だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「だからね、メアリード、ルーシアン。私からすれば貴族だから〜とかそう言う言葉は──これ以上無い屈辱でしか無いわ。私をあんな愚鈍な外道共と一緒にするな」

 嬉しさからニコニコしながら話していたものの、最後に私はその笑顔を引っ込めた。
 もちろん、メイシアやシャンパージュ伯爵のように良い貴族がいる事もちゃんと知っている。だがそれでも……野蛮王女の噂の存在が、一定数愚かな貴族がいる事を裏付けているのだ。
 さて。ディオのように凄んでみたつもりなのだが効果はあるだろうか……お、メアリードが怯えるように肩を震わせている。
 ルーシアンは、そんなメアリードの手をぎゅっと握ってこちらをきつく睨んでくる。

「……っ、じゃあ、僕達を罰するのか? 皇族を侮辱したから!」
「そんな事しないわよ」
「だから貴族は嫌なんだ──って、え……?」
「たかがこれだけの事で罰するとかどれだけ狭量なのよ」

 唖然とするルーシアンを見ながら、はぁ。と大きくため息を吐く。
 私程寛容な王女、そう滅多にいないわよ?
 開いた口が塞がらないルーシアンと代わって、今度はメアリードがこちらを睨む。

「で、でも貴族の人達はアタシ達が近くを通っただけで蹴ったり色々言ってきたりして……」
「だーかーらー、その貴族達と私を同列に語るなって言ってるの」
「でも……」

 メアリードが困ったように目を伏せた。私の話を聞いて、少しは考えを改めてくれたのかもしれない。
 よぅしもう一押しだ、と私は彼女達に向けて言う。

「貴女達の思う貴族や皇族として私を見るんじゃなくて、今貴女達の目の前にいる私自身を見なさい。確かに私は自分勝手で馬鹿な王女だけど……少なくとも、貴女達の思うような貴族達とは違う事を知って欲しい」

 ルーシアンとメアリードが、目を見開いてばっと顔を上げる。
 その瞳には私が、私だけが映っていた。
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