だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「どうして男しかいないのかな!? 君、本当に無防備過ぎない? 何かあってからでは遅いという事を理解していないのか?」

 黒い笑顔で彼は捲し立てる。
 突然の事に頭の理解が追いつかない。ジトーっとリードさんに見つめられる事数分。かなりのタイムラグを経てようやく私は彼の言葉の意味を理解した。

「大丈夫です、彼等は私の私兵なので。雇用主の私に仇なす事だけはしないでしょう!」

 勿論貴方にもです。なので安心してくださいよリードさん! と自慢げに言うと、リードさんは憐れなものを見るような目で、それはもう大きなため息を吐いた。

「…………仕方ない、もう諦めよう」
「……何が仕方ないの……!?」

 そして彼は全てを諦めたような瞳となり、慈しむような面持ちで、ローブ越しに私の頭を撫でた。
 なんかよくわかんないけどとても馬鹿にされてる気がするわ。
 何も聞けなかった先程とは違い、今度はちゃんと聞けたものの……結局リードさんにはぐらかされてしまい、理由は分からずじまい。どうしてよ。

「それじゃあ戻ろうか、王女殿下」

 更に彼は逃げるように会話を切り上げ馬車へと戻って行った。慌ててその後を追いかけ、すこしモヤモヤした気持ちのまま、私は馬車に乗り込んだ。
 御者席にはマクベスタとディオ、幌とその幕が着いた荷台には私とシュヴァルツとイリオーデとシャルとリードさん。
 大人が三人いるからか、中々に手狭になったわね。しかし私とシュヴァルツが小さいからかあまり問題は無かった。

 やがて馬車が動き出す。目的地はオセロマイト王国……未曾有の伝染病『草死病《そうしびょう》』の原因究明と感染拡大の阻止、そして既に罹ってしまった人達の救助。
 何があってもあの国を……マクベスタの帰る場所を守ってみせる。
 幕の隙間から見える月を見上げ、私は強く決意する。

 ──こうして。私がアミレスになってから六年……ついに帝都の外に出たのだ。
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