だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 わたしが檻に入れられた時から四日ぐらいが経った日に、また一人新たに女の子が連れて来られた。
 檻越しにその女の子を見た瞬間、ずっとゴロゴロしていた男の子がバッと勢いよく体を起こして、口角を上げながらその姿をじっと見つめていた。
 ……その女の子は、とても綺麗で可愛い女の子だった。わたしの真っ赤な魔眼とは正反対のとても綺麗な寒色の瞳……こんな状況なのに、彼女の瞳には絶望の二文字が全く無くて、とても強い意志に輝いていた。
 その瞳にわたしは引き込まれて、見蕩れていた。でも、わたしにずっと見られるなんて相手に失礼だし可哀想だと思い、急いでわたしは俯いた。
 その時、驚きの言葉が聞こえてきた。

「──あのね、私はここにいる皆を助けに来たの」

 あの女の子はとても強い意志の宿った声で朗々と宣言した。
 わたし達全員がそれには息を飲んだ。……男の子だけは、楽しそうに笑顔を浮かべていた。

「たす、けに? あたし達を?」

 ユリエアちゃんが、女の子に向けて恐る恐ると言った風に問うていた。

「ええそうよ」

 女の子は、それにさも当然かのように即答した。だが、ユリエアちゃんはまだ質問を続けたのだ。

「あなた一人で?」
「……残念ながら私には仲間がいなくて」

 申し訳なさそうに、女の子はそう言った。だけど、女の子からは一人でも成し遂げてみせると言わんばかりの気合いが溢れていた。
 その時、わたしにだけ聞こえるような小声で、男の子が自慢げに呟いた。

「……ね、だから言ったでしょー? ぼくの予言は結構当たるんだって」

 わたしはそれを聞いて、また更に期待してしまった。
 あの女の子がわたし達を助けてくれるの? 見ず知らずのわたし達を、なんの得にもならないのに?
 ……本当に、なんの得にもならないし、むしろ損ばかりになりそうな事なのに……あの女の子がその言葉通りわたし達を助けてくれるのだとしたら。
 そう、期待してしまう。こんな期待、相手にも迷惑なだけなのに。

「……ふざけないで、あなた一人で何ができるって言うの? 私達と歳も変わらなさそうなあなたが、大人の男達相手に何ができるって言うのよ! 無駄に期待させないで!!」

 女の子の言葉を聞いたナナラちゃんがそう叫んだ。期待させないで……そうだ、確かに易々と期待させないで欲しい。
 でも、あの言葉は…あの女の子の言葉だけは、本当に期待してもいい気がした。確証も論拠も無いただの直感だけど、あの女の子なら本当にやってのける気がした。
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