だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「あ、こちらは件の病の為に名乗りを上げ共に来て下さった司祭の方です。他四名は……私《わたくし》の侍従と言う事にしておいて下さい」
「何と司祭の方を……」
「それと、後日になるかと思いますが、こちらの方で手配した食料も届きますので。もし水の心配等があれば申し付けて下さい、私《わたくし》が何とかします」
「王女殿下自らそこまで……?!」

 周りも気にせずオセロマイト王と話す。国教会から大司教が来るかもと言う話はしないでおこう、まだ確定した訳では無いし、下手に期待させるのも良くないから。
 すると突然、感極まったように体を震わせるオセロマイト王が、

「……何故、貴女様はそこまでして下さるのか。フォーロイト帝国からすれば大した価値も無い我が国に……」

 か細い声で呟いた。私は一度マクベスタの方を見て、その言葉への返答を用意した。

「そうですね……私《わたくし》、オセロマイト王国特産の茶葉がお気に入りですの」

 そう、まるで我儘王女のように言うと周囲の人達が少し眉をひそめた。しかし私の言葉はまだここで終わりではないのだ。

「加えて、私としては……かけがえの無い友を育んでくれたとても美しく穏やかな国と思っているから……でしょうか」

 マクベスタがあんなにも真面目で優しく育ったのは、間違いなくオセロマイトが穏やかな国だからだ。
 マクベスタと言う存在を形作り育み、そして私に出会う機会をくれたこの国には感謝の念すらある。だって、おかげさまで私は……背中を預けられる人生初の友人を得る事が出来たのだから。
 そう設定された人物《キャラクター》だからと言われてしまえばそこまでなのだけれど、でも現に私の目の前に実物大の彼がいる事に変わりない。
 ゲームで見た時よりもずっと魅力的で最高の……友達だ。
 ──私はとっても身内に甘い。友達が少ないからその数少ない友達には沢山の事をしてあげたい。
 だからね、友達の為なら……国の一つや二つ救おうって気になれちゃうの。
 我ながらとんだ馬鹿だと思う。でも不思議と恥ずかしくはない。寧ろそんな自分が誇らしいわ!

「…………何もかも、我々には過分な言葉ですな」

 オセロマイト王が眉根を下げて瞳を伏せ、

「しかし。他ならぬフォーロイト帝国が姫君からの御言葉……ありがたく頂戴する」

 と優雅に一礼した。どうやら本調子に戻りつつあるようだ。
 それに気を良くした私は相も変わらずニコニコとしたまま返事する。

「では話を進めましょう。宜しいですわね、オセロマイト王?」
「うむ、謁見などもう良い。至急最上の貴賓室の用意を!」

 どうやらオセロマイト王は、腰を据えて話したいなーと言う私の思惑を察して周囲の人達に命令を下していた。
 突如下された命に待機していた侍女やその場にいたお偉いさん達は大騒ぎ。急いで準備に向かった。
 そして私達だけが残されると、

「……申し訳ない。暫し待たせる事になってしまいそうだ」

 オセロマイト王が申し訳無さそうにもらした。
 こればっかりは事前の報せも無しに来た私が悪い。その為、オセロマイト王には気にしないで下さいと伝えた。
 ここで私は、一年ぶりの親子の再会なんだから私の事は放っておいてくださいな! と最高に気を利かせ、マクベスタをオセロマイト王の近くに置いて一人だけディオ達の所に戻った。
 遠くから親子の再会を見守ろうと思ったのである。しかし突然ディオが虚空を見つめながら呟いた。
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