だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「当時たった六歳のあの子がなんて言ったと思う──『死にたくない。生きて、幸せになりたい』って……今にも泣いてしまいそうな顔であの子は言ったんだ。実の家族にいつか殺されるからと、その来るかも分からない未来にあの子は酷く怯えていた」
猫がその小さな口を開く度に、聞く者の心に痛みを与える言葉が次々飛び出していく。
その猫の中のヒト──遠く彼方の精霊界で苦虫を噛み潰したような表情を作るその精霊は、この六年間でエンヴィーにしか話してこなかった少女の言葉を口にした。
「……もし努力が水の泡になったとしたら、その時は父や兄やその他の誰でもなくボクが殺してくれ……とあの子は頼んで来た。自分の人生を他人に踏み躙られたくないからって。これで分かったかい、緑の竜。アミィは──アミレス・ヘル・フォーロイトは、そんな言葉を口にしてしまうような最悪の環境に生きているという事を」
シルフは六年前より抱いて来た思いを一言一言に込めて押し出した。
エンヴィーはそれを歯ぎしりしながら聞いていた。実は彼もつい先日この話を聞いたばかりだったのだ。これを初めて聞いた時、エンヴィーは怒りや虚しさのあまり精霊界の一角にて大火災を起こしかけていた。
『──ッ、んだよそれ!! 姫さんは、姫さんが、何でそんな事言わねーとならねぇんだよッ!!!』
『それはボクだって同じ気持ちだ!!』
『っ…………!?』
『でも、それでも……ボク達には何も出来ない。何も許されない! 今のボク達に出来る事は何も無いんだよ!!』
怒れるエンヴィーを鎮めたのはシルフの叫びだった。シルフが心底悔しそうに握り拳を震わせる姿は今でもエンヴィーの目に焼き付いている。
あれ程までに感情的になったシルフは今まで見た事がない。ああ、それ程までにこのヒトは姫さんを…………。そうエンヴィーはシルフのアミレスへの思いの強さを思い知ったのだ。
勿論、自分自身のそれもようやく自覚した。
手塩にかけて育てた愛弟子……その少女が実はただ幸せになりたいなんて平凡な望みの為に死に物狂いで強くなろうとしていたと知り、彼は自分の愛弟子への思いを再認識し、同時にあまりのやるせなさに酷く心に痛みを覚えたのだ。
猫がその小さな口を開く度に、聞く者の心に痛みを与える言葉が次々飛び出していく。
その猫の中のヒト──遠く彼方の精霊界で苦虫を噛み潰したような表情を作るその精霊は、この六年間でエンヴィーにしか話してこなかった少女の言葉を口にした。
「……もし努力が水の泡になったとしたら、その時は父や兄やその他の誰でもなくボクが殺してくれ……とあの子は頼んで来た。自分の人生を他人に踏み躙られたくないからって。これで分かったかい、緑の竜。アミィは──アミレス・ヘル・フォーロイトは、そんな言葉を口にしてしまうような最悪の環境に生きているという事を」
シルフは六年前より抱いて来た思いを一言一言に込めて押し出した。
エンヴィーはそれを歯ぎしりしながら聞いていた。実は彼もつい先日この話を聞いたばかりだったのだ。これを初めて聞いた時、エンヴィーは怒りや虚しさのあまり精霊界の一角にて大火災を起こしかけていた。
『──ッ、んだよそれ!! 姫さんは、姫さんが、何でそんな事言わねーとならねぇんだよッ!!!』
『それはボクだって同じ気持ちだ!!』
『っ…………!?』
『でも、それでも……ボク達には何も出来ない。何も許されない! 今のボク達に出来る事は何も無いんだよ!!』
怒れるエンヴィーを鎮めたのはシルフの叫びだった。シルフが心底悔しそうに握り拳を震わせる姿は今でもエンヴィーの目に焼き付いている。
あれ程までに感情的になったシルフは今まで見た事がない。ああ、それ程までにこのヒトは姫さんを…………。そうエンヴィーはシルフのアミレスへの思いの強さを思い知ったのだ。
勿論、自分自身のそれもようやく自覚した。
手塩にかけて育てた愛弟子……その少女が実はただ幸せになりたいなんて平凡な望みの為に死に物狂いで強くなろうとしていたと知り、彼は自分の愛弟子への思いを再認識し、同時にあまりのやるせなさに酷く心に痛みを覚えたのだ。