だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
『貴女、仕事を探しているのかしら? それなら一つだけ紹介してあげられるわ、きっと貴女のような人ならやっていける』
その人の立ち居振る舞いはとても洗練されていて、どこにでもいるご婦人のように街の一角で鳥に餌をやっていた姿がとても異様に見えた程でした。
名も教えていただけず、ただ謎の紹介状を渡され、言われるがままに私は王城の門戸を叩きました。
その後はトントン拍子に話が進んでいきました。紹介状を衛兵に見せると少し待った後城内の一室に案内され、またしばらく待つと布を顔にかけた男性……フォーロイト帝国にて皇帝陛下や王子殿下に次ぐ有名人とも言える、皇帝陛下の側近たるケイリオル卿が現れました。
何でも、城や皇宮に関わる人事は卿に一任されているのだとか。彼は本当に皇帝陛下からの信頼がとても厚い御方のようです。
彼との一対一の面接を受けた末に、私はなんと、皇宮の侍女になる事が決まりました。あのご婦人から頂いた紹介状は、なんと皇宮の侍女への推薦状だったのです。
……あのご婦人は、なんと一目見て私が身元が確かな者でありつつ侍女の仕事が可能な人物であると見抜いたらしい。
確かに私は元侍女であった母の教えで、侍女の仕事は一通り把握しこなせるようになっておりますが…それはあの家の人達にだって知られていない事なのに、彼女はどうやらそれを瞬時に看破したみたいだった。
それだけでなく、私が侍女をやれると看破した上でよりにもよって皇宮勤めに推薦するなんて……あの人は一体何者なんでしょうか。
「では、仕事の件について何か質問やご希望はございますか?」
ぼーっとしていると、ケイリオル卿からそう問われた。私はそれを受け、ただ一つだけ伝える。
「…………仕事の際、私の名を明かさなくてもよろしいですか?」
私はあの家が嫌いです。母がくれた名を捨てようとは思いませんが、それでもあの家名を名乗るのは嫌で仕方ありません。
「ほぅ、つまり偽名を名乗ると? ご実家の権威には縋らないという事でしょうか」
ケイリオル卿が不思議そうに聞き返す。私は強く頷いて、
「はい。私の身元の保証に関しては雇用主たる貴方様が確認出来ていれば問題ないでしょう。職場では私は貴族でもなんでもない一人の侍女になりたいのです」
つい今しがたしたばかりの決心を告げた。彼はこれに納得し、
「では仕事開始までに偽名を考えておいて下さい」
と言って私を使用人宿舎と呼ばれる場所へと連れていき、これから私の城となるらしい部屋に案内した。
そして部屋の鍵を渡され、更に説明を受けました。
この使用人宿舎は基本的に門限というものが無く、共有空間を除いた個人の空間は、互いに絶対に侵害してはならないそうです。
ここは使用人宿舎女子棟で、隣には男子棟があり少し歩けば騎士団隊舎があるとか。……なんと言いますか、一気に色々と説明されて頭が混乱してきましたね。
私の仕事は明日から始まるとの事。何でも、丁度明日明後日で新人侍女が多く入るとかで……私のような訳ありが上手く集団に紛れ込める絶好の機会なのだそうです。
採用が決定した即日から宿舎での集団生活が始まるとは……と、この国の雇用制度を少し疑ってしまいました。
その人の立ち居振る舞いはとても洗練されていて、どこにでもいるご婦人のように街の一角で鳥に餌をやっていた姿がとても異様に見えた程でした。
名も教えていただけず、ただ謎の紹介状を渡され、言われるがままに私は王城の門戸を叩きました。
その後はトントン拍子に話が進んでいきました。紹介状を衛兵に見せると少し待った後城内の一室に案内され、またしばらく待つと布を顔にかけた男性……フォーロイト帝国にて皇帝陛下や王子殿下に次ぐ有名人とも言える、皇帝陛下の側近たるケイリオル卿が現れました。
何でも、城や皇宮に関わる人事は卿に一任されているのだとか。彼は本当に皇帝陛下からの信頼がとても厚い御方のようです。
彼との一対一の面接を受けた末に、私はなんと、皇宮の侍女になる事が決まりました。あのご婦人から頂いた紹介状は、なんと皇宮の侍女への推薦状だったのです。
……あのご婦人は、なんと一目見て私が身元が確かな者でありつつ侍女の仕事が可能な人物であると見抜いたらしい。
確かに私は元侍女であった母の教えで、侍女の仕事は一通り把握しこなせるようになっておりますが…それはあの家の人達にだって知られていない事なのに、彼女はどうやらそれを瞬時に看破したみたいだった。
それだけでなく、私が侍女をやれると看破した上でよりにもよって皇宮勤めに推薦するなんて……あの人は一体何者なんでしょうか。
「では、仕事の件について何か質問やご希望はございますか?」
ぼーっとしていると、ケイリオル卿からそう問われた。私はそれを受け、ただ一つだけ伝える。
「…………仕事の際、私の名を明かさなくてもよろしいですか?」
私はあの家が嫌いです。母がくれた名を捨てようとは思いませんが、それでもあの家名を名乗るのは嫌で仕方ありません。
「ほぅ、つまり偽名を名乗ると? ご実家の権威には縋らないという事でしょうか」
ケイリオル卿が不思議そうに聞き返す。私は強く頷いて、
「はい。私の身元の保証に関しては雇用主たる貴方様が確認出来ていれば問題ないでしょう。職場では私は貴族でもなんでもない一人の侍女になりたいのです」
つい今しがたしたばかりの決心を告げた。彼はこれに納得し、
「では仕事開始までに偽名を考えておいて下さい」
と言って私を使用人宿舎と呼ばれる場所へと連れていき、これから私の城となるらしい部屋に案内した。
そして部屋の鍵を渡され、更に説明を受けました。
この使用人宿舎は基本的に門限というものが無く、共有空間を除いた個人の空間は、互いに絶対に侵害してはならないそうです。
ここは使用人宿舎女子棟で、隣には男子棟があり少し歩けば騎士団隊舎があるとか。……なんと言いますか、一気に色々と説明されて頭が混乱してきましたね。
私の仕事は明日から始まるとの事。何でも、丁度明日明後日で新人侍女が多く入るとかで……私のような訳ありが上手く集団に紛れ込める絶好の機会なのだそうです。
採用が決定した即日から宿舎での集団生活が始まるとは……と、この国の雇用制度を少し疑ってしまいました。