だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「……準備が悪くてすまん。紅茶は入れられるが、茶菓子は無いんだわ」
「あっ、いえ大丈夫です。お気遣いくださりありがとうございます」

 後頭部をガシガシとしながら、ディオさんが向いの席に腰掛けた。紅茶が入るまで少し話をしようと、私はディオさんに尋ねた。

「あの後、子供達はどうなりましたか?」
「警備隊と協力して可能な限り家に返した。ただ、中には親に売られたガキもいてな……そう言う奴等はひとまず警備隊の方で預かって貰ってる。で、俺達は今どこか受け入れ可能な教会や孤児院を探してんだが…」

 上手くいかねぇもんだな、とやるせない面持ちで零すディオさん。
 それもそうだ。どこもかしこも、もうとっくに定員オーバーを迎えている。新たに子供達を受け入れる余裕が無いのだ。
 それが分かったから、私は貧民街に孤児院を作っちゃおうと決めたのだが。

「それなんですけど、私の方でも少し調べてみたんです。それで、一つ案……と言うかお勧めがありまして」
「何だ、何かいいツテでもあるのか!?」

 ディオさんにその事を話そうとした所、彼は身を乗り出して、期待に満ちた目で私を真っ直ぐ捉えていた。
 こくりと頷き、私は話す。

「実は私、ここに孤児院を建てるつもりなんです。孤児院だけじゃなくて大衆浴場とか診療所も建設予定ですね」
「「……は?」」

 これにはディオさんだけでなく、紅茶を運んで来ていたラークさんも間抜けな声を漏らした。
 そんな二人を見て、その反応も無理は無い。とばかりにマクベスタがそっと目を伏せた。なんならマクベスタもこの話を聞いた時同じような反応してた。

「ああご安心を。勿論、既に西部地区を管理している方からは許可を得ておりますし、ある程度好き勝手やってもいいと言われてるので。皆さんに拒否権はありません」

 にこりと微笑んで、私はとんでも無い事を宣告する。
 相変わらず不自然なくらい権限が強いケイリオルさんに、貧民街に施設とか色々作ってもいいですかと申請した所、何故かあっさり許可が下りてしまった。
 相変わらずあの人何でもやらせてくれるな……一作目でアミレスを殺した男とは思えない程、私に優しいぞ。
 彼等には拒否権が無いと言ったが……上からの許可が下りていて、建材等物資の手配も既に終えているこの事業を今更辞めるつもりは毛頭ない。
 例え現地の方々に反対されようと、私は自分勝手な偽善でこれを成し遂げるつもりだ。
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