だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
♢♢
バタリ、と大きく音を立てて閉じた扉を呆然と見つめる半裸の男達。
鍛錬を終えて汗を拭き着替えていた時に、突然家を飛び出て行ったイリオーデが上機嫌に帰って来たかと思えば……その後ろにはこの国で最も高貴で麗しき少女がいた。
可愛らしい顔でポカンと開く小さな口、とても丁寧に手入れが施されている銀色の髪、小綺麗なローブの下には凄腕の職人による淡い水色の可愛らしいドレス。
何から何までがこの街に不似合いな帝国の王女は、見慣れている筈もない男の裸体を見たにも関わらず、一切の反応を見せずただ唖然としていた。
これが普通の女性……貴婦人や貴族令嬢であったなら、恐らく黄色い悲鳴を上げていた事だろう。
しかし、アミレス・ヘル・フォーロイトは普通ではない。
どうしてか全く反応を見せず、寧ろ反応しなかった事を不安がった彼女の姿を思い出して……男達はえも言われぬ感情に心をかき混ぜられていた。
「……そんな見るも哀れなモンなのか、俺達の体は……?」
「彼女、無反応だったしね……ちょっと自信無くすなぁ……」
「帝国騎士団が常に裸で鍛錬しているとか?」
「ってか今日もメイシアちゃんはいないのかよぉおおおお!」
男としての自信を少々喪失しつつ、ディオリストラスとラークとシャルルギルは軽く会話を交えながら服を着た。
その近くではエリニティが真に迫る面持ちで慟哭していた。床に手を突いて、何度も握り拳で床を叩いている。
「早くしろ、いつまで王女殿下をお待たせするつもりだ」
そんなエリニティに向けて、イリオーデは冷やかな視線を送った。
「ッはい!!」
エリニティは猫のように目を丸くして立ち上がり、敬礼してから急いで気替えを始めた。
(ひぇ〜〜っ!? あんなイリ兄今まで見た事無いって! スミレちゃんが関わるとあんなに豹変しちゃうわけ?!)
自分の知るイリオーデと言う人物とは百八十度異なる表情や言動をする眼前のイリオーデに、エリニティは体を震え上がらせた。
「なぁ、イリオーデ。なんで殿下が突然来たか知ってっか? いやまぁ突然来んのは毎回の事なんだが……今回は時間がおかしいだろ」
エリニティの気替えを待つ間、既に気替えを終えたディオリストラスがイリオーデに疑問を投げかける。
「もう夜になるってのに……しかも今回はあの妙に強そうな侍女もいないみてぇじゃねぇか、どういう事なんだ?」
「私も知らない。だが何やら……シャルに用があるらしい」
「む、俺か?」
ディオリストラスの問にイリオーデが答えると、突然自分の名前が上がったシャルルギルが驚いたように首を傾げた。
こくりと頷いて少し不機嫌そうな面持ちでイリオーデは続けた。
「あぁ。王女殿下がいらっしゃった気配を察知して外に出たらすぐ近くに見慣れぬ馬車と王女殿下がおられた。王女殿下がこのような所までまたもや出向いて下さるとは……と感動していたのも束の間、シャルに用向きがあると言われ、家に入ってもいいかと問われたので案内した」
「俺達がまだ着替えてんの知ってたよな!?」
(察知して外出たって怖……イリ兄こっわぁ……)
ディオリストラスが鋭いツッコミを入れた傍で、エリニティは変態的能力を発揮したイリオーデに対して更に恐怖していた。
「王女殿下に問われたら答える。命じられたら従う。私は、王女殿下のお言葉に異を唱えない」
「さも当然かのように言うなよ……その謎の忠誠心の所為で俺達は殿下に見苦しいモンを見せちまったんだが」
「許さん」
「だからお前の所為でな?!」
まともに言葉が通じぬイリオーデと、そんなイリオーデ相手に正論を放つディオリストラス。
二人の平行線な話し合いは程なくして終わりを迎えた。
「あのー、気替え終わったよイリ兄……」
無事に服を着たエリニティがそっと手を挙げてそう言うと、イリオーデは会話を切り上げて「そうか」とだけ短く返し、即座に玄関へと足を向けた。
そして扉を開け、アミレス達を呼んだのである。
(…………イリオーデ、彼女がここに来た理由がシャルへの用事って聞いて拗ねてるのかな……)
