だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「……それじゃあ私は行ってくるね。ブレイド、あなたは先に今日泊まった町に戻ってて頂戴。後で迎えに行くから」
「ブルッ!? ブルルルッ!!」
「ちょっ……服引っ張らないで……?」

 もし竜の呪いが生物全般に効くものであれば……ここにいてはブレイドも早急に呪いにかかるかもしれない。
 なのでブレイドには先程の街に戻るよう伝えたのだが、それを聞いたブレイドは私を引き止めようとローブの裾を思い切り噛んで引っ張るのだ。
 まるで、私を森に行かせまいとしているかのように。

「…………ごめんね、ブレイド。何があっても、私だけは行かなきゃいけないの。あなたと、あなたのご主人様を守る為に。ありがとう心配してくれて」
「……ブルゥッ」

 もう一度ブレイドの頬に触れる。するとブレイドは頭を寄せてきて。甘えん坊なんだなぁと思いながら、ここまで乗せてくれてありがとう……そんな気持ちを込め私は沢山撫でた。
 その後、私は残り二本のうち一本の万能薬に髪をまとめていたリボンをくくりつけ、それを更にブレイドの馬具に結んであげた。
 もしもの時は町の人にこれを飲ませて貰ってね、と言いつけるとブレイドは「ブルッ」と返事してくれた。

 そしてついに私は森に足を踏み入れた。森の中は草木が生い茂っていて、歩いていると普通に熊と遭遇した。え、何でこんな森入ってすぐの所に熊が?
 と困惑したものの……熊の動きは師匠より遥かに遅かったので、簡単に制圧出来てしまった。しかし私もまだまだだ……殺さない道とてあったかもしれないのに、勢い余って森の熊さんを一撃で仕留めてしまった。
 師匠であればきっと殺さずとも対処出来たのだろう。やっぱり私はまだまだだ。
 長剣《ロングソード》についた血を振り落とし、私は熊に向け「どうか安らかに眠れ……」と手を合わせた。
 そしてまた進み始めると、今度は大きな猪と遭遇した。なんか目が赤い。これ絶対ただの猪じゃないでしょ。
 しかし、この猪はただ突進するしか能が無いようで……ちょっと避けてから、久々の水鉄砲《ウォーターガン》(いつもより高水圧)で横から頭を穿つとあっさり死んでしまった。
 これまた「安らかに眠れ」と手を合わせ、熊に続き死体を放置して先を行く。
 次に現れたのは狼の群れだった。ちょっとこの森治安悪過ぎない? 本当に百年樹って観光地なの? 観光地までの道めちゃくちゃ邪魔者がいますけど……。
 ここで私は思いつく。狼の群れとは言ったものの、数はおよそ六匹……これは実戦として中々に良いのではと。
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