だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「アミレス、地面が整備されてないから気をつけろ。ヒールでは転びかねない」

 ぼけーっと辺りを眺めていた私に、マクベスタがそうやって忠告してくる。確かに、改めて地面を見たら帝都の大通りのように整備された道路では無く、土が露出した地面そのままだった。
 その所々が軽度に陥没していたり隆起したりしている。更には石が埋まっている事もままあり、確かにヒールで歩くには向いていない道だった。

「……ヒールで来るんじゃ無かったわね。よし、折るか」
「折るのか?!」

 私の発言に、マクベスタがぎょっとする。
 しかしそれを無視して私はまず右足のヒールを脱ぎ、手に持つ。裸足となった右足はプラプラ浮いている。我ながら何だこの神的バランス感覚、天才か?

「ねぇマクベスタ、貴方の剣でここ斬ってちょうだい」

 ヒールと靴の境目の辺りを指さして頼んでみる。
 叩き折ってやろうかとも考えたが、私の体は意外と貧弱なので無理だと判断し、隣に立つマクベスタに頼んでみる。
 マクベスタは体を鍛えているみたいだし、剣の天才だし、きっと上手くやってくれるでしょう!

「え、いや、流石にそれは……」

 しかしマクベスタはあまり乗り気では無い様子。
 私はマクベスタのつれない態度に唇を尖らせてぼやく。

「じゃあどうやってこれ折ればいいのよー」
「そもそも折らなくていいと思うんだが」
「だってヒールだと危ないんでしょ?」
「お前が気をつけて歩けばいい話だ。もしもの時はオレが支えてやるから……もうヒールを折ろうとするな」

 まぁ確かに。と納得してしまったので、私は大人しく引き下がる事にした。
 それに、もし転びそうになってもマクベスタが助けてくれるらしい。……うーんなんだろうこの自然な王子様ムーブ。
 突然自分が王子である事を思い出したのかしら?
 それはそうと、そろそろディオさん家を目指そう。
 ハイラさんに渡した地図を見ながら、ディオさん達に渡す報酬を持って私は気をつけてガタガタした地面の上を歩いた。……まぁ、お金の入った袋はハイラさんが持ってくれてるんだけどね。
 髪の色を変えてシンプルなドレスを着ている私と、隣国の王子らしい格好のマクベスタ、大きなフードのついた外套を着たシュヴァルツ、そして佇まいが美しい侍女服のハイラさん、とかなり目立つ集団なので、歩いていると周囲の視線がかなり集まる。
 馬車を降りてから少し歩いた所で、私は見知った顔を見つけた。
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