だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「どうしたの、マクベスタ?」

 お菓子を食べる手を一度止め、マクベスタに尋ねる。すると彼は鳩が豆鉄砲を食ったような顔を作り、おもむろに話し出した。

「……少し気になっていたんだが、あれだけの膨大な予算はどうやって捻出したんだ? それに、建築には人手がいるだろう。そちらはどうするつもりなんだ?」

 マクベスタは真面目な顔をしていた。本当に、マクベスタにはほとんど何も話さず連れて来たから……彼がこうして疑問に思うのも不思議ではないわね。

「今回の費用は私の皇宮に割り振られている予算から出してるの。どうせ数年間ほとんど使わず貯蓄して来た予算だもの、多少ここで使っても問題ないわ」
「多少……? 氷金貨約二千百枚を多少と言うのか、お前は……」

 マクベスタが信じられない物を見るかのような目でこちらを見てくる。
 だがしかし、本当に多少と言う気分なのだ。最低でも氷金貨二千枚分ぐらいは貯蓄もあるだろうなと私は思っていたのだが、実際の貯蓄はなんと氷金貨一万枚近くあり、恐ろしい事に氷晶貨も五十枚程あるらしい。
 予算管理はハイラさんに任せていた為、詳しい年間予算をそもそも知らない私はこれが正常なのか異常なのかも分からなかった。
 ハイラさんが平然とこの金額を提示してきたので、まぁそう言うものなんだろうな。と雑に自分を納得させたのである。
 ちなみに私の皇宮と言うのは、皇宮の中の私のものとなっている東宮の事で、皇宮は全三つの西宮・北宮・東宮に別れている。
 王子は西宮、王女は東宮、皇帝と后は北宮……と住む場所が綺麗に分けられているのだが、現在この国の皇族は皇帝とフリードルと私の三人のみで、それぞれの宮に一人で住んでいる状態なのだ。
 本来その宮に住む皇族の年長者が宮の予算を管理するのだが、それがいない為、この東宮の予算は全て私が管理する羽目になっている。まぁ、恐らくフリードルも皇帝もそうなのだろうけど。
 その為、私──アミレスにこれまでの十二年間与えられ続けた予算《おこづかい》の貯蓄は、今や国家予算に匹敵する程に。
 そりゃあ、多少とか、かっこつけた事も言えちゃうよね。

「人手の方は全然大丈夫。現地の人達に手伝ってもらうつもりだから。ちゃんと働きに応じて給金もあげるつもりよ」

 ついでとばかりに私は人手の方の説明もした。これならわざわざ大量に業者等を雇用する必要も無いし、貧民街の方々に働くと言う事を知ってもらえるチャンスにもなる。
 合法的な方法でお金を与える事も出来るしね。流石は私、天才的発想だわ。
 そんな鼻高々な私に、マクベスタがさらりと告げる。
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