だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「この程度では人間達の苦しみや憎しみの償いにもならぬ」
「…………いや。過分だ、こんなもの受け取る訳には……」
「それを受け取ってくれねば我は困るのじゃが」
「……世界樹なんて代物、我々が育てられる筈もありますまい」
「自然豊かなこの国であればすぐに育つじゃろう」
オセロマイト王とナトラによる言葉のやり取りは、伝説の種の出現により更なる混迷を極めた。
結局はオセロマイト王が押し切られ、伝説の種を受け取る事で話は落ち着いた。少しでもオセロマイト王とナトラの間のわだかまりがなくなったらいいのだけれど……と思案していた時。
ミカリアがスっと手を挙げ、
「姫君にお聞きしたいのですが……何故姫君はこれが竜の呪いである事と竜の居場所を知っていたのですか? 姫君が単独行動を始めたのはほんの数日前……たったの数日で解決出来る問題ではありません。姫君は最初から全て分かった上で動いていたのでしょうか」
と疑問を口にした。ミカリア相手に隠してもどうせ無駄だろうなと思い、私はこくりと頷いた。
「なんと言えばいいのか分かりませんが……天啓のようなものがありまして。私一人が頑張るだけで大勢が救えるのならば、それが最善かと思い」
「……万が一の場合はどうするおつもりだったのでしょうか」
「勿論簡単に死ぬつもりなんてありませんよ? やれる限りの事をしてそれでも無理だったら、道連れにでもして敵を殺してやりますね。死なば諸共ってやつです」
夢の中で悪魔から聞いたとか言えないので適当に天啓という事にしておいた。
その後、私の死なば諸共発言が気に食わなかったらしい人達に追及されたりして…………質問攻めと説教責めを受けて更に精神的に疲れた私は、急遽話を切り上げ、「今日は疲れたのでもう休ませていただきますわ!!」と結界を解除してあの空間から脱兎のごとく逃げ出した。
そして城内ですれ違う全ての人に拝まれながら私に用意されていた部屋に行き、はしたなくもベッドにダイブした。疲れていたのは事実だし、今回ばかりは逃げ出した事も許して欲しい。
ベッドでゴロゴロしていると、瞼が重くなって来て……気がつけば私は……食事も忘れ、数日ぶりにゆっくりと眠りについた。
♢♢
──星暦七百八十三年。四月二十五日。半年程前よりオセロマイト王国を襲っていた未知の伝染病『草死病《そうしびょう》』が完全に撲滅される。
人々はこれを撲滅した立役者たる少女を賞賛し、聖女と崇めるようになった。
氷結の聖女。後に帝国の王女という呼称をもじり救国の王女と呼ばれる僅か十二歳の少女。
彼女のその言動の全てが多くの人間の歯車を狂わせ、多くの人間の世界を変えた事を、彼女はまだ知らない。
「…………お帰り、おねぇちゃん」
真夜中。まるで時が止まったかのような静けさの中、少年はアミレスの銀色の髪に触れ、愛おしそうに口付けを落とした。
騎士も、聖職者も、竜も、精霊さえも欺き、少年はここに立つ。
天使のような愛らしい外見に不似合いな、悪魔のごとき不敵な笑みを纏って。
「本当に飽きないなぁ……君は」
……──訂正しよう。彼女は人間の歯車だけではなく、人ならざる者達の歯車も狂わせたと。
「…………いや。過分だ、こんなもの受け取る訳には……」
「それを受け取ってくれねば我は困るのじゃが」
「……世界樹なんて代物、我々が育てられる筈もありますまい」
「自然豊かなこの国であればすぐに育つじゃろう」
オセロマイト王とナトラによる言葉のやり取りは、伝説の種の出現により更なる混迷を極めた。
結局はオセロマイト王が押し切られ、伝説の種を受け取る事で話は落ち着いた。少しでもオセロマイト王とナトラの間のわだかまりがなくなったらいいのだけれど……と思案していた時。
ミカリアがスっと手を挙げ、
「姫君にお聞きしたいのですが……何故姫君はこれが竜の呪いである事と竜の居場所を知っていたのですか? 姫君が単独行動を始めたのはほんの数日前……たったの数日で解決出来る問題ではありません。姫君は最初から全て分かった上で動いていたのでしょうか」
と疑問を口にした。ミカリア相手に隠してもどうせ無駄だろうなと思い、私はこくりと頷いた。
「なんと言えばいいのか分かりませんが……天啓のようなものがありまして。私一人が頑張るだけで大勢が救えるのならば、それが最善かと思い」
「……万が一の場合はどうするおつもりだったのでしょうか」
「勿論簡単に死ぬつもりなんてありませんよ? やれる限りの事をしてそれでも無理だったら、道連れにでもして敵を殺してやりますね。死なば諸共ってやつです」
夢の中で悪魔から聞いたとか言えないので適当に天啓という事にしておいた。
その後、私の死なば諸共発言が気に食わなかったらしい人達に追及されたりして…………質問攻めと説教責めを受けて更に精神的に疲れた私は、急遽話を切り上げ、「今日は疲れたのでもう休ませていただきますわ!!」と結界を解除してあの空間から脱兎のごとく逃げ出した。
そして城内ですれ違う全ての人に拝まれながら私に用意されていた部屋に行き、はしたなくもベッドにダイブした。疲れていたのは事実だし、今回ばかりは逃げ出した事も許して欲しい。
ベッドでゴロゴロしていると、瞼が重くなって来て……気がつけば私は……食事も忘れ、数日ぶりにゆっくりと眠りについた。
♢♢
──星暦七百八十三年。四月二十五日。半年程前よりオセロマイト王国を襲っていた未知の伝染病『草死病《そうしびょう》』が完全に撲滅される。
人々はこれを撲滅した立役者たる少女を賞賛し、聖女と崇めるようになった。
氷結の聖女。後に帝国の王女という呼称をもじり救国の王女と呼ばれる僅か十二歳の少女。
彼女のその言動の全てが多くの人間の歯車を狂わせ、多くの人間の世界を変えた事を、彼女はまだ知らない。
「…………お帰り、おねぇちゃん」
真夜中。まるで時が止まったかのような静けさの中、少年はアミレスの銀色の髪に触れ、愛おしそうに口付けを落とした。
騎士も、聖職者も、竜も、精霊さえも欺き、少年はここに立つ。
天使のような愛らしい外見に不似合いな、悪魔のごとき不敵な笑みを纏って。
「本当に飽きないなぁ……君は」
……──訂正しよう。彼女は人間の歯車だけではなく、人ならざる者達の歯車も狂わせたと。