だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

79.オセロマイト王国にて

 オセロマイト王国に入国し、あまりにも無茶な地獄のドライブを経て、私達は王都たる花の都ラ・フレーシャに到着した。
 虎車から瀕死状態で降りた結果、もうめちゃくちゃ気持ち悪くて嘔吐しそうになる。しかし耐えた。
 あの時同様、アミレスにそんな事させてたまるかというプライドが働き、何とか耐えてみせたのだ。……嘘ですリードさんの付与魔法《エンチャント》のおかげですあれなかったら確実に車内で吐いてた。
 花咲き誇る花壇に倒れ込み体を預け、逆流したものが飛び出ないように口元を必死に押さえていると、リードさんがそっと私の背中に触れて、

「遅れてごめんよ、今楽にしてあげるから」

 と今際に現れた死神のような言葉を囁いた。だがその微笑みはまさに天使のごとき眩いもの……台詞と表情の乖離が凄い。
 その瞬間彼の手がほんのり熱くなり、その熱が触れられた場所を中心に身体中へと広がってゆく。それに比例して体がどんどん軽くなり、やがてあれだけ吐きそうだったのが嘘のように元気になった。
 治癒魔法本当に凄い……RPGでヒーラーが重宝される理由がよく分かった気がする。

「リードさん……度重なる親切、本当にありがとうございます……」

 地べたに正座し元気になった体を折って私は深々と感謝を述べた。
 するとリードさんは困った声をあげた。

「やめて!? 僕に向けてそんな風にしないでくれないか!? よりにもよって君にそんな事をされては心臓がいくつあっても足りないんだが?!!」

 すると、あたふたしながら「とにかく早く起き上がって!」と繰り返すリードさんに向けて、シュヴァルツが追い討ちをかけたのだ。

「一国の王女を這いつくばらせてる…………」
「違うからね?! そんな事してないから! 悪質な解釈は止めてくれないかなぁ!!」

 それに眉をつり上げて強く反論するリードさん。そこから軽い口論が始まってしまった。
 私が感謝のあまり頭を垂れていると彼に迷惑をかけてしまうようなので、とにかく急いで姿勢を正した。正座でピシッと背を伸ばす私に向け、マクベスタが手を差し伸べてきた。
< 334 / 1,368 >

この作品をシェア

pagetop