だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
《──あー。テステス、聞こえてますかー?》

 突然の事であった。城内に若い少年の声が響き渡った。
 その謎の声に城内は騒然となる。誰もが理解の追いつかない事態に狼狽していると。

《ふっ……まぁ聞こえてるだろ、多分。俺の計算は完璧だったしな。さてそれでは本題に移らせていただこうか》

 謎の声は勝手に話を進めたのだ。しかしその時、更なる謎の声が増えて、

《あの……先に名乗った方がいいのでは?》
《確かに! お前天才か……?》
《貴方にだけは言われたくないですね》

 謎の声達による会話が繰り広げられたのだ。それには城内も完全に大混乱《パニック》状態。侍女達なんて恐ろしさのあまり泣き出す者もいたぐらいだ。

《ごほん、では気を取り直して──俺はカイル・ディ・ハミル。今現在ハミルディーヒの城で軟禁されてる第四王子でーす》

 ──は? と……奇しくもこの時、城内にいた者達の心の声は一致した。
 ハミルディーヒ王国とはフォーロイト帝国を挟み離れたこの国に、その城に軟禁されている者がどうやって……と冷静な者が考えた所で、丁度その説明があった。

《詳しくは企業秘密なんで話せないけど、自作の魔導具でちょちょーいと声届けてまーす。あ、ちなみに今から色々物資も届くから確認よろしく! 着払いじゃないから気にせず受け取ってくれよな!》

 と、謎の声──もとい自称カイルの声がそう言い放った瞬間。突如、王城が謁見の間に大量の木箱が出現した。
 それに気づいた城の者達が困惑していると、

《箱の中身は食料に衣服に応急手当用の道具やら。本当はもっと感染病に効く物を用意出来たら良かったんだが、いかんせん俺は立場も低い貧乏第四王子なもので…………つぅか大丈夫? 誰か箱の転送に巻き込まれてたりしない? パッと見人がいない所狙ったけどぶっつけ本番だし心配だわ……もし誰か巻き込まれてたら俺宛に手紙だして、慰謝料払うから》

 自称カイルの言葉に、城の者達は恐る恐る木箱を開けた。その中身は空から降ってきている声が言っていた通りで、特段怪しい物など入ってなかった。
 しかし何故ハミルディーヒ王国の第四王子がそのような事を、そもそもどうやって……と誰もが疑問符を幾つも抱える中、もう一つの声が《巡回の兵が来ますよ!》と言った為か件の自称カイルは巻き気味で喋り始めた。
< 368 / 1,368 >

この作品をシェア

pagetop