だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「…………さて。制限時間は一時間って所か……それ以上この姿で居れば、この街はどうなっちまうのかねェ。つぅか……それ以前に制約で精霊界に強制送還されちまうか」

 それは嫌だなァ、とエンヴィーは不敵に笑う。
 そして彼は結界を素通りして神殿都市へと侵入した。
 この都市を護るように遥か過去より展開され続けている結界──その名も神聖時空結界。それは対人・対魔に特化した時間と空間にまでも作用する人類の編み出した最上級の結界。
 ありとあらゆる招かれざるものを排斥し、侵入を許さない最強の護り。国教会の聖地がこの世で最も安全な場所と謳われる由縁だ。
 結界に触れた招かれざるものはいつかのどこかへと飛ばされ、酷い場合は自我や原型を失う事さえあると言う。だからこそ、誰であろうとこの都市へと侵入する事は叶わないのだ。
 勿論それは人間界の規格に自身を落とし込んでいたエンヴィーとて避けられぬ問題ではあったのだが、アミレスが話したようにエンヴィーであれば──純然たる精霊であれば、この結界の影響を受けないのだ。

 その理由としては大きく三つ。
 一つは精霊が神々の使徒である側面を持つ存在だから。
 もう一つは精霊が魔力を管理する存在だから。
 最後の一つはこの結界が神々への信仰心により保たれるものだから。
 この三つの理由を以て、『精霊ならば神聖時空結界の影響を受けない』事の証明となる。
 何せ精霊達の持つ魔力……その原型たる権能は神々より授けられたもの。最上位精霊とは、国教会の信奉する神々と同じ力を持つ存在なのだ。

 国教会の信仰心により保たれるこの結界が、信仰の対象たる神々を拒む筈も無く……その神々に近い存在である最上位精霊ならば、この結界の影響も受けない。というカラクリだ。
 アミレスはそれを知った上で話した……と言う訳では無い。彼女の中にあるゲームの知識、神殿都市の結界についての記憶から、精霊ならば問題ないと判断しただけであった。
 その細かい内情など彼女が知る筈も無い。だがしかし、アミレスの発言が事実であった事に変わりはない。
< 284 / 1,399 >

この作品をシェア

pagetop