前に、念の為シルフを見る。シルフは小さくこくりと頷いた。
 シルフからの許可も出た事だし……私は今一度伯爵の方を見て、その詳細を話した。

「……水を沸かす魔法陣を浴槽に刻んでおけば、後は魔力石さえあれば常時発動が可能です。水の入れ替えは……常に水を排水しつつ常に浴槽に水を入れ続ける事により、常に綺麗な湯船を保てるでしょう。浄水に関しては上水道で使用されている魔導具と同じ物を用いる予定です」

 私に付与魔法《エンチャント》が使えたならば、もっと簡単に楽な手段を取れたのだろうけど……今の私に出来る事はこれぐらいしか無い。
 ……それでも付与魔法《エンチャント》とほぼ相違ない手段を取るから、魔法の先生たるシルフの許可が必要だったのだ。
 浴槽に刻む魔法陣は水を沸かす魔法では無く、水の温度を一定に保つ魔法だ。その魔法陣を浴槽に刻み、魔力石と呼ばれる魔力の塊の石を設置する事で、その魔法陣は私の管理から外れて常時発動し続ける事になる……とシルフは語っていた。
 何しろこの方法を提案して来たのはシルフなのだ。私はシルフから聞いたままに話しているだけに過ぎない。
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