だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

95.緑の竜 番外編

 アミレス・ヘル・フォーロイト失踪当日の晩。
 一つの客室にて彼女の私兵であるディオリストラス、シャルルギル、イリオーデに知り合いのリード、そして友達のマクベスタとシュヴァルツを交えた話し合いが行われていた。
 起き抜けから色々な事が起きたこの日、かなり動揺していた彼等はとにかく無我夢中に各々の役目に身を投じていた。気を紛らす目的だったのである。
 夜になり、皆ある程度頭が冷えた事で話し合いをする事となったのだ。

「そーゆう訳で、これより『おねぇちゃん失踪によるぼく達の今後の立ち回りについて』の会議を始めるよぅ!」

 議長はシュヴァルツだった。前もって城の者から強奪……もとい拝借しておいた紙とペンを目の前に置き、シュヴァルツは議論開始の合図を告げる。
 どうやらこの議長、進行だけでなく書記の役割も務めるらしい。
 そんな中、早速挙手する者が現れる。それはシャルルギルであった。

「はいどうぞシャルルギル」
「シュヴァルツ、子供はもう寝る時間だ。寝た方がいい」

 シュヴァルツは議長としてシャルルギルが発言する事を許可したのだが、その内容は議題と全く関係の無いものだった。それに頬をひくつかせ、シュヴァルツはにこやかに言い放つ。

「……君達大人があまりにも見るに堪えない狼狽えっぷりだったからこうして色々取りまとめてあげてるんだけど? つーかロクに考えずに発言しないでよ時間の無駄だし」

 とても可愛いらしい笑顔ではあるものの、その言葉にはとてつもない毒が込められていた。元々シュヴァルツは辛辣な方だったのだが、ここまで露骨なのは初めてだったので……それに、

(シュヴァルツ、急に一体どうしたんだ……?)
(あのガキ思ってたよりヤバそうだな……)

 マクベスタとディオリストラスは息を飲んで恐怖していた。
 ポカーンとするシャルルギルに見向きもせず、シュヴァルツはカリカリとペンを走らせ何かを紙に記していく。

「会議っていうのはとても貴重な時間なの。ぼくはそれを邪魔する奴が大嫌い。生きてる価値もない塵芥相手に割いてあげる時間は無いんだよね〜、だからさシャルルギル。発言するならもっとまともな事言ってね。ぼくへの説教とかいらないから」

 そう話している間にもシュヴァルツは素早く綺麗な文字を書いていた。
 その内容を横から覗き見て、リードはギョッとした。
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