──アミレスの話をする時のイリオーデの表情を見ていて、ラークはそう思ったとか思わなかったとか。
バタリ、と大きく音を立てて閉じた扉を呆然と見つめる半裸の男達。
鍛錬を終えて汗を拭き着替えていた時に、突然家を飛び出て行ったイリオーデが上機嫌に帰って来たかと思えば……その後ろにはこの国で最も高貴で麗しき少女がいた。
可愛らしい顔でポカンと開く小さな口、とても丁寧に手入れが施されている銀色の髪、小綺麗なローブの下には凄腕の職人による淡い水色の可愛らしいドレス。
何から何までがこの街に不似合いな帝国の王女は、見慣れている筈もない男の裸体を見たにも関わらず、一切の反応を見せずただ唖然としていた。
これが普通の女性……貴婦人や貴族令嬢であったなら、恐らく黄色い悲鳴を上げていた事だろう。
しかし、アミレス・ヘル・フォーロイトは普通ではない。
どうしてか全く反応を見せず、寧ろ反応しなかった事を不安がった彼女の姿を思い出して……男達はえも言われぬ感情に心をかき混ぜられていた。
「……そんな見るも哀れなモンなのか、俺達の体は……?」
「彼女、無反応だったしね……ちょっと自信無くすなぁ……」
「帝国騎士団が常に裸で鍛錬しているとか?」
「ってか今日もメイシアちゃんはいないのかよぉおおおお!」
男としての自信を少々喪失しつつ、ディオリストラスとラークとシャルルギルは軽く会話を交えながら服を着た。
その近くではエリニティが真に迫る面持ちで慟哭していた。床に手を突いて、何度も握り拳で床を叩いている。
「早くしろ、いつまで王女殿下をお待たせするつもりだ」
そんなエリニティに向けて、イリオーデは冷やかな視線を送った。
「ッはい!!」
エリニティは猫のように目を丸くして立ち上がり、敬礼してから急いで気替えを始めた。
(ひぇ〜〜っ!? あんなイリ兄今まで見た事無いって! スミレちゃんが関わるとあんなに豹変しちゃうわけ?!)
自分の知るイリオーデと言う人物とは百八十度異なる表情や言動をする眼前のイリオーデに、エリニティは体を震え上がらせた。
「なぁ、イリオーデ。なんで殿下が突然来たか知ってっか? いやまぁ突然来んのは毎回の事なんだが……今回は時間がおかしいだろ」
エリニティの気替えを待つ間、既に気替えを終えたディオリストラスがイリオーデに疑問を投げかける。
「もう夜になるってのに……しかも今回はあの妙に強そうな侍女もいないみてぇじゃねぇか、どういう事なんだ?」
「私も知らない。だが何やら……シャルに用があるらしい」
「む、俺か?」
ディオリストラスの問にイリオーデが答えると、突然自分の名前が上がったシャルルギルが驚いたように首を傾げた。
こくりと頷いて少し不機嫌そうな面持ちでイリオーデは続けた。
「あぁ。王女殿下がいらっしゃった気配を察知して外に出たらすぐ近くに見慣れぬ馬車と王女殿下がおられた。王女殿下がこのような所までまたもや出向いて下さるとは……と感動していたのも束の間、シャルに用向きがあると言われ、家に入ってもいいかと問われたので案内した」
「俺達がまだ着替えてんの知ってたよな!?」
(察知して外出たって怖……イリ兄こっわぁ……)
ディオリストラスが鋭いツッコミを入れた傍で、エリニティは変態的能力を発揮したイリオーデに対して更に恐怖していた。
「王女殿下に問われたら答える。命じられたら従う。私は、王女殿下のお言葉に異を唱えない」
「さも当然かのように言うなよ……その謎の忠誠心の所為で俺達は殿下に見苦しいモンを見せちまったんだが」
「許さん」
「だからお前の所為でな?!」
まともに言葉が通じぬイリオーデと、そんなイリオーデ相手に正論を放つディオリストラス。
二人の平行線な話し合いは程なくして終わりを迎えた。
「あのー、気替え終わったよイリ兄……」
無事に服を着たエリニティがそっと手を挙げてそう言うと、イリオーデは会話を切り上げて「そうか」とだけ短く返し、即座に玄関へと足を向けた。
そして扉を開け、アミレス達を呼んだのである。
(…………イリオーデ、彼女がここに来た理由がシャルへの用事って聞いて拗ねてるのかな……)
──アミレスの話をする時のイリオーデの表情を見ていて、ラークはそう思ったとか思わなかったとか。