だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「それにっ、あなたみたいな可愛い子の方が早くどこかの変態に買われちゃうのよ!? そこの子だって明日の朝には……!」

 ナナラちゃんが何かを訴え始めた。その時、家名は伏せて名乗っていたわたしの名前も呼んでいた。
 すると、しんっ……と驚くほど静かになった。あの二人は違ったけど、もしかしたらあの女の子はわたしの事を…………炎の魔女なんて言う風に呼ばれる化け物のわたしを知るのかもしれない。
 そのもしもが怖くて、わたしはまだ顔を上げられずにいた。
 その女の子と思しき足音が一気にこちらに接近してきた。何事かと思っていたら、その女の子が『失礼します』と丁寧に言いながらわたしの顔に触れ、ゆっくりとそれを上げた。
 わたしの魔眼に、女の子の綺麗な瞳と顔が映される。ああ、本当に、綺麗な目。このままずっと見ていたら、夜空に飲み込まれてしまいそうな…そんな瞳。
 驚くような表情でわたしの顔をじっと見つめる女の子がついに口にした言葉は、わたしの体を一気に緊張状態へと変えたのだ。

「……メイシア・シャンパージュ嬢、ですよね」

 ドクン、と心臓が大鐘を打った。やっぱりこの子はわたしを知っているんだ。
 化け物で、ニセモノで、魔女のわたしを。

「どうして、わたしの名前を?」

 きっとまたいつもと同じ流れなんだと覚悟を決めて、わたしは確認する。
 わたしの質問に彼女は少し目を泳がせた後、

「……私も貴族のようなもので。まさか、伯爵令嬢の貴女がこんな所にいるなんて……やっぱり来てよかった」

 わたしの顔から手を離して、ほっとしたように微笑んだ。
 ……違う。いつもとは違う、この子は、今まで会った事がないタイプの人だ。
 彼女の瞳は、わたしを知りわたしを見て化け物だと忌避する人達とは違う、優しいものだった。
 どうして、わたしの事を化け物だと言わないの? 貴族の人なら、きっとわたしの事だって知ってるはずなのに。
 お母さんを殺しかけた化け物だって、右手がニセモノの魔女だって、どうして言わないの? 今まで会った事のある外の人達は……わたしを知ってる人達は、皆そう言って後ろ指を指してきたのに。
 あなたは、あなただけは本当に違うの? 本当に、期待してもいいの? 
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