だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「──予想以上に出迎えが多いようですが、どうなさいますかお嬢様」
「……予定通りに。何とかお父さんの代わりを任せて貰えたんだもの、やり遂げないと」
少女に声をかけたのはフォーマルな服に身を包んだ若い男。彼は少女の父親が少女につけた護衛だった。
護衛の男が民衆をどうするかと少女に判断を仰ぐと、少女はそれを断り、飛空船に備え付けられた機能を扱う。それは甲板に仕込まれた階段を地面に向け伸ばした。
少女は護衛の男と共に、多くの注目を集めながら階段をゆっくり降りて行く。そして少女が大地を踏みしめた時、大臣の男が一歩前へと踏み出し少女に問うた。
「──い、一体何者だ!? その空を飛ぶ船で我が国に何をしに来たと言うのだ?!!」
大臣の男はその痩せこけた頬に脂汗を滲ませていた。
必死の形相の男と違い、少女は優雅に一礼して名乗る。
「メイシア・シャンパージュと申します。シャンパー商会会長ホリミエラ・シャンパージュの代理として、仕事の為こちらに参りました」
そしてメイシアは懐より、己がシャンパー商会が会長代理である事を示すホリミエラ・シャンパージュ直筆の文書を取り出し、見せつけるように掲げる。
それを見た大臣は戦慄した。何故なら相手はあのシャンパー商会……オセロマイト王国とフォーロイト帝国間の取引を一手に担う強大な商会だからである。
そのようなシャンパー商会の会長代理を名乗る少女だと知らずに無礼な態度をとってしまったから……。
(ななな、何故シャンパー商会が……っ?! そもそも少女が会長代理などおかしいだろう!? しかしよくよく見れば空を飛ぶ船にシャンパー商会の紋章が刻印されておる……っ)
己の失態が確実に自業自得であると察した大臣は焦燥を顔に浮かべた。
しかしそれに驚いたのは大臣だけではなかった。観衆達もまた、少女の言葉に懐疑的になっていた。
「うそ、あんな小さい子が……?!」
「あのシャンパー商会の会長代理……? いやありえないだろ……」
「じゃあ何者なんだよ、あんな空を飛ぶ船初めて見たぞ」
「あの子可愛いな…………」
「もし本当にシャンパー商会会長代理だとしても、何しに来たって言うのよ」
「あんな空を飛ぶ船で現れたんだ、きっとうちを侵略しに……っ」
「ただでさえ病に襲われているのに帝国にまで来られたらもうこの国は終わりじゃない!」
「かっこいい! ママ、あの船すっごくかっこいい!!」
「こら! なんて事言うの?!」
どよめきだす観衆。その大半がメイシアの言葉に首を傾げ半信半疑であった。
そんな観衆を無視して、メイシアは淡々と話を続けた。
「此度はアミレス・ヘル・フォーロイト王女殿下からのご注文により、オセロマイト王国へと我が商会の在庫の七割近い数に及ぶ食材等を納品しに参りました。受け取り責任者──マクベスタ・オセロマイト王子殿下、こちらの契約書にサインをいただけますか?」
また一枚の契約書を取り出しながら、メイシアはマクベスタを名指しで呼び出す。
その事にマクベスタは目を丸くし、アミレス・ヘル・フォーロイトという名に観衆は手のひら返し。一斉に歓声をあげたのだ。
この時にはもう氷結の聖女アミレス・ヘル・フォーロイトの噂はラ・フレーシャ中に広まっていた為、その名一つで人々は一気にメイシアの事を信用した。
──ああ! またもや我等が聖女様が救いの手を差し伸べてくださっているのだ!!
──何でも南部に現れた国教会の二人組も聖女様が遣わした者らしいぞ! 聖女様はなんと素晴らしい御方……いや、女神様なのか!!
