だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
第三節・王国編

56.眠れる炎の美女

 あれから数日。ディオ達を私兵として雇える事になり、かつ貧民街大改造計画も順調に進み、とても気分が良い昼下がり。
 今日の特訓を終え、せっかくだから進捗の確認がてら伯爵邸に遊びに行こうと思い、小走りで皇宮の廊下を進んでいた時だった。

「……お久しぶりです、兄様。お元気そうで何よりです」

 とても会いたくない人と出くわしてしまった。
 全然会わないから存在を忘れがちだけど、本当たまーに会っているのだ。まぁ、会いたくないんだけども。
 何故あまり会わずに済んでいるのかと言うと。
 皇族のお披露目の場と暗黙の了解のある六歳時の建国祭をアミレスは病気で欠席したので、その時点で表舞台に立つ資格は剥奪されたようなものなのだ。
 その為私に皇族としての責務──公務は課されなかったし、勿論社交界に出る必要も無い。皇帝に外に出るなって命令されてたしね。
 そしてこれまた皇帝の命令で、皇帝とフリードルの食事の場に私は同席してはならない事になっている。
 それらの様々な理由が重なった結果……私はこの数年間、両手で数えられる程しかフリードルと顔を合わせていない。何なら、皇帝とはアミレスになってから一度も会ってない。まぁ……向こうも私の顔を見たくないんだから当然だが。
 そう言う訳で、会うのは本当に久しぶりなのである。最後にフリードルと話したのは七ヶ月ぐらい前だったかしら。
 兄妹の七ヶ月ぶりの再会だと言うのに、私達はかつてない程に険悪な空気を醸し出していた。
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