だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

92.緑の竜5

「…………姫君、せめて聞いてるフリぐらいはして頂けませんか……?」

 全く話を聞く気配の無い私達に向け、ミカリアが虚しそうな面持ちを向けてくる。
 聞いたのはこっちなのに、いざその話になると全然聞いてないとか私害悪すぎないかしら??
 ハッとなりながら姿勢を正し、少し恥ずかしい気持ちで謝罪する。

「……説明を求めたにも関わらず、すみません」
「いえ、僕の話がここの品物に負けたと言うだけの話ですし……別に、全然……拗ねてなどないですよ」

 いやどこが。めっちゃ拗ねてるじゃない。私の所為だけど。
 不老不死でもう何十年と変わらない姿で生きているミカリアにも、妙に子供っぽい所があるのよね……アンディザファンの間では、この垣間見える精神的幼さと人類最強の聖人としてのギャップが良いと話題になっていたものだ。
 その気持ちはよく分かる。分かるのだけれど、いざ実物を前にするとどう反応したものかと悩む。
 確かこれ、ゲームにも似たようなシーンがあって選択肢ミスった時のミカリアが本当にめんどくさかったのよね〜。流石は共依存枠、って感じの勘違い&執着を見せてたなぁ。
 正解を選んだらそれまで全然上がらなかったミカリアの好感度が突然ぐんっと上がるのだけど、まぁ私はアミレスだし、今はそのシーンじゃないし、関係ないわ。
 そもそも選択肢覚えてないから分かんないし。とにかく、思った事……を──、

「……じゃあ次はこれに勝てるように話して下さい。期待してますから」

 気分が良く何だか少し楽しくなって来たからか、飲み物を指さしつつ笑顔でそんな事をぬかしていた。
 これを受けて、ミカリアはびっくりしたように小さく口を開けっ放しにしている。それも束の間、口元に手を当てて考え込むように視線を落とす。
 もしや私の偉そうな謎発言を真に受けて面白い文章でも考えているのか。いや真面目か!
 程なくして顔を上げたミカリアは少しぎこちない笑みを浮かべていて。

「……ごほんっ、姫君に満足頂けるよう精進します。して姫君、早速話の続きなのですが」
「あぁ、はいどうぞ」
「──巷で姫君が聖女様と呼ばれている話と、この国の被害状況の話。どちらが聞きたいですか?」
「なんですかその選択肢!!?」

 バンッと思い切りテーブルを叩いて身を乗り出す。
 まてまてまてまて、特になんなんだ前者ァ! 何で私が巷で聖女って呼ばれてんの? あまりにも意味不明なんだけど!?
 後者も非常に重要な話ではあるがそれ以上に前者! 心当たりが無さすぎる!!
 と内心パニック状態でとりあえず着席した私に向け、作戦成功とばかりに得意げなミカリアは楽しそうに語り出した。
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