だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

96.緑の竜 番外編2

 翌朝。何名かは二日酔いに悩まされつつ起床する。
 念の為にと城中を探すも、まだアミレスの姿は無かった。
 実の所、彼等はアミレスの行先に心当たりがあった。それは厩舎から消えた一頭の馬と、アミレスが消える前に侍女に突然尋ねた事柄から導き出した答えだった。
 その場所は──百年樹。数百年前よりオセロマイト王国のほぼ真ん中に聳え立つ大樹。
 観光地として有名、人気で……王都からも馬車で四日程行けば着く場所にある。
 だが、それだけだ。立派な大樹という事以外、百年樹にはこれと言って何も無い。強いて言えばとある言い伝えがあるのだが……それは草死病《そうしびょう》と無関係である。
 なので彼等には分からなかったのだ。何故アミレスが一人で百年樹を目指したのか。
 その理由が分からない上に書き置きのお願いも相まって、下手に身動きが取れない状態に彼等は陥っていた。
 唯一の救いは、百年樹が普段は割と安全な観光地であると言うマクベスタの言葉。それを聞いて彼等はひとまず胸を撫で下ろしていた。
 ……しかし彼等は知らなかった。この草死病《そうしびょう》の感染拡大により、本来行われる筈だった動物や魔獣や魔物の討伐が暫く行われず、それらが蔓延する竜の魔力を浴びた影響で強化されていた事を。

「っあぁ……疲れたぁ……!」
「お疲れさん、リード。これ万能薬と、昼飯にって城の人が」

 涙を流して歓声をあげる人々から距離を取り、青白い顔で長椅子《ソファ》に倒れ込むリードに差し出される瓶と小さめのバスケット。
 バスケットの中には手軽に食べられる野菜や果物をパンで挟んだ色とりどりのサンド。中には焼いた肉が挟まれたものもあり、腹を満たし活力をつけるにはうってつけだった。

「ありがとうディオ、万能薬を取りに行く気力が無かったから助かるよ……」
「お前……大丈夫か? 朝から俺達の二日酔い治してあのすげぇ魔法何回も使って……昼飯がてらちゃんと休んどけよな。その間、押し寄せて来る感染者達はひとまず俺達が対応しとくから」
「いいのかい? それじゃあお言葉に甘えて昼食の間は休ませてもらうよ」

 ディオリストラスの配慮に感謝し、リードは数時間ぶりの休憩をとった。
 必要があり今朝から飲み続けた万能薬ではあるが、決して美味しい訳ではない。寧ろ不味い。
 その為万能薬を飲んでも精神的にはあまり癒されない。だがしかし、今こうして味もあり普通に美味しい昼飯を食べられた事によりリードの精神は少なからず癒された。
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