だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

88.緑の竜

 真夜中にラ・フレーシャを飛び出てからもう二日経ち、三日目にさしかかろうとしている。
 現在いる場所は百年樹に最も近い町。馬車で四日程と聞いていたのだけれど……予定よりも早く進めているようだった。
 それもひとえにブレイドのお陰だろう。食事の際に無理をさせてるお詫びにと万能薬を与えた所、たちどころに疲労感が消し飛んだようで……張り切った様子のブレイドに、『まだか、まだいかないのか』と急かされた気さえしたものだ。
 しかもその後、何かめちゃくちゃスピードアップしたブレイドによって私はもう何度目かも分からない地獄のドライブを味わった。
 勿論、頑張ってくれたブレイドには申し訳ないから体調不良は隠し通したとも。万能薬を飲んでね! 持っててよかった万能薬。
 一日目二日目と運良く村や町に着けて、そこでご厚意で泊めて貰えたので寝る場所には特に困る事もなかった。

 そして三日目の朝、私はブレイドに乗って百年樹を目指す。百年樹は広大な森の中にあるとかで、その森自体は町からさほど遠くなくて直ぐに辿り着けた。
 呪いに侵されたからなのかかなり鬱蒼とした森へと入ろうとする……が、その直前でブレイドが急に足を止めた。目元を険しくしていて……何やら様子が変だった。
 しかしそれには心当たりがある。なので私は一度ブレイドから降りて、その頬を撫でながら尋ねた。

「……行きたくないのね?」
「ブルッ……ブブル……」

 きっと賢いブレイドには分かるのだろう。この森が……百年樹が危険な場所だと。

「いいのよ。ここまで私を乗せてくれてありがとう、凄く助かったわ」

 抱き締めるようにブレイドの首に手を回す。……だけど私は一人でもこの先へと進まなければならない。寧ろ、一人で進まなければならないのだ。
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