だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

52.俺達は仲間になった。

『…………名前はイリオーデ・ドロシー・ランディグランジュ。兄が両親を殺して爵位を簒奪し、実家を乗っ取った。私の存在は兄にとっても邪魔なものであり私も殺される事が容易に想像出来た。しかし母親が『西部地区なら潔癖症の彼も探しに行かない』と言い自身が死ぬ前に私を逃がしたため、私は今ここにいる。母親の言葉に従い西部地区に来て見知らぬ大人に囲まれた所を、彼等に助けられた』

 アランバルトは兄の名前だ。と付け加え、イリオーデは淡々と……感情の籠っていない冷たい面持ちで俺達と出会うまでの経緯を話した。
 見てくれ通り貴族だった事には驚かなかったが……その身の上話は俺達が想像していたものよりも遥かに壮絶なものだった。
 俺達は言葉を失った。本人がどこまでも他人事のように話しているのが異様で仕方なかったのだ。

『……ランディグランジュって、確か帝国の四大侯爵家の名前だったよね』

 ラークが冷や汗を流しながら、ボソリと零した。
 帝国の四大侯爵家……それは、生まれも育ちもこの街な俺でも知ってるぐらい有名な家。
 政《まつりごと》のフューラゼ家。
 剣《つるぎ》のランディグランジュ家。
 財《ざい》のララルス家。
 賢《けん》のオリベラウズ家。
 古くから政治、騎士、財政、文化とそれぞれの分野で帝国を支えて来た由緒正しき家系。
 その四大侯爵家の更に上に帝国唯一の公爵家があり、事実上公爵家と同等の権限があるとまで言われている大公家があるらしい。
 正直、貴族ってだけでも俺達からすりゃ遠い世界の話なのに……その貴族の中でも、いいや、この国の中でも雲の上の存在たる四大侯爵家の人間が、こんな所に現れるなんて。
 しかもなんだよ。さっきあいつが言ってたのってつまり、家族に殺されそうになったから逃げて来たって事だよな? 権力が欲しいから家族皆殺しにしようとしたのか、貴族怖すぎんだろ。

『お前の言う通り、ランディグランジュ家は四大侯爵家の一つに数えられる。だが私はもうあの家の人間では無い。私にはもう関係の無い話だ』
『関係ないって……何でそんな簡単に自分の家を捨てられるんだよ!!』
『捨てなければ生きて行けなかったから。私はどうしても叶えなければならない目的がある、そのためには死ぬ訳にはいかない』

 イリオーデのあまりにも冷めた発言に、ジェジが顔を赤くして掴みかかる。しかしイリオーデは眉一つ動かさず、ジェジの目を見て答えた。
 そして、イリオーデから離れたジェジが弱々しい声で『……目的って?』と聞くと、イリオーデはあっさりとそれを口にした。
< 211 / 1,399 >

この作品をシェア

pagetop