だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「まぁハイラさんではないんだが」

 マクベスタがサラリと言うと、

「違うのか!?」
「は?」
「他に思い当たる節が無い……」

 俺達はそうやって頭を抱えた。もう駄目だと倒れ込み天を仰いだり、額に手を当てて俯いた。
 確かにあの侍女なら佇まいからしてただ者ではないし、納得出来たというのに彼女ではないと言うのだから。
 これは悩む俺達を見て愉悦する為のマクベスタの方便なのかと思ったが、アイツの真面目な性格からしてそれは無いだろうと判断した。
 だからこそ延々と頭を悩ませる事となったのだ……。
 そしてしばらく悩んだ俺達だったが、あまりにも候補が少ない事もあって即座に頓挫してしまった。
 俺達も会った事があると言われたからかつい躍起になって考えてしまったが、いつか殿下本人から話してもらえるのなら別に考える必要など無いのだ。
 マクベスタめ、策士な奴。と暫くジトーっと睨んでみた所、マクベスタは目が合ったと思えば小首を傾げた。
 どうやら違うらしい。

「……彼女がよく分からないなぁ」

 リードがボソリと呟いた。その声は近くに座っていた俺にだけ聞こえたようで、マクベスタとイリオーデとシャルルギルには聞こえなかったようだ。
 パチパチと焚き火が弾ける音や草木が風に撫でられる音に混じり消えていった呟きに、俺はただ同意していた。
 ほんとそれな、と何度も頷いた。
 会ってまだ数日の俺達が殿下の事を分かる筈もないが、だとしても殿下の事は本当によく分からない。
 ただこれだけは思った。例えどんな事があろうとも……例え殿下がどんな人だったとしても、俺達で殿下を守ろうと。
 馬鹿でも分かるよ、殿下の才能が世間で忌避される可能性すらある事は。
 あまりにも優れ過ぎた存在は嫉妬や憎悪の対象になりやすい……殿下は俺達みたいなのの為に必要悪でい続けるなんて言っちまうような人だ。
 もし妬み嫉みの対象になると分かれば平気な顔して受け入れてしまうだろう。それは駄目だ。よくない。
 王女だとか関係ない。ガキがそんなものに慣れちゃいけない、少なくとも俺はそう考えるから。
 だからこそきっと全ての矢面に立とうとする彼女を、俺達大人が守らないと。
 本来殿下を守る筈だった大人達が何もしない分、俺達がやらねば。それだけがきっと……殿下に選んで貰えた俺達に出来る事だからな。

 決意新たに俺は眠りについた。
 ……そう言えばさっきまで殿下が妙に不機嫌だったが、朝になったら機嫌が良くなってるといいな。そんなささやかな願いを共に、夢の中へと…………。
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