人々の心が、人々の言葉が途端に重なり始める。その様子に多少の疑問を抱きつつも、メイシアは観衆の言葉に同意していた。
「……予定通りに。何とかお父さんの代わりを任せて貰えたんだもの、やり遂げないと」
少女に声をかけたのはフォーマルな服に身を包んだ若い男。彼は少女の父親が少女につけた護衛だった。
護衛の男が民衆をどうするかと少女に判断を仰ぐと、少女はそれを断り、飛空船に備え付けられた機能を扱う。それは甲板に仕込まれた階段を地面に向け伸ばした。
少女は護衛の男と共に、多くの注目を集めながら階段をゆっくり降りて行く。そして少女が大地を踏みしめた時、大臣の男が一歩前へと踏み出し少女に問うた。
「──い、一体何者だ!? その空を飛ぶ船で我が国に何をしに来たと言うのだ?!!」
大臣の男はその痩せこけた頬に脂汗を滲ませていた。
必死の形相の男と違い、少女は優雅に一礼して名乗る。
「メイシア・シャンパージュと申します。シャンパー商会会長ホリミエラ・シャンパージュの代理として、仕事の為こちらに参りました」
そしてメイシアは懐より、己がシャンパー商会が会長代理である事を示すホリミエラ・シャンパージュ直筆の文書を取り出し、見せつけるように掲げる。
それを見た大臣は戦慄した。何故なら相手はあのシャンパー商会……オセロマイト王国とフォーロイト帝国間の取引を一手に担う強大な商会だからである。
そのようなシャンパー商会の会長代理を名乗る少女だと知らずに無礼な態度をとってしまったから……。
(ななな、何故シャンパー商会が……っ?! そもそも少女が会長代理などおかしいだろう!? しかしよくよく見れば空を飛ぶ船にシャンパー商会の紋章が刻印されておる……っ)
己の失態が確実に自業自得であると察した大臣は焦燥を顔に浮かべた。
しかしそれに驚いたのは大臣だけではなかった。観衆達もまた、少女の言葉に懐疑的になっていた。
「うそ、あんな小さい子が……?!」
「あのシャンパー商会の会長代理……? いやありえないだろ……」
「じゃあ何者なんだよ、あんな空を飛ぶ船初めて見たぞ」
「あの子可愛いな…………」
「もし本当にシャンパー商会会長代理だとしても、何しに来たって言うのよ」
「あんな空を飛ぶ船で現れたんだ、きっとうちを侵略しに……っ」
「ただでさえ病に襲われているのに帝国にまで来られたらもうこの国は終わりじゃない!」
「かっこいい! ママ、あの船すっごくかっこいい!!」
「こら! なんて事言うの?!」
どよめきだす観衆。その大半がメイシアの言葉に首を傾げ半信半疑であった。
そんな観衆を無視して、メイシアは淡々と話を続けた。
「此度はアミレス・ヘル・フォーロイト王女殿下からのご注文により、オセロマイト王国へと我が商会の在庫の七割近い数に及ぶ食材等を納品しに参りました。受け取り責任者──マクベスタ・オセロマイト王子殿下、こちらの契約書にサインをいただけますか?」
また一枚の契約書を取り出しながら、メイシアはマクベスタを名指しで呼び出す。
その事にマクベスタは目を丸くし、アミレス・ヘル・フォーロイトという名に観衆は手のひら返し。一斉に歓声をあげたのだ。
この時にはもう氷結の聖女アミレス・ヘル・フォーロイトの噂はラ・フレーシャ中に広まっていた為、その名一つで人々は一気にメイシアの事を信用した。
──ああ! またもや我等が聖女様が救いの手を差し伸べてくださっているのだ!!
──何でも南部に現れた国教会の二人組も聖女様が遣わした者らしいぞ! 聖女様はなんと素晴らしい御方……いや、女神様なのか!!
人々の心が、人々の言葉が途端に重なり始める。その様子に多少の疑問を抱きつつも、メイシアは観衆の言葉に同意していた。