だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「安心して、ラーク。例えこの先何があろうと……貴方達の事は私が守る。私の全てを賭けて、守り抜いてみせるから」

 私に直接伝染病をどうにかする術などないのに、私はそうやって虚勢を張った。だがその決意だけは確かにある。
 本当に口から出まかせなのだが、私に出来る限りの事はやるつもりだ。
 だから安心してくださいラークお母さん……シャルの事は私が責任もって守りますので! どうか預けていただけないでしょうか……?

「……本当に、シャルの事を守ってくれるのかい?」

 不安げなラークの瞳が私に向けられる。私はそれに頷き、「勿論」と答えた。
 すると緊張状態にあった彼の顔が少し綻んだ。

「そう。なら、これからもどうか……シャルの事をよろしくお願いします」
「えぇ、こちらこそよろしくね」

 こうしてシャルの協力を得られた私は、ついでとばかりにどなたか馬車を運転してくれませんかねと打診した。
 それにはイリオーデが食い気味に挙手してくれたので、馬車の運転手はあっさりと見つかったのだ。
 私達と一緒に来てくれる人はシャルとイリオーデとディオの三人。エリニティとラークは留守番らしい。
 急で申し訳ないのだが、もうこの後すぐ行きますと告げると三人は慌てて準備を始めた。彼等が準備をする間、私達は先に馬車まで戻っておく事にした。

「アミレス、この後は例の司祭の元に行ってからオセロマイトに向かうんだったな?」
「そのつもりよ。シャンパー商会には注文したものを国境近くの村まで運んで貰う事になってるから、その時が来れば私に連絡が来る筈。それまでは、私達はオセロマイトで右も左も分からないまま救命活動を行う事になるわね」
「……本当にオレ達がオセロマイトを救えるのだろうか」
「救えるのか、じゃないわ。救うのよ……私達が」

 馬車のすぐ側で、私達は話していた。そりゃあ不安が無い訳ではない。寧ろ不安だらけだ。
 しかし生憎と私にはオセロマイト王国を救う以外の選択肢が無い。
 ……残念な事に、その手段も無いのだけれど。本当にどうしようこれ、ここまで言い切って何にも出来ませんでしたじゃ済まされないわよこれ。
 本当にどうしたものかと頭を悩ませる。なんかファンブックとかにそれらしい情報無かったかな〜! と必死に記憶の引き出しを開けては閉めて開けては閉めて。

 しかしなんの成果も得られず、ただ、欲しい情報が得られず私の精神が追い詰められただけであった。
 なんて前衛的自傷。自分で自分の首を絞めたわね。と、一人で脳内茶番劇を繰り広げていると。

「おねぇちゃん」

 私の服をくいっと引っ張りながら、シュヴァルツが私を呼ぶ。
 どうしたの? と優しく笑いかけると、シュヴァルツは爽やかな笑顔で私達を見上げてこう言った。
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