だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 ──本当に私はアミレスになったんだ、と。
 一晩経って、改めて現実なのだと実感する。私は本当にアミレスになって……このままだとフリードルか皇帝か……とにかく誰かしらに殺される運命にある。
 とりあえず誰かに殺されたり、死なないように色々努力しようとは決めたけれど、本当に上手くいくだろうか。ちゃんと生き延びる事が出来るだろうか。
 ちゃんと──、

「──幸せに、なれるのかなぁ……」

 無意識のうちに、私はそうこぼしていた。
 景色も、食べ物も、建物も、人も、服も、何もかも私の知る世界とは異なるこの世界で……私は本当に、目的を果たす事が出来るのだろうか。
 それが心配で、不安でたまらないんだ。しかもただ生き延びるだけでなく、私の目的は幸せになる事。
 ゲームで非業の死を遂げたアミレスの為にも、私は幸せになりたいんだ。
 ……本当に叶えられるかも分からない夢に、もう既に足が竦んでいる。でも……私に出来る事は運命に抗ってがむしゃらに努力し、何としてでもハッピーエンドを掴み取る事だけ。
 ならそれをやり遂げるしかない。それしか、私には道が無いんだ。

「どうしたの、アミィ? 何か不安な事でもあるの?」

 猫シルフの肉球が、私の頬をぷにぷにとつつく。……声だけでなく、表情にも私の不安が漏れ出ていたらしい。
 私は猫シルフを抱きしめて、

「……あのね、シルフ。私……その内、父か兄に殺されちゃうんだ。他にも、死ぬ可能性がたくさんあるの。でもね……私、死にたくない。生きて、幸せになりたい」

 転生者だという事は伏せたまま、胸中を吐露する。
 シルフは私の言葉を静かに聞いてくれていた。途中で言葉を挟まず、ただ、相槌のように何度も頷いていた。

「だからね、私、これから沢山努力するね。いっぱい努力して、頑張って、そして生き延びてみせるから……応援してて欲しいの。一人じゃあきっと無理だから、シルフに傍で応援してて欲しいの」

 私の言葉にシルフはとても優しい声音で、

「いいよ。ずっと君の傍にいる」

 と答えてくれた。

「……それでもね。結局私の努力が水の泡になっちゃったら……その時は、父や兄に……誰かに殺される前にシルフが私を殺して。私の人生を、他人に踏み躙られたくないの」
「…………嫌なお願いだね。そうはならない事を祈るよ」

 シルフは私の言葉を全て聞き届けてくれた。こんなにも突拍子も無く、訳の分からない頼みなのに……シルフは聞き入れてくれた。
 それに、傍で応援してくれるとも約束してくれた。それだけで私は頑張れる。先程まで私を縛り付けていた不安の鎖が消え去ったかのように、私の心は軽やかだった。

「ありがとうシルフ。私、これできっと頑張れるよ。絶対に幸せになるから……最後まで見守っていてね」

 もう一度猫シルフを抱きしめて、私は少しばかりの笑みをこぼす。
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