だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

53.俺はあの女と出会った。

 それなりに戦えるとは言え、そんな奴等を進んで危ない所に連れて行くつもりは勿論俺達には無かった……のだが、俺達がいくら説得してもあの三人は一向に首を縦に振らず、結局無理やり仕事について来たのだ。
 そして、俺は仕事場に着いて己の愚かさを実感した。
 そこでは大勢の子供が囚われ、奴隷として人身売買の餌食となっていたのだ。
 ──ちゃんと内容を聞いておけば、こんな光景を見る事も、知る事も無かったのに。
 それを見たジェジとユーキが昔を思い出したように肩を震わせ、その場にいた商人達に殴りかかった。
 だが勿論商人達にも腕の立つ護衛がいて、ジェジとユーキはあっさりと取り押さえられてしまった。その時、小太りの貴族が二人を蔑むように見下ろして言った。

「……ハンッ、なんだこの汚らわしい獣人とエルフは。まさかここの用心棒がこんな奴等とは……」

 それにバドールとクラリスが怒り、武器を構えようとした時。俺はあいつ等に向けて「止まれ!!」と叫んだ。
 どうして……と言わんばかりに仲間の目が見開かれ、それは俺に向けられる。
 とにかくジェジとユーキを助ける為に、俺はその場で跪き額を地面につけた。いつか街の大人から聞いた最上級の謝罪の姿勢……それを俺はクソみてぇな貴族に向けて行っていた。

「……ッ、大変申し訳ございませんでした……! この二人にはしっかり言い聞かせておきますので、どうかお許しください! どうか、雇用を無かった事にするのだけは……!!」

 恥も外聞もかなぐり捨てて、俺は懇願した。
 俺だってあいつ等を殴れるモンなら今すぐにぶん殴りたい。けど、駄目なんだ。理由がなんであれ、ここで暴れては俺達の命すら危ういし、金だって手に入らない。
 だから俺は……あらゆる感情を無理やり押さえ込んで、頭を下げた。
 小太りの貴族は俺の態度に満足したようで、俺の頭を踏みつけたかと思えば、愉悦に満ちた声で笑っていた。
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