だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「姫さん、どうかしました?」
「これから出かけようと思ってて……私一人じゃ外出は出来ない事になってるから、誰かに着いてきて貰いたくて。自主練中に本当に申し訳ないんだけど……」
「そーゆー事なら勿論大丈夫っすよ」
「あぁ、オレも問題ない」

 もし良かったら一緒に来てくれませんかと二人に尋ねると、二人共快く了承してくれた。
 程なくして……マクベスタの着替えと私の準備が終わり次第、伯爵邸目指して城から出る事に。
 今回はハイラさんがいない為馬車も無く、シルフがいない為魔法で髪の色を変えてもらう事も出来ない。
 なので私は仕方なく男装する事にしたのだ。天然もののウェーブのかかった銀色の長髪をなんとか纏め、ピンで固定する。
 その上からもしもの時用にハイラさんに用意して貰っていたショートヘアの金髪のカツラを被り、髪を纏めた事により不自然に盛り上がっている部分を隠す為、帽子を被る。
 せっかくなので徹底的に男装しようと思い、私は胸にサラシもどきを巻いて十二歳にしては発達していた胸部を潰す。その上からシャツ着てズボンを履き、特訓で使っているブーツと体型を隠す為のローブを羽織って……完成だ!
 フリードルに行先を告げたものの、これはある意味秘密の外出なので、この準備を誰かに手伝わせる訳にもいかなかった。なので全て一人でやったのだが……うーむ、我ながらやはり天才。
 美少女が男装すると美少年になるってマジだったのね、ヅカ的な美しさと少年らしさを感じるわ。
 アミレスって本当に類稀なる美少女だから何しても大体似合うの本当にすごい。お陰様で色々試したくなっちゃう。
 もう少し鏡で己の美少年っぷりにニヤニヤしていたかったのだが、エンヴィーさん達を待たせる事になるので、私は最後に念の為にと剣を佩いて部屋をこっそり出たのだ。
 ……まぁ、こんなにコソコソしなくても元々私の宮には侍女も召使も全くいないんだけどね。ハイラさんがいらないって言ったかららしいけど。
 集合場所の特訓場に小走りで向かうと、やはり既にエンヴィーさんとマクベスタがそこで待っていて。
 私は待たせてごめん、と言いながら駆け寄った。二人は私の姿を見て目を丸くしていた。

「……いや、お前、なんだその格好は」
「……なんかその……斬新っすねぇ、姫さん」

 一国の王女ともあろう者がここまで変装してコソコソと外出しないといけないのが悪いのよ。と心の中で文句を垂れる。
 私の男装姿に戸惑いを隠しきれないマクベスタに向けて、私は胸を張って言う。

「似合ってるでしょ? この姿のわた……ごほんっ。()はアミレスじゃあなくてスミレだから、よろしく」

 せっかくなので声や口調も男っぽくしてみた。自分では分からないのだが、比較的眉もキリッとしているつもりではある。
 恐らく今の私はさぞかし美少年な事だろう……!

「くふ……はっははは! 本っ当に面白いなァ、姫さんは!」

 唖然とするマクベスタの横で、エンヴィーさんが非常に楽しげに笑い声を上げる。
 そんなこんなで城を出る事になったのだが、私達の事は衛兵にはマクベスタの従者と言う風に話した。一応、マクベスタも帝国に来る際に一人だけ従者を連れて来ていたのだが、その従者は母が危篤で一時帰国中だとかで……今はマクベスタ一人らしい。
 そもそも王子なのに生活能力の塊なのが悪い。一人でも余裕で生きていけるのがおかしい。
 私なんてハイラさん無しじゃ生きていけるかどうか不安なのに。使用人のいる生活に慣れてしまったのだ。
 そして三人で街に出てシャンパージュ伯爵邸に向かって歩く。
 道はほとんど一本道なので迷う事なくサクサク進めると思っていたのだが、道中でエンヴィーさんが興味津々とばかりに色んなものに足を取られてしまったのだ。
 異国の装束に身を包む人智を超えた美形のエンヴィーさんが、幼い少年のように目を輝かせて色んなものに目を奪われるその姿は……周りの人々の目を惹きつけてやまないものだった。
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