だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「……んー、人の皮被るのもやめてくれても良いんだよ? 別に誰にも言わないし」
──だって君は、ただの人間ではないだろう? そう僕は問いかけた。
初めて彼に会った時から気づいていた。この少年はただの人間ではない……それどころか、恐らく魔に近い何かあるいは魔そのもの。
なんの理由があって完全に人間に擬態しているのか分からないものの、一切の敵意と悪意を感じなかったから放置していた。
半人前で出来損ないの僕には彼の正体を突き止める事は出来ない。まあ──どこぞの聖人様なら、その限りではないのだろうけど。
「……ふふ、やっぱりバレてたんだ。神聖十字臨界《セイクリッド・ペトロ》だっけ、アレを使える人間だからもしかしたらぼくの事気づいちゃうかも? とは思ってたけど」
シュヴァルツ君は愉しげに口の端を吊り上げ、無邪気に……邪悪に笑っていた。
すると彼は突然しゃがみこみ、地面に指で逆十字を描き出して。
「アレってさぁ、元々聖人とやらが数十年前の魔物の行進の時に編み出したっていう殲滅魔法でしょ? 何で君が使えるのかちょっと疑問だったんだよねー」
人差し指についた土を、ふぅっと息を吹きかけて落とす。そんな事をしながら彼は僕に話を振った。
まさかこの子、神聖十字臨界《セイクリッド・ペトロ》を知ってるのか。本当に何者なんだろう。
しかし話を振られたからには返事をしようと、僕は簡単な経緯を話した。
「ありきたりな話だけどね、僕は昔からずっととある人を超える為だけに父親に修行させられていたんだ。神聖十字臨界《セイクリッド・ペトロ》はその過程で習得させられたもの。他にも沢山……とある人が出来る事で、且つ僕も出来る事は全て。ああでも、出来ない事も無理やりやらされたかなぁ。とにかく血反吐を吐きながら死ぬ思いで修行させられたよ」
個人的に何も感じない記憶の数々を笑い話にしながら、僕は彼の疑問に答えた。
これまでの二十年近い人生で、僕はその大半の時間を無駄だと分かりきった馬鹿な挑戦の為に費やして来た。
本当に、全部無駄なのに。どう足掻いても僕は彼《・》を超えられない。僕だけじゃない……限られた命である人類が、あの男を超えられる訳が無いんだ。
例外があるとすれば……加護属性《ギフト》を持つ人間か、王女殿下か。王女殿下のあの才能なら……もしかしたら彼を超える事も可能かもしれない。
──だって君は、ただの人間ではないだろう? そう僕は問いかけた。
初めて彼に会った時から気づいていた。この少年はただの人間ではない……それどころか、恐らく魔に近い何かあるいは魔そのもの。
なんの理由があって完全に人間に擬態しているのか分からないものの、一切の敵意と悪意を感じなかったから放置していた。
半人前で出来損ないの僕には彼の正体を突き止める事は出来ない。まあ──どこぞの聖人様なら、その限りではないのだろうけど。
「……ふふ、やっぱりバレてたんだ。神聖十字臨界《セイクリッド・ペトロ》だっけ、アレを使える人間だからもしかしたらぼくの事気づいちゃうかも? とは思ってたけど」
シュヴァルツ君は愉しげに口の端を吊り上げ、無邪気に……邪悪に笑っていた。
すると彼は突然しゃがみこみ、地面に指で逆十字を描き出して。
「アレってさぁ、元々聖人とやらが数十年前の魔物の行進の時に編み出したっていう殲滅魔法でしょ? 何で君が使えるのかちょっと疑問だったんだよねー」
人差し指についた土を、ふぅっと息を吹きかけて落とす。そんな事をしながら彼は僕に話を振った。
まさかこの子、神聖十字臨界《セイクリッド・ペトロ》を知ってるのか。本当に何者なんだろう。
しかし話を振られたからには返事をしようと、僕は簡単な経緯を話した。
「ありきたりな話だけどね、僕は昔からずっととある人を超える為だけに父親に修行させられていたんだ。神聖十字臨界《セイクリッド・ペトロ》はその過程で習得させられたもの。他にも沢山……とある人が出来る事で、且つ僕も出来る事は全て。ああでも、出来ない事も無理やりやらされたかなぁ。とにかく血反吐を吐きながら死ぬ思いで修行させられたよ」
個人的に何も感じない記憶の数々を笑い話にしながら、僕は彼の疑問に答えた。
これまでの二十年近い人生で、僕はその大半の時間を無駄だと分かりきった馬鹿な挑戦の為に費やして来た。
本当に、全部無駄なのに。どう足掻いても僕は彼《・》を超えられない。僕だけじゃない……限られた命である人類が、あの男を超えられる訳が無いんだ。
例外があるとすれば……加護属性《ギフト》を持つ人間か、王女殿下か。王女殿下のあの才能なら……もしかしたら彼を超える事も可能かもしれない。