だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
(……人間の協力者が多いに越した事はない。後は少しでも早く、一つずつでも制約の破棄を進めないと……)
(うーん、姫さんを守るって言うならお嬢さんに魔眼をもうちょっとあげてみるかなァ……多分あの魔力量なら爆裂の魔眼も使えるんじゃね? 二つの魔眼の同時所持が可能かは分からんが、試してみる価値は…………姫さんの身内が氷の魔力な以上、火の魔力のお嬢さんの存在はかなり重要だしな)

 シルフは制約の破棄を進めないといけないと再確認し、エンヴィーはメイシアを強くしようかと画策する。こうなったらとことん真正面からやり合えるようにするつもりらしい。
 メイシアとイリオーデ二人の覚悟に、マクベスタとディオリストラスは己を見つめ直した。自分はどう思っているのか、どうしたいのか、何を望むのか──。
 考えても考えてもその問題が複雑になるだけで、マクベスタとディオリストラスはゴールのない迷路を延々と駆け回っているような感覚に陥った。

(……アミレスの為に全てを捨てられたら、何て幸せな事なのだろうか)
(殿下の為なら出来る事は全てやりたい。だが、家族を捨てられるかと聞かれれば…………あんな風に即答出来ねぇよ……)

 メイシアとイリオーデの覚悟の重さに彼等は人知れず圧倒されていた。自分にはそれだけの覚悟が無いと実感し、動揺を隠せない。
 ……いや、それが普通なのだ。メイシアとイリオーデの覚悟が異常なのである。会って数週間の相手に人生を懸けようとするその覚悟が。
 だがそうさせるだけの理由がそれぞれにあった。
 片や、初めて存在を肯定してくれた人。片や、幼い頃からの生きる意味だった人。
 それぞれの人生でずっと探し求めていたその人とようやく出会う事が出来たのだ。当然、本人達は人生を懸けてでもその人を守ろうとするだろう。
 だが他は違う。大なり小なりアミレスに救われたかもしれないが、ディオリストラスとシャルルギルにはそこまでする理由がない。
 それは、マクベスタとて同じ筈であった──。

(アミレスを守り、救う? 全てにおいてアミレスに劣るオレが? でも…………アミレスが死ぬのは嫌だ。あいつがいなくなるなんて、そんなの……)

 ゆっくり、ゆっくりとその蕾は実り始める。それ(・・)が開花する時には、マクベスタはもう後戻り出来なくなる。
 それは人間を狂わせる最悪の病。それは誰もがかかり得る呪い。

(──駄目だ。誰よりも頑張るあいつが報われないだなんて、そのような事があってはいけない)

 ドクン、と強く鼓動する。まるでマクベスタの意思に心臓が呼応しているようだ。
 そんな胸元を強く握りしめ、マクベスタはまだ答えの出ない己の心と向き合うのであった。
 するとナトラが翡翠の長髪を揺らしてディオリストラス達の方を見た。
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