だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「……それより、スミレちゃんが生きてて……本当によかった」

 そうやって、まるで仲のいい友達のようにわたし達は歩いていた。
 ……まって、だめよ、メイシア。化け物のわたしなんかがスミレちゃんの友達なんてあまりにも烏滸がましいわ。
 そんなの夢のまた夢よ! ……でも、夢ぐらい見たっていいよね? ずっと諦めていたんだもの、友達という存在は。だから、今ぐらいは、別に……夢を見てても……。
 もんもんと考えているうちに、例の眼帯の人と合流した。この人もスミレちゃんが心配で戻って来たみたいだった…………まぁわたしの方が先だったけどね。えへへっ。
 そして目敏い眼帯の人に問い詰められた結果、スミレちゃんは足を怪我していると自白した。全然平気じゃなかったらしい。
 あの時はわたしに心配かけまいと気丈に振舞っていたのだろう。
 本当は痛いのをずっと我慢していたと言う言葉を聞いて、わたしはそれに気付けなかった悔しさのあまり奥歯をかみ締めていた。
 足を怪我しているスミレちゃんを軽々抱き上げた眼帯の人を見て、わたしは羨ましいと思ってしまった。わたしにも力があれば、スミレちゃんに楽をさせてあげられたのかもしれないと。
 ……家に帰ったら、体を鍛えよう。義手ももっと有効活用出来るように色々と調べよう。
 なんていう風に今後の方針を簡単に決めていると、眼帯の人がわたしに怪我は無いかと確認してきた。わたしが怪我は無いと伝えると、眼帯の人はスミレちゃんに言われ、ボスらしき男の襟を掴んで引きずりながら歩き出した。
 そしてしばらく歩くと、話に聞いていた噴水広場と大勢の子供達の姿が見えてきた。
 その際眼帯の人と一緒に巡回をしていた人が大きく手を振りながら駆け寄って来て、

「良かった、スミレちゃんも無事だったんスね! って、あれ……そっちの子は……」

 とこちらに視線を向けてきた。咄嗟に眼帯の人の後ろに隠れた所、なんとスミレちゃんの口から夢のような言葉が出たのだ。

「この子は……その、私のとっ……友達……の、メイシアです」
「っ!」

 ──友達。スミレちゃんが、わたしの事を友達と言ってくれた。それがあまりにも嬉しくて、夢のようで信じられなくて、眼帯の人の肩越しに見えるスミレちゃんの頭を見上げていたら……スミレちゃんがひょっこりとそこから顔を出した。
 目が合うなり、わたしは何度も頷いた。夢じゃないと実感する為に、何度も何度も頷いたのだ。
 友達という言葉を噛み締めていると、さっきの人がいつの間にかこちらまで回り込んでいて。

「へぇ、そっちの君はメイシアちゃんって言うのか。オレはエリニティ。よろしくねー、メイシアちゃ…………」

 ニコニコと明るい笑みを浮かべながら、彼は膝を曲げて目線を合わせてくる。
 馴れ馴れしくわたしの名前を呼んだかと思えば、ピタリと顔と言葉が止まる。

「……運命だ」

 恍惚とした顔で、彼はボソリと呟いた。……なんだかとても嫌な予感がする。
 商人の勘というものはよく当たるものとお父さんが言っていた。そしてわたしも一応商人の端くれ……その嫌な予感はまんまと的中してしまったのだ。

「運命だッ! 俺はついに運命に出会ったぞぉおおおおおおおッ!!」
「っ?!」

 目の前で男の人が叫びだす。その勢いと圧に押されて、わたしは反射的に後退った。怖い、何この人、大人の人怖い。
 しかし後退って出来た距離もあっという間に詰められてしまって。
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