だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「馬じゃ時間がかかるから、別の生き物にしなーい? ぼく、いいのを知ってるよ!」
「えっ」
驚きから思わず言葉が漏れてしまったが……確かに馬車では日数がかかり過ぎる。だがしかし……この世界では馬車以外の乗り物はほとんどと言っていいほどに無い。東の国には騎竜隊なる飛竜にのる兵士もいるそうなのだが、西側諸国にはそんなものはいない。
だからこそ、我々の交通手段と言えば馬車一択なのだが……シュヴァルツの『いいのを知ってる』と言う発言は一体どういう事なのだろうか。
「とりあえず呼ぶねぇ」
ぽかんとする私達の事は気にせず、シュヴァルツは楽しそうに笑いながら巧みに指笛を鳴らした。
それは気持ちのいい音を夜に染まる街に響かせた後、程なくして、空中より真っ白な二頭の虎が舞い降りた。獰猛な面持ちの虎の体毛ではバチッ、バチッと電気が激しく弾ける。
シュヴァルツは舞い降りたその二頭の虎と小声で何かを話すようにして、少ししたら、くるりとこちらを振り向いた。
「はぁい、こちらぼくの地元では定番のペットの雷虎《プラズマタイガー》でーす! 足がすっごく早いから、これなら多分三日ぐらいで着くと思うよぉ」
シュヴァルツはドヤァ……と大変可愛らしい表情をしているのだが、それ以上に色々とツッコミ所が多くて、私はとにかくその雷虎《プラズマタイガー》とやらをじっと見つめていた。
見た目としてはホワイトタイガーに近いものの、その頭部には謎の一対の角が生えておりファンタジー感を醸し出している。
そしてやはり一番のファンタジーは……雷を纏ってる事だよなぁ。何なんだろうこの強そうな虎。
「ただ気性が荒くて御するのが面倒……じゃなくて大変だからぁ、多分今回限りになっちゃうかな〜。帰りは普通の馬になっちゃうかもぉ」
ねー? と満面の笑みで虎を一瞥するシュヴァルツ。虎はまるでシュヴァルツの言葉を完全に理解しているかのように、何度も大きな頭部を縦に振っていた。
「……シュヴァルツの地元ではあのような見た事も聞いた事も無い獣をペットとするのだな……何と強い国なのか」
「多分、修羅の国とか出身なんじゃないかしら……知らないけど……」
虎から視線を外す事無く、私は頭に宇宙を展開させながら適当に話していた。
私は近づくだけで感電する恐れがあるそう(水の魔力を持つ人間は他の魔力に比べ雷に近づくだけで簡単に感電するとか。あれ、じゃあマクベスタに近づくのは……??)なので、虎に近づくのは雷の魔力を持つマクベスタだけ。
シュヴァルツとマクベスタが二人がかりで馬から虎へ馬具を移そうとしてはサイズが全く合わないと悪戦苦闘する間、私はぼーっとそれを眺めていた。単純にやる事が無かったのと……ふと、とある事を思い出したのだ。
確か前にシルフが言っていた──シュヴァルツには、全くと言っていい程魔力が無いと。僅かにはあるようなのだが、それは本当に微量で……あんな瞬間転移が使える程では無いとシルフからは聞いていたんだけど……。
シルフがそんな事でわざわざ嘘をつく理由が無いし、シュヴァルツに魔力が無いのは事実なのだと思う。
だがしかし。私達の目の前でシュヴァルツが空属性の瞬間転移を使用した事もまた事実。何がどういう事なのか分からなくなってきたわ……。
う〜ん……と小さく唸りながら考えていると、ふと背後に何者かの気配を察知した。
「えっ」
驚きから思わず言葉が漏れてしまったが……確かに馬車では日数がかかり過ぎる。だがしかし……この世界では馬車以外の乗り物はほとんどと言っていいほどに無い。東の国には騎竜隊なる飛竜にのる兵士もいるそうなのだが、西側諸国にはそんなものはいない。
だからこそ、我々の交通手段と言えば馬車一択なのだが……シュヴァルツの『いいのを知ってる』と言う発言は一体どういう事なのだろうか。
「とりあえず呼ぶねぇ」
ぽかんとする私達の事は気にせず、シュヴァルツは楽しそうに笑いながら巧みに指笛を鳴らした。
それは気持ちのいい音を夜に染まる街に響かせた後、程なくして、空中より真っ白な二頭の虎が舞い降りた。獰猛な面持ちの虎の体毛ではバチッ、バチッと電気が激しく弾ける。
シュヴァルツは舞い降りたその二頭の虎と小声で何かを話すようにして、少ししたら、くるりとこちらを振り向いた。
「はぁい、こちらぼくの地元では定番のペットの雷虎《プラズマタイガー》でーす! 足がすっごく早いから、これなら多分三日ぐらいで着くと思うよぉ」
シュヴァルツはドヤァ……と大変可愛らしい表情をしているのだが、それ以上に色々とツッコミ所が多くて、私はとにかくその雷虎《プラズマタイガー》とやらをじっと見つめていた。
見た目としてはホワイトタイガーに近いものの、その頭部には謎の一対の角が生えておりファンタジー感を醸し出している。
そしてやはり一番のファンタジーは……雷を纏ってる事だよなぁ。何なんだろうこの強そうな虎。
「ただ気性が荒くて御するのが面倒……じゃなくて大変だからぁ、多分今回限りになっちゃうかな〜。帰りは普通の馬になっちゃうかもぉ」
ねー? と満面の笑みで虎を一瞥するシュヴァルツ。虎はまるでシュヴァルツの言葉を完全に理解しているかのように、何度も大きな頭部を縦に振っていた。
「……シュヴァルツの地元ではあのような見た事も聞いた事も無い獣をペットとするのだな……何と強い国なのか」
「多分、修羅の国とか出身なんじゃないかしら……知らないけど……」
虎から視線を外す事無く、私は頭に宇宙を展開させながら適当に話していた。
私は近づくだけで感電する恐れがあるそう(水の魔力を持つ人間は他の魔力に比べ雷に近づくだけで簡単に感電するとか。あれ、じゃあマクベスタに近づくのは……??)なので、虎に近づくのは雷の魔力を持つマクベスタだけ。
シュヴァルツとマクベスタが二人がかりで馬から虎へ馬具を移そうとしてはサイズが全く合わないと悪戦苦闘する間、私はぼーっとそれを眺めていた。単純にやる事が無かったのと……ふと、とある事を思い出したのだ。
確か前にシルフが言っていた──シュヴァルツには、全くと言っていい程魔力が無いと。僅かにはあるようなのだが、それは本当に微量で……あんな瞬間転移が使える程では無いとシルフからは聞いていたんだけど……。
シルフがそんな事でわざわざ嘘をつく理由が無いし、シュヴァルツに魔力が無いのは事実なのだと思う。
だがしかし。私達の目の前でシュヴァルツが空属性の瞬間転移を使用した事もまた事実。何がどういう事なのか分からなくなってきたわ……。
う〜ん……と小さく唸りながら考えていると、ふと背後に何者かの気配を察知した。