だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「なんだお前達、美味そうなもの食べてるな」
「む、シャルか。まだ余ってるから分けてやろう」
「いいのか。じゃあ有難くいただこう」

 俺が肉串二本目に手を出した辺りでシャルルギルが帰って来た。その手には一冊の本が握られていて。

「ひゃふふひふ、ほへ、あんろほふら?」
「食べ終わってから喋ってくれ。何て言ってるかまったくわからん」

 肉串を頬張る片手間で聞いた為、俺の問は全く発音されていなかった。
 勿体ないが、俺は急いで口の中にある肉を咀嚼し飲み込んだ。本当はもっと味わって味が無くなるまで咀嚼してから食いたかった。

「ん……シャルルギル、それ何の本だ?」
「あぁ、本の事か。これは『自然の毒』と言う本でな、なんと自然にある毒の名称と主な使用用途が書かれていると言う本なんだ。勉強になると思って購入して来た」
「……お前、見ただけで何に毒があるかとか分かるんだし、別に本いらなくね?」
「それがだな、俺も使用用途がよく分からないまま適当に使ってる毒がいくらかあるんだ。だから多分これは役立つ」
「あんたそんな恐ろしい事してたの……?!」

 シャルルギルの突然の告白に俺達は驚き呆れていた。何でそれをもっと早く言ってくれないんだろうか、シャルルギルは。
 クラリスの反応も何らおかしくねぇわ。

「……あれ、オレは肉串貰えないのかな……」

 エリニティの呟きに談笑していた俺達は気づかなかった。そうやって贅沢をしながら過ごす穏やかな昼はとても有意義なものだった。
 普通の人達はいつもこんな生活をしてんだろうな、貴族ともなるともっと凄かったんだろうな。
 そうやって貧民街の人間以外の環境に思い馳せてみる。そこで俺は思い出したのだ、あの変わった貴族のガキの事を。
 ……あいつ、本当に来るつもりなんだろうか。あの行動力の塊みたいなガキならきっと来ちまうんだろうなぁ……とため息をつく。
 この辺りは貧民街の中でも比較的に治安がいい方ではあるが、帝都の大通りと比べるとやはり治安が悪い。貴族が来ると決まってそれを睨んだりするし、相手が護衛とかをつけていなかったら徒党を組んで襲うような馬鹿もそれなりにいる。
 身一つであんな所に乗り込むようなガキなら、余裕で一人で来そうで怖い。もし貧民街であいつが襲われでもしたら、俺は申し訳なさのあまりしばらく寝れなくなりそうだ。
 と、来て欲しいが来て欲しくないなんて矛盾した事を考えていたその翌日。そろそろ情報収集に行くかと家を出た時。
 噂をすればなんとやら……あいつが来たのだ。
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