だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

75.束の間の休息2

「なんと言えばいいのか……昔……あ、昔と言っても一年前とかだよ。で、まぁ一年前に見知らぬ騎士から花を貰ったの。結構綺麗な花でね、一時期庭に植えてたぐらいなのよ? その花はもう枯れてしまってるのだけど……それがまた随分と毒を蓄えた花で、うっかり毒のある茎の部分に触っちゃったんだけどなーんにもなかったのよね。だから私には毒が効かないみたいなの」

 実は毒が効かない体質である事を知った後、私は王城敷地内にある温室に忍び込んで有毒植物のガナリグサを少し拝借し、細かく刻んで摂取してみたのだ。
 するとどうだろう。本の解説だと摂取後すぐに手足の痺れが起こりやがて全身が痙攣すると書いてあったのに……何も無かった。
 実は遅効性なのかもしれないと思い数日待ったが何も無かった。他にもいくつかの毒をこっそり試したが結果は同じ。
 ここで私は、毒が本当に効かない為、毒殺の危険性からは完全に逃れた事に喜んでいた。
 だからこれは私にとっての武勇伝(笑)なのだが……これを聞いた人達は皆一様に黙り込んでいた。
 しかしその中で一人、マクベスタだけは声を発した。緊張した表情で彼は口を切った。

「……その花は、どのような花だったんだ。色や形は、匂いは?」
「色は薄紫だったわね。形は……大きなスミレ? って感じ。なんだかとても甘い匂いがした気がするわ…………あ、ちなみに名前はヴィオラって花よ」

 そう、あの花の名前を口にした途端。マクベスタとシャルが強く反応した。

「ヴィオラだと!!?」
「そんなまさか……ッ?!」

 叫ぶ二人の気迫に、私は少したじろいだ。
 そんな二人より出遅れたとばかりにリードさんまでもが同じように冷や汗を浮かべて呟いた。

「よりにもよってヴィオラだなんて……」

 その明らかに普通ではない三人の反応に何かを察したディオが「何なんだ、ヴィオラってのは……」とこぼした。それにはシャルが答えた。

「この世界にある猛毒種の花で五本の指に入る程危険で残酷な花だ。猛毒のある茎に触れたら最後、死んだ方がマシな苦しみを味わいつつゆっくりと死に向かう」

 私もかつて毒草や毒花の本で見た解説文に近い内容を、シャルは掻い摘んで話しているようだった。それを聞いているディオとイリオーデに焦燥のようなものが見え始める。
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