だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「マクベスタ」

 彼の名を呼ぶ。すると、メイシアと口論していたマクベスタがこちらに顔を向けた。
 マクベスタに向けて私は少し背を曲げた。この事に周りの人達が驚きの声を上げる。

「……ブレイドを勝手に連れ出してごめんなさい。貴方の愛馬を……一歩間違えば危険な場に連れて行って、ごめんなさい」

 無断で彼の愛馬を拝借した。森の入口までブレイドを連れて行ってしまった。その事について真剣に謝罪する。
 ブレイドが「ブブッ! ブルルル!」と横から何かを訴えかけてくる。鼻を使って無理やり私の顔を上げさせたりして……これではまるで──。

「そのブレイドが全然気にしていないようだから、オレは何も言わない。どうやらブレイドはお前に頭を下げて欲しくないらしい」

 マクベスタが小さく笑いながらブレイドに近寄る。数日ぶりに本当の主に出会えたブレイドはとても嬉しそうに、穏やかな面持ちでマクベスタに顔を寄せた。
 マクベスタはそれを受け入れ、首を軽く触るなどする。そして彼はどこか切なげな表情で、

「にしても……そうか、そんなにアミレスとの旅は楽しかったのか、ブレイド。少し……妬けてしまうな」

 と呟いた。
 それはそうよね、だってブレイドはマクベスタの愛馬なんだもの! そのブレイドが他所の人間との旅が楽しかったとか言ったらそりゃあ傷つくよね! 本当にごめんなさいマクベスタ!!

「そんな事より」

 くるり、とこちらを振り向いたマクベスタがこちらに向け手を伸ばして来る。何だかよく分からず、一瞬目を閉じて肩を跳ねさせた……がしかし。
 マクベスタの手のひらは私の頭に乗っていて……。

「──お帰り、アミレス。無事で良かった。凱旋の暁には沢山褒めろ……だったな?」

 ニッと笑うマクベスタのその言葉を皮切りに、顔を見合わせて頷きあったリードさんとディオとシャルとイリオーデにこれでもかって程に褒めちぎられた。
 あの言葉ってあれよね……書き置きにジョークのつもりで書いたやつ! 何で皆本当にやっちゃうの?!
 突然私を褒め殺しに来た人達に最初こそ戸惑っていたものの、メイシアも途中からサラッと参加したし。
 そんな様子をミカリアは微笑ましそうに見守るだけで、助けてはくれなかった。ナトラもナトラで何故か誇らしげに「そうじゃろそうじゃろ」と彼等の言葉に相槌を打っていて、助けてくれそうな気配は無い。
 これぞ四面楚歌……! 最早助かる術は無いと悟り、私は大人しく、皆の気が済むのを待つ事にした。
 ──そう言えば、シュヴァルツは何処にいるんだろう。こういう時真っ先に飛びついて来そうなのにな。
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