だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「人間っていうのは好かれる割合と嫌われる割合が綺麗に五分五分で定められてるの。だから例えば一人の男がいたとしてぇ……その男は街の人全員に嫌われてるんだけど、別の街では街の人全員に好かれる。ほら、不幸の後には幸運が来るってやつとかと似た感じ。そういう廻《めぐ》る仕組みなんだよ、この世界って……相手がどう思ってくれるかなんて、その時の運次第。気にするだけ時間の無駄」
退屈そうな顔でシュヴァルツ君は話を続けていた。その顔から既に笑顔は消えていて、何故か全くの別人のように見えてしまった。
「以上を踏まえまして。リードが言ってる『嫌われたくない』っていうのはどれくらいの範囲での話なの? 参考ついでに言うと、ぼくはお気に入りのおねぇちゃんに嫌われさえしなければ他の人間にはどう思われてもいいかなって思ってるよぅ! そもそも他人に興味ないし!」
パッと思い出したように咲いた明るい笑顔。ちょっと辛辣で冷たいシュヴァルツ君の言葉を聞いて、僕は自分の胸に問いかけた。
僕は一体何を望んでいるのか……どれだけの人に好かれたいと思っているのか──どれだけの人の期待に、応えたいと思うのか。
「…………」
長く、長く沈黙が続いた。力無く俯いて僕は考えていた。
シュヴァルツ君は空気が読めないようで読める子らしく、僕の返事を待ってくれているようだった。
ただ、退屈だからって人のパイプを解体するのはやめて欲しいな……。
それはともかく──僕が望む事は。
「……うん、僕は、僕が期待に応えたいと思った人の期待に応えられたらそれでいいかな。好かれたいって……よく思われたいって人にだけ、そう思って貰えたらもう十分だ」
僕は子供相手に情けない心情を吐露した。
世界中の人に愛されたいとか無理難題だし、不可能だ。だが同時に、世界中の人に嫌われるのも難しいらしい。
ならば確かに、深く考える必要なんて無いんじゃないかなって。
「あーあ、そんな気はしてたけど僕って本当に欲張りと言うか……好かれたい人にだけ好かれたいとか……」
「え。それで欲張りって判定になるの? ぼくが言うのも何だけど、リードも大概変だよね……主に価値観が」
「あははは、本当に君には言われたくないかも」
相手は王女殿下よりも更に小さい子供なのに、何故か僕は酒の席で飲み交わす相手のような……そんな気分で話していた。
色々と不可思議な少年だからこそそんな錯覚を引き起こすのか。はたまた僕の頭がおかしいのか。
「こんな普通に誰かと話したのは久しぶりだなぁ。ありがとう、猫被りのシュヴァルツ君。僕相手に猫を被るのをやめてくれて」
隣に立つ少年に向けて、笑顔を向ける。あの奴隷商事件の日の夜、初めて彼に会った時から分かっていた事。
この不可思議な少年が僕達相手に──王女殿下に、とてつもなく大きな隠し事をしているのは。
退屈そうな顔でシュヴァルツ君は話を続けていた。その顔から既に笑顔は消えていて、何故か全くの別人のように見えてしまった。
「以上を踏まえまして。リードが言ってる『嫌われたくない』っていうのはどれくらいの範囲での話なの? 参考ついでに言うと、ぼくはお気に入りのおねぇちゃんに嫌われさえしなければ他の人間にはどう思われてもいいかなって思ってるよぅ! そもそも他人に興味ないし!」
パッと思い出したように咲いた明るい笑顔。ちょっと辛辣で冷たいシュヴァルツ君の言葉を聞いて、僕は自分の胸に問いかけた。
僕は一体何を望んでいるのか……どれだけの人に好かれたいと思っているのか──どれだけの人の期待に、応えたいと思うのか。
「…………」
長く、長く沈黙が続いた。力無く俯いて僕は考えていた。
シュヴァルツ君は空気が読めないようで読める子らしく、僕の返事を待ってくれているようだった。
ただ、退屈だからって人のパイプを解体するのはやめて欲しいな……。
それはともかく──僕が望む事は。
「……うん、僕は、僕が期待に応えたいと思った人の期待に応えられたらそれでいいかな。好かれたいって……よく思われたいって人にだけ、そう思って貰えたらもう十分だ」
僕は子供相手に情けない心情を吐露した。
世界中の人に愛されたいとか無理難題だし、不可能だ。だが同時に、世界中の人に嫌われるのも難しいらしい。
ならば確かに、深く考える必要なんて無いんじゃないかなって。
「あーあ、そんな気はしてたけど僕って本当に欲張りと言うか……好かれたい人にだけ好かれたいとか……」
「え。それで欲張りって判定になるの? ぼくが言うのも何だけど、リードも大概変だよね……主に価値観が」
「あははは、本当に君には言われたくないかも」
相手は王女殿下よりも更に小さい子供なのに、何故か僕は酒の席で飲み交わす相手のような……そんな気分で話していた。
色々と不可思議な少年だからこそそんな錯覚を引き起こすのか。はたまた僕の頭がおかしいのか。
「こんな普通に誰かと話したのは久しぶりだなぁ。ありがとう、猫被りのシュヴァルツ君。僕相手に猫を被るのをやめてくれて」
隣に立つ少年に向けて、笑顔を向ける。あの奴隷商事件の日の夜、初めて彼に会った時から分かっていた事。
この不可思議な少年が僕達相手に──王女殿下に、とてつもなく大きな隠し事をしているのは。