だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「お気になさらず。これは投資のようなものなので!」
「そうか。お前は幼いのに賢いのだな……」

 シャルルギルさんはそのインテリな見た目からは想像も出来ない程、本当に素直で純粋らしい。私以上に腹芸に向いてなさすぎる。
 今なんて私の事をなんか凄い賞を貰った近所の子供を見守る大人、みたいな感じで見ている。いやよく分からんなこの例え……。
 とりあえず今度彼に眼鏡をプレゼントしよう。どうせならとってもお洒落なやつを。

「シャル兄確実に投資って言葉も理解してないだろうね」
「シャル兄あの見た目で凄い馬鹿だしね」

 今なんかとんでもない会話が聞こえた気がしたぞ? 何この人おバカ属性なの?? この見た目でかい?
 それを私と同い年ぐらいの子供に言われるって……容赦が無いな、身内ノリって。

「こら。メアリー、シアン、言っていい事と悪い事があるだろう」
「う、ごめんなさいラークママ」
「……ごめんとは思ってるよ、シャル兄」

 ラークが瓜二つの二人の檸檬色の頭にコツンと拳を落とす。ラークは本当にお母さん的立場なんだなと笑いを堪えつつテーブルの方に戻り、私はディオに尋ねた。

「ねぇディオ、本当に申し訳ないのだけれど……皆さんを紹介してくれない? 未だに顔と名前が一致してなくて」
「あー、それもそうだな。気が利かなかった、悪ぃ」

 ディオもまた優しくて、ぶっきらぼうではあるのだが何かと親切で心を砕いてくれる。
 おもむろに立ち上がったディオはラーク達のいる所まで行き、皆さんを一列に整列させていた。
 それに合わせて私は椅子の向きを変えて、皆さんと真正面に向き合う形で座る。

「じゃァ一人ずつ紹介してくわ。まずこいつはシャルルギル、目が悪い馬鹿だ」
「シャルルギルだ、長いしシャルで構わん。それと俺は馬鹿ではない」

 シャルルギルさ……じゃあなくてシャルさんがディオに反論する。
 しかしその反論を無視してディオは言う。

「ああそうだ、こいつ等も呼び捨てでいいからな」
「分か……ったよ」

 つい癖で分かりましたと言いそうになりかけたが、なんとか方向転換する事に成功した。
 そしてディオはすぐさま次の紹介に進む。

「で、こいつはジェジ。見ての通り存在がやかましい獣人だ」
「はい! ジェジでぇーすっ! 可愛いお姫様と仲良くなれて嬉しーです!!」
「はい不敬」
「いだっ!?」

 ジェジと呼ばれた獣耳の少年が尻尾を左右に振りながら急接近して来て、握手を求めているのか手を伸ばしてくる。しかしそれを横から現れたラークが頭にチョップを落として阻んだ。
 獣耳をしゅん……と垂れさせながらジェジが頭頂部を押さえて蹲る。その襟首を引っ張って、ラークが「うちの阿呆がごめんね」と言いながら彼を引きずって列に戻す。

「こいつは知ってるだろうが、幼女嗜好のエリニティだ。殴っていいぞ」
「オレは別に幼女嗜好では無いから! たまたま運命の相手が歳下だったってだけだから!!」

 エリニティを殴ってもいいと言われて、私は指をポキポキ鳴らす。が、皆さんへの第一印象が悪くなるのでやめた。ただこれから出来る限り彼をメイシアと会わせないようにしようとは決めた。
 嫌がるメイシアに言い寄る輩は許さんぞ。全員溺死させてやる! と、私は心の中で強く決意した。
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