だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

8.僕には妹がいた。

 僕はフォーロイト帝国の皇太子、第一王子フリードル・ヘル・フォーロイト。
 きちんと立太子式を終えたのはまだ一年前の話だが、国内外問わず僕が皇太子と言う事は知れ渡っているらしい。
 ……特にこれ以上話す事は無い。自己紹介は苦手なんだ、名前と肩書きしか僕には紹介するものが無いから。
 僕は物心ついた時から父上より次期皇帝としての教育を受けていた。僕の考え方や雰囲気は歳を重ねる毎に父上に似てきていると周りの者達は言うが、それも興味は無かった。
 僕はただ己に与えられた使命を果たすだけだ。父上の言いつけ通りいずれ父上の後を継ぎ皇帝となり、この国を発展させる。ただ、それだけが僕の生きる理由。
 家族とか、愛とか、僕は知らないし……必要だとも思わない。
 父上は無情の皇帝だし、母上の事は僕もよく覚えていない。何せ母上は僕が二歳の時に死んだんだ、覚えている筈もない。
 妹は、父上が忌み嫌っているから僕もそうしている。この国では父上が絶対だ。父上があれを疎むのなら、僕も疎ましく思うべきだと判断した。
 僕自身、あれには大した興味を無ければ情も無い。
 だから別にあれがどうなろうが、どうしようがどうでもよかった。ただ、父上や僕の言いつけを遵守しているのならば。

 建国祭の日。熱などと腑抜けた理由で休んだ妹を心底軽蔑していた僕は、役目が終わり次第早々に皇宮に戻った。自室に戻り、勉強の続きをしたかったからだ。
 その道中で僕は信じ難い光景を目の当たりにした。……まさか、熱程度で由緒正しき建国祭を欠席した妹が、絶対に入ってはいけない父上の庭園の前にいるだなんて。
 注意をしようと近寄ると、妹と目が合った。いつもなら僕や父上に会えただけで馬鹿みたいに騒ぐ妹が、今は何故か……ただ黙ってこちらを見ていた。
 その手には本が抱えられていて、妹の現状の不可解さをより一層深めていた。
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