だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「可愛いのはアミィの方だよ、ほら、さっきのにゃーってやつとか凄いかわ……」
「その事なら今すぐ忘れてちょうだい本当に恥ずかしい! 猫さんがシルフだって分かってたら絶対やらなかったって……っ!!」
「えぇ、それは残念だ。凄く可愛かっ……」
「だから忘れてって!」

 なんとこの猫、人の黒歴史を平然と語ろうとする。野生の猫だと思ってあんな事言っちゃったのに、まさか野生でもなんでもなく友達の精霊だったとかもう恥ずかしすぎる……っ!
 何度も何度も可愛いなどとぬかすシルフの言葉を毎度食い気味で遮っては、もうやめろと言わんばかりに両手で持っていた猫シルフを上下に思い切り振った。
 上下にシェイクされ続けている猫シルフから次第に「ちょっ、もうやめっ」「ねぇアミィごめんってば」「やめ、これ意外と酔う……っ」とギブアップが聞こえてきたので、流石に動物を虐待している気分になるのでやめた。
 ようやくシェイクから解放された猫シルフはとてもぐったりしていて、きっともう冗談とか軽口とかを叩く余裕なんて無いだろうと私も安心した。

 その後しばらく猫シルフの背を撫で続けていると、ハイラさんが朝食を持ってやって来た。
 まだ体調が悪いだろうからと食べやすいものばかりを用意してくれたようで、ハイラさんの優しさが心に染みるようだった。……しかし先程の一連の事からそんな気はしていたが、今の私はかなり元気で、熱も大して無いのだ。
 不思議な事に、たった一晩ぐっすり寝ただけで私は全快したらしい。どれだけ回復能力が高いんだろうか、アミレスは。
 ハイラさんが用意してくれた朝食を食べ終わったにも関わらず、私のお腹は恥ずかしい音を発した。それを聞いたハイラさんは『他にも用意してきますね』と暖かい目で微笑み、シルフには『仕方ないよ、昨日は昼食も夕食もとってないんだから』と慰められた。
 二十分程して戻って来たハイラさんはサンドイッチを作って来てくれた。それを食べてようやく私の胃は満たされた。
 ……本当に恥ずかしい事この上ないわね。サンドイッチを食べている間もハイラさんに微笑ましく見守られて……。
 顔から火が出そうとはこの事なのね、身を以て体験したわ。

 朝食を食べた後、私はハイラさんなら信用出来るとシルフの事を話した。この猫は実は精霊さんなの、と話すとハイラさんは驚いたように目を丸くしていたが、すぐさまこれを受け入れ、『姫様をよろしくお願い致します、精霊様』と恭しくお辞儀をしたのだ。
 受け入れるのが早い……流石は仕事人……。あぁ、勿論、他言無用だと念押しした。
 そしてハイラさんが朝食の後片付けに向かい、部屋には私と猫シルフが取り残される。猫シルフを抱えたままソファで横に寝転がり、私は思う。
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