だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「──自分の為ですよ。最初から、私はただ……自分の目的の為に動いていましたから。私はどうしようもなく自分勝手な偽善者です。皆さんが思うような良く出来た人間では無いんですよ」
そのガキは何の躊躇いもなく『自分の為』と言った。更には己を偽善者と言った。
人に嫌われるだとか考えていない。その発言が周りにどう捉えられるかも考えていないようだった。
そしてスミレは……穏やかな微笑みのまま、平然と語った。
「……まぁ、よくある話なんですけどね。私、そのうち実の父か兄に殺されるんですよ」
それには俺もラークも、何故かあいつの連れの美女と金髪のガキでさえも驚いていた。
俺達が家族仲が悪いのかと呟いていると、スミレは俺達の疑問に答えるように続けた。
「父と兄が私を酷く疎み嫌ってるんです。今はまだ父に道具として使い道がある、すなわち不要とされていないので私はこうして生きていますが、それもいつまで続くか分かりません。父に不要とされたら簡単に処理されてしまう使い捨ての道具、それが私だからです」
言葉を失った。どうして、こんな事を淡々と語れるのだろうか。
たった十二歳の貴族令嬢が、何をどうしてここまで冷静に己の境遇を把握してしまっているのか。
普通なら泣いたり親に縋ったりしてもおかしくないのに、どうしてこいつはただ粛々とそれを受け入れているのか。
それが俺には分からなかった。
「ですが私は死にたくありません。親へと惨めに愛を求め続けて結局殺されるような人生は嫌なんです。私は、もう親からの愛も兄からの愛も誰からの愛も要らない……ただ私が幸せになれればそれで十分なんです。自分が無事生き延びて幸せになる為に、私は今まで一人で色々やってきたのです」
スミレは真っ直ぐと俺の目を見つめて話した。
一体どのような環境で生きていればその歳でその結論に到れるのか。こいつの身内ってのはそこまで最悪なのかと俺は強い怒りを覚えた。
だが同時に、俺は安堵していた。そんなクソみてぇな環境で生きて来てここまで曲がらず真っ直ぐにこのガキが成長した奇跡に、俺はどうしてか安心していたのだ。
「ですのでディオさんの問への答えは──自分の為、なのです。これで分かったでしょう、私はいい人などでは決して無いのです。だって私は極悪非道冷酷無比な血筋の人間……どれだけいい人ぶった所で、結局は偽善者が精一杯ですから」
子供らしさの欠片も無い気を遣うような微笑みで、スミレは己を強く卑下した。
口だけで何もしない自称善者が多いこの世界で、このガキだけは……最悪な家庭に産まれたにも関わらず、行動を起こすだけの勇気のある偽善者となった。
それは紛れもない奇跡であり褒められるべき事なのに……スミレはその賞賛を全て否定するように、良い人では無い。いい人ぶってるだけの偽善者だ。と繰り返していた。
「……ガキにそこまで言わせるとか、どうなってんだよ……お前の家は……っ」
気づけば俺は握り拳を震わせてそう呟いていた。
どの家にもそれぞれの問題があるとは理解している。部外者が口を突っ込むべきではないとも。
だがこいつのそれにだけはどうしてかそう言わざるを得なかった。それだけ、俺はこいつに心を許してしまっているのだろう。
その時だった。突然、スミレの髪の色が変化した。
申し訳なさそうに眉尻を下げるスミレを見ていて、俺達は恐ろしい事に気づいてしまった。
桃色だった髪は、あの夜の月のように輝く銀髪になった。
その銀髪も相まって、あいつの……複数の色が混在するように見える寒色の瞳がまるで夜空のようだった。
美しい銀髪に、寒色の瞳。その特徴を持つ存在は……この国において、たった一つの血筋に限られる──。
そのガキは何の躊躇いもなく『自分の為』と言った。更には己を偽善者と言った。
人に嫌われるだとか考えていない。その発言が周りにどう捉えられるかも考えていないようだった。
そしてスミレは……穏やかな微笑みのまま、平然と語った。
「……まぁ、よくある話なんですけどね。私、そのうち実の父か兄に殺されるんですよ」
それには俺もラークも、何故かあいつの連れの美女と金髪のガキでさえも驚いていた。
俺達が家族仲が悪いのかと呟いていると、スミレは俺達の疑問に答えるように続けた。
「父と兄が私を酷く疎み嫌ってるんです。今はまだ父に道具として使い道がある、すなわち不要とされていないので私はこうして生きていますが、それもいつまで続くか分かりません。父に不要とされたら簡単に処理されてしまう使い捨ての道具、それが私だからです」
言葉を失った。どうして、こんな事を淡々と語れるのだろうか。
たった十二歳の貴族令嬢が、何をどうしてここまで冷静に己の境遇を把握してしまっているのか。
普通なら泣いたり親に縋ったりしてもおかしくないのに、どうしてこいつはただ粛々とそれを受け入れているのか。
それが俺には分からなかった。
「ですが私は死にたくありません。親へと惨めに愛を求め続けて結局殺されるような人生は嫌なんです。私は、もう親からの愛も兄からの愛も誰からの愛も要らない……ただ私が幸せになれればそれで十分なんです。自分が無事生き延びて幸せになる為に、私は今まで一人で色々やってきたのです」
スミレは真っ直ぐと俺の目を見つめて話した。
一体どのような環境で生きていればその歳でその結論に到れるのか。こいつの身内ってのはそこまで最悪なのかと俺は強い怒りを覚えた。
だが同時に、俺は安堵していた。そんなクソみてぇな環境で生きて来てここまで曲がらず真っ直ぐにこのガキが成長した奇跡に、俺はどうしてか安心していたのだ。
「ですのでディオさんの問への答えは──自分の為、なのです。これで分かったでしょう、私はいい人などでは決して無いのです。だって私は極悪非道冷酷無比な血筋の人間……どれだけいい人ぶった所で、結局は偽善者が精一杯ですから」
子供らしさの欠片も無い気を遣うような微笑みで、スミレは己を強く卑下した。
口だけで何もしない自称善者が多いこの世界で、このガキだけは……最悪な家庭に産まれたにも関わらず、行動を起こすだけの勇気のある偽善者となった。
それは紛れもない奇跡であり褒められるべき事なのに……スミレはその賞賛を全て否定するように、良い人では無い。いい人ぶってるだけの偽善者だ。と繰り返していた。
「……ガキにそこまで言わせるとか、どうなってんだよ……お前の家は……っ」
気づけば俺は握り拳を震わせてそう呟いていた。
どの家にもそれぞれの問題があるとは理解している。部外者が口を突っ込むべきではないとも。
だがこいつのそれにだけはどうしてかそう言わざるを得なかった。それだけ、俺はこいつに心を許してしまっているのだろう。
その時だった。突然、スミレの髪の色が変化した。
申し訳なさそうに眉尻を下げるスミレを見ていて、俺達は恐ろしい事に気づいてしまった。
桃色だった髪は、あの夜の月のように輝く銀髪になった。
その銀髪も相まって、あいつの……複数の色が混在するように見える寒色の瞳がまるで夜空のようだった。
美しい銀髪に、寒色の瞳。その特徴を持つ存在は……この国において、たった一つの血筋に限られる──。